はんぶんこ天使

いずみ

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第七章 片翼の天使

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「莉子ちゃん……私、は……大丈夫……だから……」
 負けない。莉子ちゃんも、必死に今戦っているんだ。きっと、私以上に苦しい気持ちで。だから、私も、負けない。

「大丈夫。私は大丈夫だから……心配しないで、今、行くよ」
 私は、なるべく平気そうなふりをしながら立ち上がった。さっきまで渦巻いていた風は、強いままだったけれど、乱れてあちこちにむいて吹いている。
 莉子ちゃんは、私を指さしたまま動かない。その莉子ちゃんに向かって、私は倒れそうになる体を懸命に歩かせる。

「莉子ちゃん」
 もう少し。
 立ったまま動かない莉子ちゃんに歩み寄る。手を伸ばすと、その手はすんなりと莉子ちゃんを包む黒いもやの中に入った。
 そうして私は手を伸ばしたまま進んで……届いた莉子ちゃんの体を、思い切り抱きしめた。

「迎えに来たよ、莉子ちゃん。ね? 私、いつも一緒って約束、守ったでしょ?」
 抱きしめた体のぬくもりはいつもの莉子ちゃんと全然変わらなくて……こんな状況なのに、私は嬉しくて目を閉じる。
 胸いっぱいに、愛しさが、あふれた。
「一緒に、いるよ」
「ああああああああああああああああ!」
 莉子ちゃんが悲鳴をあげる。振りはがされそうになって、目を開けると。

 なに?

 私の体から、光があふれていた。淡く光るその光は……萌ちゃんの翼に集まっていたのと同じ光。
 世界中の自然から貸してもらったという、天使の光。

「え? どうし……」
「ああああああああああ!」
 暴れる莉子ちゃんを見て気づいた。
 この光に反応してるんだ。あの時の宮崎さんみたいに。

 よくわからなかったけれど、今莉子ちゃんを離しちゃだめだ。私は、離れそうになった莉子ちゃんを精一杯抱きしめる。

「莉子ちゃん、がんばって! 今、助けるから……!」
「あああああああ……み、ゆうううううううう」
「嫌な心なんて追い出しちゃって! いつものわがままで元気で……優しい莉子ちゃんに戻って!」
 必死に莉子ちゃんに抱きつく。けれど、暴れる莉子ちゃんに信じられない力で吹き飛ばされて、私はまた思い切り空中へと吹き飛ばされた。

 落ちる……!

 さっきみたいにアスファルトに叩きつけられることを覚悟して、私は体を丸めて、ぎゅ、と目を閉じた。

 と。
 ふわり、と私の体が浮いたのを感じた。
 おそるおそる目をあけると、私は、落ちる前に空中で誰かに抱きとめられていた。驚いて抱きとめてくれているその人を見上げる。
 長い金髪が風に吹かれて揺れていた。真っ白い大きな翼を優雅にはためかせているスーツ姿のその男の人を、私は見たことがあった。
 確か……萌ちゃんの上の役の、大天使様。

「逃げずに、よくがんばったね」
 私を見下ろす青いその目は、とてもとても優しげだった。
「あなたは……」
 確か、藤崎さん、っていったっけ。
「遅くなってごめんね。ほら、彼女も、もう大丈夫」
 そう言って視線を下へとうつす。つられて見下ろした先には、倒れている莉子ちゃんと、その体からはがれた黒いもやがあった。

「あっ!」
「最後まで、君がやるかい?」
「え?」
「どうやら、君にもその力があるようだ」
 藤崎さんは、私の背後に視線をうつす。つられて振り向いた私の目にうつったものは。
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