衣夢々談(きぬむむだん) ――これはガチで死んだなと思ったら、夢にまで見た異世界でチート級超能力者だった。なお、

テジリ

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追千乃多民(つちのたみ)

関守

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 ――アラナムのヤツ、コロコロ移動しやがって!
 ……とにかく、あやぎり朝へ急がなくっちゃ。

 ハクベラの宿願は、ただ一つ。

 彼女の昔の恋人。
 サルヌリ朝の戴冠――ハクゴ冠。
 そのうつくしさを、永遠に残したい。
 彼には、なるべく早く死んでほしい。
 水銀を飲ませ、腐らぬように保存したい。
 だって、あんなにきれいなんですもの。

「ね~、行こうよ親方~❤」

 ハクベラは、寸受死呂スズシロをそそのかした。
 寸受死呂スズシロは、涙を拭って立ち上がる。
 教祖・衣縫の弑逆実行犯は、サルヌリ朝だ。
 そのトップ・戴冠を殺し、衣縫さまの仇を討つのだ。
 そのためには、水銀が要る。

「おう、テメェら! 次行くぞ。
 あやぎり朝の都・霧越京だ」


 ✶

 だが、国境は堅く閉ざされている。

 あやぎり朝・宗主の正妻――
 地媛(つちひめ)が、関所で厳重な封鎖を敷いている。

 サルヌリ朝側からの越境は、ほぼ不可能。
 見つかれば殺され、神鳴り山に埋められる。
 今日もあやぎり朝の関所では、
 密入国者たちが命乞いを始めた。

「戴冠のクソ野郎」
「サルヌリ朝は、民には地獄だ!」
「それに比べ、あやぎり朝はなんと素晴らしい」

 だが地媛は、冷ややかに言った。

「よく見えるなら、自浄努力をなさいな」

 そして処断する。

「こりない輩。
 大して変わりゃしないのに、隣の庭はよく見えると言うやつ?
 ――おお、いやだ。またハエがたかっておるわ」


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