衣夢々談(きぬむむだん) ――これはガチで死んだなと思ったら、夢にまで見た異世界でチート級超能力者だった。なお、

テジリ

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毒杯

手繋ぎ

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 肥遺は、ヤル気満々だ。
 この小娘は、さしづめ龍神系の生贄娘。
 要するに、死んで水神の妻になったのだ。
 下界で献上される美人と大差ない存在だ。

 炎帝の娘・旱鬼お姫(かんきおひい)の敵ではない。

 小寿林氏領とおなじく、
 計里氏領もーー肥遺の縄張りとして、カンカン☀に照らしてやる!
 だが小娘は、肥遺そっちのけでニマニマ。

『勾人くん、そのコ……超カワイイ~❤
 肥遺が憑いてなければもっと素敵なのに!
 でも、肥遺が居なければとっくに死んでいる、  
 か……小寿林氏も、惨いことを…』

『なぬぅ? 小娘、肥遺と戦え!
 そなたの夫を呼んでも構わぬぞ🐉』



 ✶



 名無しキッズは、少し緊張しつつも勾人に手を引かれ続ける。

 ーー結構歩いたのに。

 いつになったら、手を離してくれるのだろう?

 名無しキッズは、諸事情により古代成人済みだ。
 それは、勾人とて同じ事。
 名無しキッズはもう、手を離した瞬間、
 走り去る幼児じゃないのだから、これは要らぬ気遣いだ。

「“道”に迷わないようにね」

 勾人は変わらず微笑みながら手を重ねる。
 純粋に「手繋ぎたい❤」だけの気持ちだ。

 しかし、その視線の端には、薄い影が揺れている。
 空気のざわめき、葉のざわめき――それは、人間の仕業ではない。
 肥遺が存在していることを、勾人はまだ確信していない。

「…何か、いる気がする…?」

 勾人は、計里氏の無自覚バイト覡。
 れっきとした古代聖職者だが、彼にはその自覚がない。
 違和感に、軽く眉根を寄せる程度。
 直感的には察しても、正体までは分からない。

「ねえ、手え離して…」

「……意外と恥ずかしがりや? ……あんなに大胆だったくせに」

「……💢」

 名無しキッズは、気にせず手を握り直す。
 勾人も、自然と肩を寄せる。
 手の温もりと微笑みで、危険な空気を打ち消すように。


 ✶



 だが、心のどこかで、勾人は感じている。

「ここは、ただの川じゃない……」

 その「何か」は、祠から流れる大昔からの怨念と、
 漂う異物感の両方で、彼らを取り囲む。
 存在を直接見るわけではない。
 だが、場の気配が張り詰めていることは確かだ。

 名無しキッズはふと笑い、勾人の手を軽く握り返す。

「へいきだもん、勾人さんがいるから」

 勾人は、その言葉に微笑む。
 まだ肥遺に気づいていない安心感と、手を繋ぐ幸福感が同居する。

 背後では未だ、
 許嫁の祠の霊気と大陸由来の肥遺の存在感が、微妙に揺れ動く。

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