足掻手外伝・翠涙談(すいるいだん)〜かはそに朝政治劇たぶんシリアスビターエンド〜

テジリ

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妹探してよし行くぞ

継母

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 計里氏正妻・双珠(そうじゅ)は、
 勾人の母・宝児(ほうじ)自刃の報せを受ける。双珠は、即座に呆れた。

「バカじゃないの? 死んだら何も残らない。
 アンタのカワイイ、カワイイ勾人チャンは、
 今から都に王朝詣で。
 母自刃なんか、外聞悪すぎ。
 この際仕方ないから、正妻である私の猶子。
 つ・ま・り♡アンタは家系図にすら残らない」

 双珠は手向けとして、お古の化粧道具を下賜した。
 宝児は、死化粧用の道具すら持っていなかったので。

「顔にお絵かきして、何が楽しいの?」

 生前の宝児は、大の化粧ぎらい。
 介護要員後妻から、農婦人という経歴だった。 
 だから、今まで特に問題にならなかった。
 そのため最低限の道具すらなく、
 いつもオシロイバナの種と、紅花の汁で誤魔化していた。

 ☯

 都は広く、賑やかで、香の匂いがした。
 計里勾人(けりのまがひと)が、宮中に参内して数日。

 まず噂になったのは――その容姿だった。

「そなたの目つき……まるで“わだつみ”のようだな」
「頬の線が柔らかい。母御似か?」
「整った顔だ。天媛もお気に召すやも」

 褒め言葉は、笑いとともに投げられた。
 軽いものだった。悪意も重みもない、ただの感想。

 しかし、勾人には刺さった。

「母に……似てるのか。俺は」

 ぽつりと言うと、同じ求婚者の青年が笑った。

「当たり前だろ。よい顔立ちだ。誇れ」

 誇れ。
 その言葉の響きが、胸の奥に沈んだ何かを揺らした。

(母さんは……この顔立ちのせいで、父に言い寄られた。
 さぞかし、気苦労を重ねたのだろうな)

 不意に、目の奥が熱くなる。
 この顔立ちは、母が一生背負った“女の役目”の一部。
 心苦しみ、自分のせいで引き裂かれたその象徴。

 なのに都では、それすら価値になる。

(……母さん)

「だいすきだ」
「迷惑かけてごめん」
「もっと、一緒にいたかった」

 言えなかった言葉が、喉につかえて息が止まりそうになる。

 勾人は空を見上げた。
 新月の夜、黒く深い空の向こうへ。

 そこにはきっと――
 母の魂を運んだ鳥たちがいる。

(母さん……俺は、行くよ)

 声にならない声が、胸の中で揺れた。




【小説イメージMV】
使用曲:Prayer X
King Gnuの1作目のシングル。2018年9月19日発売
フジテレビ "ノイタミナ"アニメ 『BANANA FISH』のエンディングテーマ


https://youtube.com/shorts/HxA1Fos9lqU?si=yZCJUfk4NpRSLS9h
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