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かはそに朝
🧩《知恵比べ:いちばん大事な物は何か?》
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今日も今日とて、かはそに朝では御簾越しに、
天媛の無理難題が始まった。
「勾人、あんたの一番大事なもん献上しぃ。
物でも心でも、なんでもええ。
嘘ついたら“三夜事件”ばらすで😈♡」
勾人は、以降も短文詩を詠み続ける。
【……ッ 手も足も 届かぬ謎】
勾人もやられっぱなしでは居られない。
詭弁を弄する作戦に出た。
【天媛よ 見知る物のみ 手に取れば
我が大事は いまだ形なき未来】
天媛は拍子抜けしたように片脚を投げ出す。
「はぁ? 未来?
そんな抽象的な……うちを煙に巻くつもりかいな」
【未来を守るは我が心
阿諛のためと 己が運命
形なきものは 差し出せぬ】
天媛は、むむっと唇を歪める。
「屁理屈やな……しかし……
ぐうの音の出えへん屁理屈や……!」
天媛は、揚げ足とりで返す。
「ほんなら訊くわ。
その“未来”……
阿諛と過ごす未来も入っとるんやろ?」
【なっ……】
「なら、未来を献上する=阿諛との未来置いてけ。
ウチが預かる。はい詰み♡」
【未来ごと 人も含むとは 反則や!】
勾人は、言葉遊びの返しに出た。
【ほな言うが。未来は 誰のものでもなし
阿諛の未来は 阿諛のもの
我が未来は 我のもの
他の未来 献上するなど権利なし】
「……!」
【我が献上 阿諛と無関係の未来のみ
それにて供物は成立す】
天媛は御簾越しに、ふぐぅぅっと唸る。
「またしても……屁理屈勝負で負けたぁぁ……!!」
それから、ゴザをバンバン叩きながら悔しがる。
だが天媛は、御簾越しでも光を放つ、つやつやの髪を揺らし、勾人を見下ろす。
「でもな、未来なんか自分で決めるもんや。
約束どおり“いちばん大事な物”、献上してもらおか。
遺髪? そんなもん取っとき。大事にし。
――せやけど、阿諛とは縁切りな?」
【…………は?】
天媛は笑っている。けれどその目は、薄氷のような冷たさだ。
「阿諛はな、ここからもっと上に行く子や。
あての庇護もある。器量もある。あれは、何さしても化ける。
でも、あんたが側におったら……全部、足枷やねん」
【俺が……足枷?】
天媛ーーいや、天邪鬼は、ゲラゲラ笑い転げながら言った。
「ほんまやでぇ~~!
阿諛は成長するのに、おまえはずっと三夜を引きずる……
“おぢ”のまんまやん。
釣り合い取れへんで? 置いてかれるで~?」
天邪鬼ーーいや、天媛は、淡々と告げる。
「選択肢は二つやで、勾人。
うちに“阿諛との縁切り”を献上するか、
阿諛があんたと一緒に沈んでくか。どっち選ぶ?」
勾人は反論しようと口を開きかける。
でも、頭に浮ぶのは――
阿諛が新しい未来で笑顔を向けられている姿。
その未来に、自分は立っていない。
【…………阿諛は上に行ける……俺が邪魔なら】
「おっ、言うた! おぢ、言うたで!?」
天邪鬼がゲラゲラ笑い、天媛は微笑む。
満足げで、でもどこか試すように。
「ほな、“献上物”として確かに預かったわ。
阿諛とは今日限りで縁切りや。
――うちの勝ちやな、勾人」
勾人は拳をぎゅっと握った。
痛いほど指が食い込む。
それでも言葉にする。
【……阿諛が幸せになれるなら】
天邪鬼は、口笛を吹き吹き♪
「ひゅ~~~、立派やな~おぢ。
でもそれ、“ギバーおぢ”ってやつちゃう?
後でテイカーおぢに化けるんやないでぇ?」
天媛の無理難題が始まった。
「勾人、あんたの一番大事なもん献上しぃ。
物でも心でも、なんでもええ。
嘘ついたら“三夜事件”ばらすで😈♡」
勾人は、以降も短文詩を詠み続ける。
【……ッ 手も足も 届かぬ謎】
勾人もやられっぱなしでは居られない。
詭弁を弄する作戦に出た。
【天媛よ 見知る物のみ 手に取れば
我が大事は いまだ形なき未来】
天媛は拍子抜けしたように片脚を投げ出す。
「はぁ? 未来?
そんな抽象的な……うちを煙に巻くつもりかいな」
【未来を守るは我が心
阿諛のためと 己が運命
形なきものは 差し出せぬ】
天媛は、むむっと唇を歪める。
「屁理屈やな……しかし……
ぐうの音の出えへん屁理屈や……!」
天媛は、揚げ足とりで返す。
「ほんなら訊くわ。
その“未来”……
阿諛と過ごす未来も入っとるんやろ?」
【なっ……】
「なら、未来を献上する=阿諛との未来置いてけ。
ウチが預かる。はい詰み♡」
【未来ごと 人も含むとは 反則や!】
勾人は、言葉遊びの返しに出た。
【ほな言うが。未来は 誰のものでもなし
阿諛の未来は 阿諛のもの
我が未来は 我のもの
他の未来 献上するなど権利なし】
「……!」
【我が献上 阿諛と無関係の未来のみ
それにて供物は成立す】
天媛は御簾越しに、ふぐぅぅっと唸る。
「またしても……屁理屈勝負で負けたぁぁ……!!」
それから、ゴザをバンバン叩きながら悔しがる。
だが天媛は、御簾越しでも光を放つ、つやつやの髪を揺らし、勾人を見下ろす。
「でもな、未来なんか自分で決めるもんや。
約束どおり“いちばん大事な物”、献上してもらおか。
遺髪? そんなもん取っとき。大事にし。
――せやけど、阿諛とは縁切りな?」
【…………は?】
天媛は笑っている。けれどその目は、薄氷のような冷たさだ。
「阿諛はな、ここからもっと上に行く子や。
あての庇護もある。器量もある。あれは、何さしても化ける。
でも、あんたが側におったら……全部、足枷やねん」
【俺が……足枷?】
天媛ーーいや、天邪鬼は、ゲラゲラ笑い転げながら言った。
「ほんまやでぇ~~!
阿諛は成長するのに、おまえはずっと三夜を引きずる……
“おぢ”のまんまやん。
釣り合い取れへんで? 置いてかれるで~?」
天邪鬼ーーいや、天媛は、淡々と告げる。
「選択肢は二つやで、勾人。
うちに“阿諛との縁切り”を献上するか、
阿諛があんたと一緒に沈んでくか。どっち選ぶ?」
勾人は反論しようと口を開きかける。
でも、頭に浮ぶのは――
阿諛が新しい未来で笑顔を向けられている姿。
その未来に、自分は立っていない。
【…………阿諛は上に行ける……俺が邪魔なら】
「おっ、言うた! おぢ、言うたで!?」
天邪鬼がゲラゲラ笑い、天媛は微笑む。
満足げで、でもどこか試すように。
「ほな、“献上物”として確かに預かったわ。
阿諛とは今日限りで縁切りや。
――うちの勝ちやな、勾人」
勾人は拳をぎゅっと握った。
痛いほど指が食い込む。
それでも言葉にする。
【……阿諛が幸せになれるなら】
天邪鬼は、口笛を吹き吹き♪
「ひゅ~~~、立派やな~おぢ。
でもそれ、“ギバーおぢ”ってやつちゃう?
後でテイカーおぢに化けるんやないでぇ?」
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