【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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月に向かって彼は吼えた今宵は母の命日だ

寵愛 ⚠️精神圧迫・虐待に関する描写が含まれます⚠️

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傅役は毎日内臓を抉った。
泣いたら優しく抱きしめて、幽鏡の如く慰める。
牢や刑場を連れ回し、幽鏡の教えすべてを阿諛に注ぎ込む。

やがて骨まで変形し始める。
姿勢が悪くなり、傅役は蹴って指導する。
吐くのはつわり。出血は月のもの。
かと思えば殴る、首を絞める。

阿り諛うことこそが、阿諛の生きる術となる。
阿諛は母であり、幼妻であり、愛弟子であり、
傅役最高傑作の、奴隷少女となっていった。
与えた阿諛(あゆ)の名前すら、
響きだけならおなごの様だ。





「傅役」
どちらまで行くのですか? 
既に古代成人済みの阿諛の問いかけには答えず、
傅役は、小寿林氏の領主屋敷を歩き回る。

肉塊はどこに隠れている?
アレもいよいよ元服だというのに。

「どのツラ下げて参ったんじゃあ! であえであえ!」

傅役は、ようやく獲物を見つけて、ほくそ笑む。





前領主亡きあとの小寿林氏は、老臣たちによる合議制。
傅役も分家代表として、一票有していたが……
今まで一度も、行使したことは無かった。

肉塊は、迷信まみれの老臣たちに取り囲まれて、日々魔除けの女装に身を包む。

そうしているとまるでーー役立たずのおなごのようだ。

何とも奴の息子に相応しい。

「領主もいよいよ元服。夜の手ほどきに参りました」





儀式が始まる。
傅役はまず手本を見せると言ってかがみ、口を離す。
それから阿諛に阿り諛わせた。だが嘔吐など許されぬ。
肩を押して、互いに横になる。
徐々に息が上がる。
最期はすべて拭い去り、儀式は滞りなく終了した。

「あとはどうぞ、ご自由に」



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