②シャリム外伝 潜竜談

テジリ

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紅涙談

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 我が家に届いたのは、軍の入隊許可証だった。娘にこれ以上の幸運はもたらされるまいと考えた両親は、速やかにわたくしを訓練部隊まで送り出してくれた。



 しかし、やはり軍隊というものの現実は厳しかった。わたくしを含め、あちこちから掻き集められた新兵は、訓練基地の最寄駅に集結させられ、トラックの荷台に詰め込まれると、そこから地獄の日々へと誘われたのだった。最初に浴びた洗礼は、必要書類を記入する説明会での出来事だった。

「あの、すみません。さっき書類を貰いそびれてしまいまして」

「ああん!? 何で今言う!」

 そこから始まって、決して暴力は振るわれないまでも、まだ軍への配属前である先輩兵士達による、経験論に基づいた各個人差のある生活指導と、教官と教官もどき達による一方的な持論強要、更には説明会や訓練以外の、早朝から夜遅くまで存在する絶え間ない雑事に踊らされ振り回されて、気が付けば同期の顔も覚える前に1人、また2人、3人と去って行った。

――丁寧に扱え! お国のものだぞ!

――何だその長い髪は! 今から呼ぶ者は切りに行け!

――遅い! さっさと食べてよ片付け間に合わないじゃん!

――何でアイロンがけしても全然皺とれてないの?

――ベッドメイク下手くそ! 舐めてんのか

――早くシャワー浴びて上がって! 後がつかえてるの!

――歯磨き? もう寝る時間って決まってるから

――入ったばっかで洗濯なんて、私が新兵の時は考えた事も無かったよ

――何で指定色のTシャツ持ってきてないの! 誰かから借りてよ

――情報媒体は、入隊後1週間触っちゃいけないって事になってるから。預からせてもらうね

――声が小さい! 聞こえない! アンタ、ホントにやる気あんの? 他の子もっと出来てるよ?

――嫌なら辞めろ! お前達なんぞ辞めた方が軍の為だ

 わたくしはこの頃、本当にどうかしていた。でも家には帰れない、帰りたくないので、ひたすら耐え忍ぶしか無いのであった。

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