タイマヲマイタ 【園児・小学生時代】

テジリ

文字の大きさ
38 / 51
野蛮な風習

モノマネ組体操

しおりを挟む
 灯枇あけびは運動会という親達用の見世物小屋が大嫌いだった。何が楽しくて汗だくの直射日光下で何度も何度も軍隊じみた入場行進の練習をさせられ、色分けされた団ごとにクラス対立を煽られ、馬鹿馬鹿しい出し物の振り付けで、羞恥心に苛まれなくてはならないのか。

 かけっこだって連日の図書室通いで廊下を走り、いつの間にやら鍛えられては居たものの、本という名のニンジンもぶら下げられず、クラスの連中の為に走れだなんて、そんな悪条件下で灯枇あけびに全力を出せというのが間違っている。

 その見世物小屋の集大成かつ極致とも言える出し物が、かの悪名高き組体操だ。どうしてもやりたい奇特な奴がこの世に実在するというのなら、大人も子供もそいつらだけで全部やれば良い。ちなみにその頃、灯枇あけびはクラス内で身長順に並んだら前の方になっていたので、組体操をする時、土台になることはあまり無かった。それでもたかが子供の同級生による支えに気を抜いたら怪我をしかねず、一瞬でも油断する事は出来なかった。

 更には最低最悪な事に、組体操の導入部分に何かクラスごとにダンスせよという理不尽極まりないお達しが先生からあった。小学6年生の発想力などたかが知れている為、灯枇あけびのクラスは小島よしおの「おっぱっぴー」、隣の雲母のクラスは、にしおかすみこの「にしおかー、すみこだよ」、更に隣の妃鞠のクラスは覚えていないが、恐らく何かしらの流行りのお笑いネタから振り付けを持って来ていた筈だ。

 この灯枇あけびにとっては恥ずかしくて堪らないモノマネから始まった組体操唯一の収穫は、練習中にあった一コマしか無かった。

「おい、ちゃんと肩に手を乗せろよ!」

 何と、組体操の流れの一つで何列かに分かれて、まるで汽車ごっこみたいなポーズをとって前と後ろから順繰りにウェーブする際に、灯枇あけびの前に居た人物は、彼女の元片想い相手の1人・松長 蓮だった。

 ちなみに彼は、妃鞠と雲母のアウティングにより、灯枇あけびが昔片想いをしていた事は、確実に知っていた。だからそんな灯枇あけびに触れられるのは嫌だろうし、灯枇あけび本人も気まず過ぎて、軽く肩に手を当てる程度に留めていたのだが、実は真の漢前であった彼には余計なお世話だったようで、強い口調で注意された。灯枇あけびはその雄々しさに惚れ直す事は無かったものの、ああこの人を昔好きだったのは間違ってなかったなあ。と、実は密かに嬉しく思った。

 そんな彼もまた中学入学時点でフコーカへと転校し、のちに長崎の大学へ進学したようで、灯枇あけびは大学の水泳部で参加した大会の際に、電光表示板で彼と同姓同名を発見し、別に会って話したりはしていないが、ふとその一コマを思い出して懐かしくなった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

かぐや

山碕田鶴
児童書・童話
山あいの小さな村に住む老夫婦の坂木さん。タケノコ掘りに行った竹林で、光り輝く筒に入った赤ちゃんを拾いました。 現代版「竹取物語」です。 (表紙写真/山碕田鶴)

ママのごはんはたべたくない

もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん たべたくないきもちを ほんに してみました。 ちょっと、おもしろエピソード よんでみてください。  これをよんだら おやこで   ハッピーに なれるかも? 約3600文字あります。 ゆっくり読んで大体20分以内で 読み終えると思います。 寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。 表紙作画:ぽん太郎 様  2023.3.7更新

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

処理中です...