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島と島 橋で結んだ天草五橋
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タイトルは、野々下 灯枇の小学生時代、学校で頻繁に行われていた、熊本県内の各地方を題材としたカルタの中の、天草の札の言葉の引用である。
ちなみに作者の記念すべき初作品に当たる「シャハルとハルシヤ」は、恐ろしい事に灯枇の大学受験シーズンまっただ中に第一話を書いた。もっとも最初にインターネット上にアップロードした際は、あまりに拙い内容だったため、現在あるのはその後大幅に加筆修正を加えたものだ。
「シャハルとハルシヤ」作中に出した登場人物の、「シャハル=イェノイェ」と「ハンムルーシフ・アビス」の二名は何を隠そう、天草諸島が誇る英雄・天草四郎こと益田時貞を若干程度モデルにしつつ2人に分割し、その要素であるカリスマ性・キリシタン・抗議者を振り分けた。
だから作中のウキン諸島というのは、天草諸島がモデルになっている。分かる人には分かると思うが、天草方言には「あよー」という言葉がある。これは発音的な響きだけでなく、天草の高齢者の間では実際に、中国語の「哎呀」と良く似た使い方をされている。だから驚いた時のハンムルーシフの口癖も、この「あよー」や、バリエーション豊かな「あよー」の変形なのだ。
後はまあ、あまり洋風でないファンタジックな名前にする為には丁度良いので、アイヌ名から「イェノイェ」を拝借した。最初は唐突に思い付いた「イニフィノエ」にするつもりだったが、発音が難しいような気がしたからしょうがない。「ハルシヤ」もアイヌ名であるが、こちらは後から知ったことで、元々は「シャハル」の名前と言葉遊びをしようと思って、インドの「ハルシャ・ヴァルダナ」から借りた名前だ。
それはさておき、天草諸島は歴史的に長崎側の島原半島と相互影響があって、県庁所在地である若草市とはちょっと違う。天草の敬語表現も、天草の人からすれば「~しよらす」か「~しよらすごた」若しくは「~しよらすごたる」で、もう十分丁寧なのだが、それは方言事情を知らない若草の人によっては、まだちょっとぶっきらぼうに感じられる言い方だ。
若草市の敬語だと、「~しよんなはる」まで言ってようやく丁寧だ。だから昔、天草から高校進学して来た学生などは、若草の教師から、敬語がなっとらんとよく怒られたらしい。それに強い憤りを感じた天草からの学生達は、後で口々に天草独立論を唱えたそうだ。
しかしまあ幼い頃の灯枇を含む、一部の若草市民というものは、たかが県庁所在地に過ぎないと分かっていながら、どうにも若草市に関しては相対的な自信家の傾向が強く、その結果として県内の他市町村を、いわゆる郡部と呼んで軽視する傾向がある。例えば昔にも、とあるお偉いさんが来熊するぞと言うときに、ぜひにとお偉いさん訪問を希望した天草側からの要望を、遠いからという理由で退けようとした。
その後再び要望者達の間で、天草独立論が持ち上がった事は言うまでもない。なお結局、灯枇が調べたところ、どうやら訪問自体は叶ったようだ。
若草市のある県は中九州、若しくは地図上では宮崎・鹿児島と同じ南九州に分類されがちだ。確かに県南の八代地方辺りの一帯は、南九州文化圏寄りであるが、県庁所在地の位置的には北九州文化圏寄りである。若草市民は鹿児島市に行くよりも、博多に行く方が安い。それに若草市民からすると、鹿児島市の都会レベルは若草市とどっこいどっこいだ。灯枇は一度、大河篤姫放映中に、水族館のカラフルガニ目当てで鹿児島旅行に訪れたのだが、鹿児島市内を歩いていると、まるで若草市に居るような既視感を覚えたくらい、街の風景には差が無い。
熊本城下町の心の拠り所が熊本城であるように、鹿児島市の心の拠り所はたぶん、意外と人も住んでいる桜島のような気がするが、そういった観光地は全く異なるので、もし感染症が治まってから旅行したくなっても、どちらか1県訪れて済ますのは非常に勿体無い。
ちなみに作者の記念すべき初作品に当たる「シャハルとハルシヤ」は、恐ろしい事に灯枇の大学受験シーズンまっただ中に第一話を書いた。もっとも最初にインターネット上にアップロードした際は、あまりに拙い内容だったため、現在あるのはその後大幅に加筆修正を加えたものだ。
「シャハルとハルシヤ」作中に出した登場人物の、「シャハル=イェノイェ」と「ハンムルーシフ・アビス」の二名は何を隠そう、天草諸島が誇る英雄・天草四郎こと益田時貞を若干程度モデルにしつつ2人に分割し、その要素であるカリスマ性・キリシタン・抗議者を振り分けた。
だから作中のウキン諸島というのは、天草諸島がモデルになっている。分かる人には分かると思うが、天草方言には「あよー」という言葉がある。これは発音的な響きだけでなく、天草の高齢者の間では実際に、中国語の「哎呀」と良く似た使い方をされている。だから驚いた時のハンムルーシフの口癖も、この「あよー」や、バリエーション豊かな「あよー」の変形なのだ。
後はまあ、あまり洋風でないファンタジックな名前にする為には丁度良いので、アイヌ名から「イェノイェ」を拝借した。最初は唐突に思い付いた「イニフィノエ」にするつもりだったが、発音が難しいような気がしたからしょうがない。「ハルシヤ」もアイヌ名であるが、こちらは後から知ったことで、元々は「シャハル」の名前と言葉遊びをしようと思って、インドの「ハルシャ・ヴァルダナ」から借りた名前だ。
それはさておき、天草諸島は歴史的に長崎側の島原半島と相互影響があって、県庁所在地である若草市とはちょっと違う。天草の敬語表現も、天草の人からすれば「~しよらす」か「~しよらすごた」若しくは「~しよらすごたる」で、もう十分丁寧なのだが、それは方言事情を知らない若草の人によっては、まだちょっとぶっきらぼうに感じられる言い方だ。
若草市の敬語だと、「~しよんなはる」まで言ってようやく丁寧だ。だから昔、天草から高校進学して来た学生などは、若草の教師から、敬語がなっとらんとよく怒られたらしい。それに強い憤りを感じた天草からの学生達は、後で口々に天草独立論を唱えたそうだ。
しかしまあ幼い頃の灯枇を含む、一部の若草市民というものは、たかが県庁所在地に過ぎないと分かっていながら、どうにも若草市に関しては相対的な自信家の傾向が強く、その結果として県内の他市町村を、いわゆる郡部と呼んで軽視する傾向がある。例えば昔にも、とあるお偉いさんが来熊するぞと言うときに、ぜひにとお偉いさん訪問を希望した天草側からの要望を、遠いからという理由で退けようとした。
その後再び要望者達の間で、天草独立論が持ち上がった事は言うまでもない。なお結局、灯枇が調べたところ、どうやら訪問自体は叶ったようだ。
若草市のある県は中九州、若しくは地図上では宮崎・鹿児島と同じ南九州に分類されがちだ。確かに県南の八代地方辺りの一帯は、南九州文化圏寄りであるが、県庁所在地の位置的には北九州文化圏寄りである。若草市民は鹿児島市に行くよりも、博多に行く方が安い。それに若草市民からすると、鹿児島市の都会レベルは若草市とどっこいどっこいだ。灯枇は一度、大河篤姫放映中に、水族館のカラフルガニ目当てで鹿児島旅行に訪れたのだが、鹿児島市内を歩いていると、まるで若草市に居るような既視感を覚えたくらい、街の風景には差が無い。
熊本城下町の心の拠り所が熊本城であるように、鹿児島市の心の拠り所はたぶん、意外と人も住んでいる桜島のような気がするが、そういった観光地は全く異なるので、もし感染症が治まってから旅行したくなっても、どちらか1県訪れて済ますのは非常に勿体無い。
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