タイマヲマイタ 【就活生時代】

テジリ

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灯枇だけが居ない街

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 漫画家・三部けい氏原作によるアニメ「僕だけがいない街」の登場人物である、雛月加代が書いた作文のタイトルは、「私だけがいない街」である。灯枇あけびはこの内容を、涙無しには見聞きできなかった。

 かつての灯枇あけびにとっての遠い島とは、あのマリンビューが運んでくれる天草諸島だった。しかしマリンビューは引退して、コモロ諸島で『NTRINGUI EXPRESS』という名前になっているらしい。今もまだ、コモロ諸島に居るのだろうか? なるべく早く会いに行きたいので、どうか灯枇あけびが会いに行ける範囲内で待っていて欲しい。


 そしてかつてマリンビューがコモロ諸島へと旅立ったように、灯枇あけびも就職を機に若草市を離れた。灯枇あけびの場合は願ったり叶ったりであるが、意外と世間一般的には、若者の地元志向というものが高まっているらしい。

 それも決して解らなくはない。一歩九州を離れれば、そこは全くの別世界である。例えば近畿地方の人々は、昔は京の都だったという名残りからか、上方言葉こそが標準語だと思っているようで、堂々とお国言葉で話す。まるでフランス語にプライドを持つフランス人のように。だから言い方もキツく感じるが、慣れればズケズケ物を言ってくれるというのは意外とありがたい。一々深読みして、あれこれと気を使わなくて済むからだ。


もちろんずっと地元に居て、その風土や人口を維持管理してくれるのも非常にありがたい事だし、他所に出て見識を深めたり、地元のプチ代表として、地元に恥じない生き方を通して、他所に対する地元の宣伝活動に勤しんで、地元の評判を上げるというのも楽しい生き方だ。


 そういう子供を持った、「帰らんちゃよか」の歌詞に登場する人格者の両親は、幸せな結婚生活と老後が待ち望める事だろう。しかしどこぞの人物達のように、自身の不幸ばかりに酔いしれて、か弱い子供達を際限なく操り、その人生まで都合良く弄べば、やがて必ずその報いが訪れるのだ。

 別に結婚と出産はイコールの存在では無く、更には実子にこだわる必要も無いのだが、世間は広く何かしらの深い事情があって、いくら望んでも子供を持てない夫婦は確実に居る。それは決して不幸には繋がらない。しかしそういう夫婦からすれば、子供には恵まれた問題家庭という存在は、どう映るのだろうか?


 まあ要するに、野々下 灯枇あけびの最低最悪な親達は、節水にはこだわる割に、灯枇あけびの愛想は無限大にあるのだと勘違いして、今まで好き勝手に湯水の如く、限りなく使い捨てて来たがために、とうとう枯れ果ててしまったという訳だ。総ては身から出た錆、要するに自業自得なのだ。これは自己責任ではない。何故なら失敗した結婚生活の尻拭いを灯枇あけびにさせてきた、要するに面倒事を部下に押し付けて開き直って来た、仕事サボりの無責任上司達が、遂に世間に告発されて失脚する時が来たというだけの話である。


 ところで若草市から居なくなったのは、何も家庭環境に恵まれない野々下 灯枇あけびだけでは無い。例えばFace bookを確認したところ、双樹 響らしき女性や源野 進が、やはりそれぞれ灯枇あけびと同じ街を出て、全く別の土地で暮らしている様子だ。

だから、何も街から居なくなったのは、灯枇あけびだけでは無い。地元を出るというのは、極普通の選択肢の一つであり、その事自体はそんなに落ち込むような話では無いのだ。

正直言ってこのパクったタイトルは、単なるネット上の釣り要素である。野々下 灯枇あけび「も」居なくなった街というのが本来であれば正しい。


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