11 / 53
ひさごの章
しつりの手鞠唄
しおりを挟む
うげ、この人か。昨日長上が寄越すと言っていた人は。初対面の挨拶もそこそこに場所を変え、連れて行かれた先は、使用人が近道代わりによく行き交う、広い庭の一角だった。
「手前の楡の木と、奥の李木が見えるか」
「はい、しつり殿」
「様と呼べ。吾人は長上のしもべではない。付き合いは長いがな……話が逸れた。吾人が止めるまで、木々の間を駆けて往復せよ。そら、始め」
言われるまま走り続けたが、すぐバテた。俺はその場にへたり込んでゼイゼイ息をした。
「まあよいわ、次は鞠つきじゃ。おいそこの、霧彦の部屋から吾人の赤包を取って参れ。ついでに竹水筒も二つ」
通りがかった二人組の使用人は、慌ててそれぞれ走って行った。意外とすぐに持ってきてくれた水を呑み、俺はひと息ついた。しつり様は荷物の中から皮製の手鞠を取り出し、屈んで鞠つきを始めた。
〽てんつく てんつく 跳ね手鞠 ねじり離れて あらいずこ
分かれてお出でになりまする 浮いてなくなり かそいろは
川とり 畑とり 軒とられ 手練の 手管に 手も出ない
それでは頂戴 頂戴な 手鞠は 手込の 飾り物
てんつく てんつく 跳ね手鞠
唄は意味不明だが、鞠つきは上手い。ということは、しつり様は女なのだろうか。
ぼうっとしながら見ていたら、手鞠が取りこぼされ、そのまま弾んで飛んでいった。
「手前の楡の木と、奥の李木が見えるか」
「はい、しつり殿」
「様と呼べ。吾人は長上のしもべではない。付き合いは長いがな……話が逸れた。吾人が止めるまで、木々の間を駆けて往復せよ。そら、始め」
言われるまま走り続けたが、すぐバテた。俺はその場にへたり込んでゼイゼイ息をした。
「まあよいわ、次は鞠つきじゃ。おいそこの、霧彦の部屋から吾人の赤包を取って参れ。ついでに竹水筒も二つ」
通りがかった二人組の使用人は、慌ててそれぞれ走って行った。意外とすぐに持ってきてくれた水を呑み、俺はひと息ついた。しつり様は荷物の中から皮製の手鞠を取り出し、屈んで鞠つきを始めた。
〽てんつく てんつく 跳ね手鞠 ねじり離れて あらいずこ
分かれてお出でになりまする 浮いてなくなり かそいろは
川とり 畑とり 軒とられ 手練の 手管に 手も出ない
それでは頂戴 頂戴な 手鞠は 手込の 飾り物
てんつく てんつく 跳ね手鞠
唄は意味不明だが、鞠つきは上手い。ということは、しつり様は女なのだろうか。
ぼうっとしながら見ていたら、手鞠が取りこぼされ、そのまま弾んで飛んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる