媛彦談《ひめひこだん》

テジリ

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惹この章

引力

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 とっぷりと日が暮れ、長上おさがみと俺は寝所にこもっていた。
 それにしても、とにかく手つきがぎこちない。薄々勘付いてたけど、やっぱりね~。こりゃ男相手に熱を上げた事ないな。自身を好き勝手されるのは気にしないみたいだけど――指示通り動いたり、組み敷かれてヒイヒイ言ってりゃそれで済むもんな。

参った参った。張形引っ張り出して来られる前に、俺が何とかしてあげなくっちゃ。珍しく世話が焼けるなあ。俺は一旦横を向いてから上体を起こした。

長上おさがみ。何もしなくて良いですから、ちょっとそこで見ててください」

「何がだめなんだ。改め直すから教えてくれ」

考えるのは好きでしょう。そうやって首をひねりながら、ずっと思い悩んでればいい。
その間にも、再度横になった俺の、油をまとった指を使って中を拡げる手は止まらない、見つけてから何度も弄って達した箇所に指先を当て、小刻みに震わせるとひとたまりもない。
ああもう、雰囲気に当てられちゃって。伸ばされた手は瞬時に払い除けた。

「はいそこ、頼まれないのに勝手に触ろうとしない。ほんと知りたがり屋で自分は後回しですよね。しかも相手の望みを決めつけて叶えたら、それで満足しちゃうんでしょ。あなたの手口なんかお見通しだ」

「ならばどうしろと。はもはや、そういう生き方しかできぬのだ」

「うひゃあ、びっくりしたあ。急にひっくり返さないで、せめて一声掛けてくださいよ」

「それはすまない。用意は済んだのか」

こくりと頷くと、俺がうつ伏せ状態のまま中に入って来た。これじゃ長上おさがみの顔も見れないし、前も触れない。

「んう……どうですか」

「ああ。とても具合がいい」

「はああ、お腹いっぱい……。きゃうっ、あっああっ。ひゃあっ、そんな急に、まだ心の準備があっ、ふああああっ。……ふー……さいあく、もう出ちゃった。あ、抜かないでくださいっ、長上おさがみはまだ出してないでしょ」

 出してスッキリしたせいか、急に冷静に考えてしまう。何だかんだでここで過ごすのも悪くないよな。いくら親代わりだからって、ずっと姉夫婦の世話になる訳には行かないんだし。言葉通りひとつ屋根の下、俺が居るから遠慮して、甥っ子や姪っ子の一人も出来やしない。

その点長上おさがみなら、いつもじゃないけど話し相手してくれるし、お互い好き勝手して、一々苦にする事もない。何より偉いんだから、どんだけ寄りかかっても問題ない。あと結構俺の事も好きみたい。これも全部子供の為とかだったら泣いちゃう。まあいいや、今を全力で楽しもう。

「ねえ、もっともっと。ぎゅってしながら手も繋いで」

「どんな体勢だ。片腕では厳しくないか。応えるのには、やぶさかではないが」

「やだなあ、頭使いましょうよ。こっちも正面向いたら片腕空いてるでしょ。――えへへ嬉しっ、とうとう捕まえた~」



 俺が朝になって目を覚ましたら、長上おさがみは既に起きて部屋を出る寸前だった。冷たっ、何も言わずに出てくのか。

「お、寝息が止んだ」

「うわあ、なんかヤダ……。そんな方法で寝起きを把握しないでください」

「だったら寝たふりをすればいい。そういえば霧彦きりひこ、昨日渡しそびれた土産をやる。磁石石じしゃくせきだ」

――庭で転がしてみろ。この辺りの土は造営時に川から持ってきた。

 言われた通りにしてみたら、一部の砂が次々と石にくっついてきた。これって砂鉄じゃん。しめしめ、ここは特に量が多い。熱中していたせいで、背後から声を掛けられるまで気が付かなかった。

「あらっ、霧彦きりひこ楽しそう、良いですね~。その石、長上おさがみから頂いたのでしょう」

「そうなんですタマル冠、砂鉄が次々くっつくのが面白くって、でもなぜ分かったんですか」

「だってうちの婚資ですから、うふふ。より正確には、うちの領地にある神鳴り山、その山頂からしか採れない貴重な石なんです。此度の婚姻、長上おさがみのお目当ては石ころですね」

タマル冠は終始にこやかだけど、仮にも夫からの興味が石以下って……嫌じゃないのだろうか、俺なら耐えられない。

「落ち込む様子も楚々ですね。うちの事はお気になさらず。元々長上おさがみは、霧彦きりひこの事ばかりお話しですもの」

なにそれ~、なにそれ~、もっとくわしく聞きたい。


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