18 / 74
第1章 始まり
その裏で
しおりを挟む
魔法大会二日目が終わったとき、王アルベルトと”エルフリーデ”の五人が集まっていた。しかし、アルベルトたちの表情は殺伐としたものであった。
「……例の件についてはどうなった?」
「イーストの王が情報を持っていると聞いた。それでどうする、アルベルト?」
「うむ……」
アルベルトは神妙な面持ちで考え込む。
「……とりあえず、誰かイーストに行ってもらわねばならないな……ガイア、シェリル、お前たちが行け」
「「はっ!」」
「しかし、陛下。イーストに行くなら”不死鳥”だけでいいのでは?」
「それもそうなのだがな、向こうも色々あるらしい。こちらの助けを必要としているのだ」
「それでは、私が行けばいいのでは?」
「それこそ駄目だ、アリス。お前はリーゼロッテの護衛であり、サウスの要でもあるのだ。さすがにお前とガイアの二人を出すわけには行かない。エルシア一人で対処できないこともあるかもしれないしな」
「えっ、私は?」
「黙っていなさい、アレクシア」
この場の雰囲気には似つかない、なんとも緊張感のないアレクシアの声にエルシアが制止をかける。
「とにかく、ガイアとシェリルは明日、イーストに行け。その他の三人はここに残れ」
「「「「「はっ!」」」」」
そして、魔法大会三日目の現在に至る――
「ねえ、例の件ってどういうことなの?」
アリスが昨日から抱いていた疑問をアレクシアたちに尋ねる。
「……さあ?」
「アレクシアが知ってるわけがないでしょ」
「ええっ!?」
エルシアの否定にアレクシアは不満の声を上げるが、エルシアはそんなアレクシアを無視して話を続ける。
「例の件っていうのはね、あなたは学園に行っていてあまり知らないかもしれないけど今、エデンで不審な動きを見せている奴らがいるのよ」
「不審な奴ら?」
アリスは首を傾ける。
「そうよ。実際、陛下があなたにリーゼロッテ嬢の護衛に付けたのは、そのためでもあるのだから」
「えっ、そうなの?」
アリスはエルシアの言葉に驚いた。てっきり、いつものアルベルトの親バカのせいでリーゼロッテの護衛に付けられていたと思っていたが、実際は意外と深刻な問題であったようだ。
「まあ、今は陛下が情報を集めているけど……なかなか集まらないらしいわ」
エルシアの表情から、かなり深刻な状態だと言うことが読み取れる。
「それよりも、私たちはサウスを守ることが優先よ。さすがに何もないと思うけど……」
「大丈夫よ。それにそろそろ決闘が始まるわ」
決闘場を見るとちょうど、リーゼロッテとリンが決闘を始める寸前だった。
「決闘開始!」
審判の宣言と同時にリーゼロッテたちは魔法を唱えていた。
「流石ね。二人とも、安定して精霊武装を展開しているわ」
「当然よ! だってリンは私の妹なんだから!」
「はいはい、わかったわかった」
自分の妹を褒められて騒ぐアレクシアをエルシアは軽く受け流す。このやり取りも見慣れたものである。
「アレクシアも静かにしな――」
アリスが言いかけたその時――
ドカァァーーーーン!
「な、何!?」
突如、会場から爆音が響いた。急いで視線を向けると、そこには巨大な竜がいた。
「「「なっ!?」」」
アリスたちは思わず目を疑った。何故なら、そこにいた竜とは――
「ファフニール!?」
アレクシアが竜を見て叫ぶ。
ファフニール――それは、エデンが戦争中であった時だ。戦争が均衡した頃、人類がこの状況を打破するためにとった行動が精霊の改造である。人類は精霊を無差別に捕らえ、自分たちに有利なように改造を施した。そして誕生したのが人工精霊である。人工精霊は元となった精霊よりもはるかに強力な力を持って――いや、元の精霊とはかけ離れた存在となり、戦争で猛威を振るった。その時の一体が厄災の竜と呼ばれたファフニールである。
「どうしてこんなところに!?」
エルシアもファフニールを見て動揺している。それもそうだろう。本来、ファフニールなどここにいるはずではない存在――とうの昔に封印されたのだから。
アリスは急ぎながらも冷静になり、エルシアたちに告げる。
「アレクシア、エルシア! 会場の生徒の避難を優先して! 私は――」
アリスは会場にいるファフニールに視線を向ける。
「――アイツを倒す」
「……例の件についてはどうなった?」
「イーストの王が情報を持っていると聞いた。それでどうする、アルベルト?」
「うむ……」
アルベルトは神妙な面持ちで考え込む。
「……とりあえず、誰かイーストに行ってもらわねばならないな……ガイア、シェリル、お前たちが行け」
「「はっ!」」
「しかし、陛下。イーストに行くなら”不死鳥”だけでいいのでは?」
「それもそうなのだがな、向こうも色々あるらしい。こちらの助けを必要としているのだ」
「それでは、私が行けばいいのでは?」
「それこそ駄目だ、アリス。お前はリーゼロッテの護衛であり、サウスの要でもあるのだ。さすがにお前とガイアの二人を出すわけには行かない。エルシア一人で対処できないこともあるかもしれないしな」
「えっ、私は?」
「黙っていなさい、アレクシア」
この場の雰囲気には似つかない、なんとも緊張感のないアレクシアの声にエルシアが制止をかける。
「とにかく、ガイアとシェリルは明日、イーストに行け。その他の三人はここに残れ」
「「「「「はっ!」」」」」
そして、魔法大会三日目の現在に至る――
「ねえ、例の件ってどういうことなの?」
アリスが昨日から抱いていた疑問をアレクシアたちに尋ねる。
「……さあ?」
「アレクシアが知ってるわけがないでしょ」
「ええっ!?」
エルシアの否定にアレクシアは不満の声を上げるが、エルシアはそんなアレクシアを無視して話を続ける。
「例の件っていうのはね、あなたは学園に行っていてあまり知らないかもしれないけど今、エデンで不審な動きを見せている奴らがいるのよ」
「不審な奴ら?」
アリスは首を傾ける。
「そうよ。実際、陛下があなたにリーゼロッテ嬢の護衛に付けたのは、そのためでもあるのだから」
「えっ、そうなの?」
アリスはエルシアの言葉に驚いた。てっきり、いつものアルベルトの親バカのせいでリーゼロッテの護衛に付けられていたと思っていたが、実際は意外と深刻な問題であったようだ。
「まあ、今は陛下が情報を集めているけど……なかなか集まらないらしいわ」
エルシアの表情から、かなり深刻な状態だと言うことが読み取れる。
「それよりも、私たちはサウスを守ることが優先よ。さすがに何もないと思うけど……」
「大丈夫よ。それにそろそろ決闘が始まるわ」
決闘場を見るとちょうど、リーゼロッテとリンが決闘を始める寸前だった。
「決闘開始!」
審判の宣言と同時にリーゼロッテたちは魔法を唱えていた。
「流石ね。二人とも、安定して精霊武装を展開しているわ」
「当然よ! だってリンは私の妹なんだから!」
「はいはい、わかったわかった」
自分の妹を褒められて騒ぐアレクシアをエルシアは軽く受け流す。このやり取りも見慣れたものである。
「アレクシアも静かにしな――」
アリスが言いかけたその時――
ドカァァーーーーン!
「な、何!?」
突如、会場から爆音が響いた。急いで視線を向けると、そこには巨大な竜がいた。
「「「なっ!?」」」
アリスたちは思わず目を疑った。何故なら、そこにいた竜とは――
「ファフニール!?」
アレクシアが竜を見て叫ぶ。
ファフニール――それは、エデンが戦争中であった時だ。戦争が均衡した頃、人類がこの状況を打破するためにとった行動が精霊の改造である。人類は精霊を無差別に捕らえ、自分たちに有利なように改造を施した。そして誕生したのが人工精霊である。人工精霊は元となった精霊よりもはるかに強力な力を持って――いや、元の精霊とはかけ離れた存在となり、戦争で猛威を振るった。その時の一体が厄災の竜と呼ばれたファフニールである。
「どうしてこんなところに!?」
エルシアもファフニールを見て動揺している。それもそうだろう。本来、ファフニールなどここにいるはずではない存在――とうの昔に封印されたのだから。
アリスは急ぎながらも冷静になり、エルシアたちに告げる。
「アレクシア、エルシア! 会場の生徒の避難を優先して! 私は――」
アリスは会場にいるファフニールに視線を向ける。
「――アイツを倒す」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
549
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる