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妹は吸血鬼で、銀髪美形は犬で、俺だけが常識人だった。
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***
「起きたか?」
目を覚ましたら、美人な銀髪男に膝枕されていた。
一瞬女かと思った。
「アンタだれ?」
「頭も打ったようだな……重症だ」
いや名乗れよ。誰だアンタ。頭撫でるな。
「あっお兄!起きたっ。ポチ、ありがとう。どいてくれる?ちゅっ」
「うむ」
ハァーー?!
「なっ?!なっ……なな?!」
妹が銀髪美人にほっぺにキスをした!日本では恋人とか夫婦とか、そういう間柄でしかしないって、日系のおっさんに聞いことあるぞ?!こここ、こいつらまさか?!
「どうした?何を慌てている」
「どうしたの?お兄」
「どうしたもこうしたもっ……おい、その子はまだ小学生だぞ!」
「知っているが?」
なんでそんなにスーンとできるんだ?
「マリンと私は吸血鬼で、私の妻なのだから、特に問題はない」
吸血鬼?こいつ電波さんか?妻て……。
心読んでやろ。
(マリンと私は吸血鬼なのだから、おかしいことなどひとつもない。しかし痛々しいな、久豆。普段は大人しいのに、どうして喧嘩なんかしたんだ?)
……なんだ。俺を心配してくれてる優しいやつじゃないか。じゃなくて!本気で自分のこと吸血鬼だと思ってる人だ。やばい人だ。
「吸血鬼って……」
「お兄、ここは病院だよ。静かにしないと。マリン、めっ、するよ?」
「病院?」
右腕にはアーマーみたいなギブス、もう片方の腕には点滴が刺されていた。
病人じゃん、俺。気絶した後、運ばれたのか。
部屋には……俺たち以外いないんだな。
「頭を打って記憶をなくしたようだから、順を追って話そう。マリンと、君と、私について」
「聞いたって、ロリコン認定からは外さないからな」
「かまわない」
かまわないのかよ!
「私の名前はポアラミチ。今のマリンには呼びにくいからとポチと呼ばれている」
「待った」
「なんだ」
「アンタ、自尊心とかそこらへん大丈夫なの?ぽちって…犬じゃないんだから」
「マリンに名づけられた名だ。ポチもなかなか悪くないと思っている」
「そうなんだ……」
今更だが、俺の妹の名前、マリンなんだよな。
俺にはクズっていう名前つけといて。あの暗殺夫婦の頭おかしいんじゃないの。
「私と妻はバンパイアハンターに殺されかけ、命からがら日本にやってきた。バンパイアハンターはしつこく私たちにつきまとい、妻を手にかけたのだ。妻は人間に戻る聖水をかけられ、みるみるうちにミイラのように老衰していった。そこで私は一縷の望みをかけて、子どもに戻る薬を妻に飲ませたのだ」
あー待って。全部心の中と言ってること一致してる。嘘だよな?ねぇ嘘だよね?
「薬はよく聞いた。しかし、効きすぎてしまったのだ。赤子になってしまった妻、マリナージュを……君の家の前に置き去りにした。私も瀕死だった。血を欲していたのだ。あのままでは、人間になってしまった妻の血を吸い取りかねなかった」
「なんで俺んちに置いたんだ?」
「私は生き物の愛の深さをニオイで察知できる。愛情深い人間のもとへ置いたまでだ」
うん……確かに、あの母と父、愛情はすごそうだったな。殺し合い合戦してるっぽいけど。
「マリン、と英語で名前だけ書き、その場をすぐ離れた。君のお母さんは思った通り、愛情深く妻を育ててくれたんだ」
どうしよう、なんか泣けてきたぞ。
涙もろいんだよ俺は。ちくしょう。
「アンタは何してんの。バンパイアって国籍とかあんの?」
「大昔に死んだことになっている。不法滞在で一度つかまりそうになったのだが、ある人に拾われ、色々裏工作をしてもらい、そこで今は住み込みのハウスキーパーをしている。君のお隣だ」
「それ、俺に言って大丈夫なのか?」
「うむ。君は魔術に長けている人間だったから、話す必要があったのだ。君なら妻を吸血鬼に戻せるかもしれないと思って相談をした。あることを引き換えに、君は快く引き受けてくれたぞ」
ふぅん……魔術、ね。
そっかそっかー。魔術ねぇ。
「信じられるかぁ!」
もう無理だ!我慢して聞いてやったが、もう無理だ!看護師さん、ここに精神患者がいますよ!自分のこと吸血鬼だって思ってるみたいです!
「お兄、しずかにっ!めっ」
「お前のせいで妹にめっされちゃったじゃないか」
「君が騒ぐからだ」
「ああもういいよ、わかったよ、妹との関係は親には黙っておいてやるから、好きにやってくれ。俺は寝る」
「待て、取引について、忘れていないだろうな?私達は血の契約を交わしたのだぞ。もしもあの取引を無効にすれば、君がどうなるか……」
ゴクリ……。
「どうなるんだ?」
「語尾にニャン☆をつけないと気が済まない病気になる」
うわぁさいあく。
「ねぇもっとマシなペナルティなかったの?」
「一番マシなペナルティがこれだった。話を戻すが、いいか?」
はあ。もう好きにしろよ……どうしよう、俺、将来廃人決定してるじゃん。
「雇い主からのセクハラに耐え切れず、私はとうとうマリンに泣きついたのだ。まだ7歳だったが、妻はしっかりと私の話を聞いてくれた」
「ワンワン泣いて可哀想だったもんね。ポチ」
「待て、雇い主って男か?女か?」
「男だ」
俺のまわり、ゲイ多すぎィ……………。
***
「起きたか?」
目を覚ましたら、美人な銀髪男に膝枕されていた。
一瞬女かと思った。
「アンタだれ?」
「頭も打ったようだな……重症だ」
いや名乗れよ。誰だアンタ。頭撫でるな。
「あっお兄!起きたっ。ポチ、ありがとう。どいてくれる?ちゅっ」
「うむ」
ハァーー?!
「なっ?!なっ……なな?!」
妹が銀髪美人にほっぺにキスをした!日本では恋人とか夫婦とか、そういう間柄でしかしないって、日系のおっさんに聞いことあるぞ?!こここ、こいつらまさか?!
「どうした?何を慌てている」
「どうしたの?お兄」
「どうしたもこうしたもっ……おい、その子はまだ小学生だぞ!」
「知っているが?」
なんでそんなにスーンとできるんだ?
「マリンと私は吸血鬼で、私の妻なのだから、特に問題はない」
吸血鬼?こいつ電波さんか?妻て……。
心読んでやろ。
(マリンと私は吸血鬼なのだから、おかしいことなどひとつもない。しかし痛々しいな、久豆。普段は大人しいのに、どうして喧嘩なんかしたんだ?)
……なんだ。俺を心配してくれてる優しいやつじゃないか。じゃなくて!本気で自分のこと吸血鬼だと思ってる人だ。やばい人だ。
「吸血鬼って……」
「お兄、ここは病院だよ。静かにしないと。マリン、めっ、するよ?」
「病院?」
右腕にはアーマーみたいなギブス、もう片方の腕には点滴が刺されていた。
病人じゃん、俺。気絶した後、運ばれたのか。
部屋には……俺たち以外いないんだな。
「頭を打って記憶をなくしたようだから、順を追って話そう。マリンと、君と、私について」
「聞いたって、ロリコン認定からは外さないからな」
「かまわない」
かまわないのかよ!
「私の名前はポアラミチ。今のマリンには呼びにくいからとポチと呼ばれている」
「待った」
「なんだ」
「アンタ、自尊心とかそこらへん大丈夫なの?ぽちって…犬じゃないんだから」
「マリンに名づけられた名だ。ポチもなかなか悪くないと思っている」
「そうなんだ……」
今更だが、俺の妹の名前、マリンなんだよな。
俺にはクズっていう名前つけといて。あの暗殺夫婦の頭おかしいんじゃないの。
「私と妻はバンパイアハンターに殺されかけ、命からがら日本にやってきた。バンパイアハンターはしつこく私たちにつきまとい、妻を手にかけたのだ。妻は人間に戻る聖水をかけられ、みるみるうちにミイラのように老衰していった。そこで私は一縷の望みをかけて、子どもに戻る薬を妻に飲ませたのだ」
あー待って。全部心の中と言ってること一致してる。嘘だよな?ねぇ嘘だよね?
「薬はよく聞いた。しかし、効きすぎてしまったのだ。赤子になってしまった妻、マリナージュを……君の家の前に置き去りにした。私も瀕死だった。血を欲していたのだ。あのままでは、人間になってしまった妻の血を吸い取りかねなかった」
「なんで俺んちに置いたんだ?」
「私は生き物の愛の深さをニオイで察知できる。愛情深い人間のもとへ置いたまでだ」
うん……確かに、あの母と父、愛情はすごそうだったな。殺し合い合戦してるっぽいけど。
「マリン、と英語で名前だけ書き、その場をすぐ離れた。君のお母さんは思った通り、愛情深く妻を育ててくれたんだ」
どうしよう、なんか泣けてきたぞ。
涙もろいんだよ俺は。ちくしょう。
「アンタは何してんの。バンパイアって国籍とかあんの?」
「大昔に死んだことになっている。不法滞在で一度つかまりそうになったのだが、ある人に拾われ、色々裏工作をしてもらい、そこで今は住み込みのハウスキーパーをしている。君のお隣だ」
「それ、俺に言って大丈夫なのか?」
「うむ。君は魔術に長けている人間だったから、話す必要があったのだ。君なら妻を吸血鬼に戻せるかもしれないと思って相談をした。あることを引き換えに、君は快く引き受けてくれたぞ」
ふぅん……魔術、ね。
そっかそっかー。魔術ねぇ。
「信じられるかぁ!」
もう無理だ!我慢して聞いてやったが、もう無理だ!看護師さん、ここに精神患者がいますよ!自分のこと吸血鬼だって思ってるみたいです!
「お兄、しずかにっ!めっ」
「お前のせいで妹にめっされちゃったじゃないか」
「君が騒ぐからだ」
「ああもういいよ、わかったよ、妹との関係は親には黙っておいてやるから、好きにやってくれ。俺は寝る」
「待て、取引について、忘れていないだろうな?私達は血の契約を交わしたのだぞ。もしもあの取引を無効にすれば、君がどうなるか……」
ゴクリ……。
「どうなるんだ?」
「語尾にニャン☆をつけないと気が済まない病気になる」
うわぁさいあく。
「ねぇもっとマシなペナルティなかったの?」
「一番マシなペナルティがこれだった。話を戻すが、いいか?」
はあ。もう好きにしろよ……どうしよう、俺、将来廃人決定してるじゃん。
「雇い主からのセクハラに耐え切れず、私はとうとうマリンに泣きついたのだ。まだ7歳だったが、妻はしっかりと私の話を聞いてくれた」
「ワンワン泣いて可哀想だったもんね。ポチ」
「待て、雇い主って男か?女か?」
「男だ」
俺のまわり、ゲイ多すぎィ……………。
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