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早朝の目覚まし

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早朝、朝日がまだ差さない午前四時頃雪は腹部の上に乗っかった腕により目が覚めた。

ドスッ!

「うっ…」

まだ眠気の残る重い瞼を開けるとすぐ隣でアイマスク装備で寝ていた秋月の左腕が腹部に乗っかっていた。

秋月さんって案外寝相悪いのかな…?

深夜いつの間にか自室に戻って寝ていた秋月の姿を思い出しながら心の中で苦笑いを浮かべつつ腕をゆっくりと外し体を起こし背伸びをする。

「うぅ~~んっ!はぁ…」

前もって葉山から教えられたマネジャーの仕事は部員より早い早朝から始まり雪は秋月を起こさないように慌てて支度をするとアラームと笛を持って自室を出て葉山や緑などの教員の部屋を含めた男子部屋へと向かった。

*葉山編

昨晩も来た葉山様と書かれた表札の部屋を開け入るといつも掛けている玩具眼鏡を途上に置いて横向きに寝ている白のトレーナー姿の葉山に近づくと体に手を伸ばす。

「起きて!れいにぃ~!」

勢いよく体を揺らしながら耳元で叫ぶと薄い毛布を引っ張り唸りながら逆方向へと寝返りをうち毛布の中へと潜っていった。

「もうっ!顧問がこんなんじゃ生徒に示しがつかないでしょうが!起きてって…うわっ!?」

毛布を引っ張り捲ろうとすると毛布の中から葉山の手が伸ばされ腕を掴まれると強く引っ張られそのまま中へと引きづりこまれた。

「ちょっ…離し…て…」

体をがっしりと抱き締められ目の前にあるガタイのいい胸板に顔を押し付けられたまま動けずにいると背中に回されていた手が動き腰へと回ると上着の裾に指が触れ肌に沿うように上着が捲れながら徐々上へと上がっていくのを感じ息が詰まる。

「っ…」

れいにぃの指がっ…!

「…か…ん…しろ」

「ん…」

葉山の声が小さく漏れたのと同時に抱きしめられながらも毛布の中で震わせていた拳を思いっきり途上にある葉山の顎目掛けてぶつける。

「いい加減にしろォォォッ!!」

ゴンッ!

「いっ~~~~…!!」

下からアッパーをかけその反動で毛布から飛び出した葉山を他所に開放された雪は毛布から出ると顎を抑え目が覚めた葉山を見下ろす。

「はぁ…はぁ…」

「か、かな!?いきなり何してんだ!?」

「煩いっ!先にしてきたのはそっちでしょ!…はぁ…はぁ…起きたんなら早く支度してよ!この変態教師っ!」

ドンドンドンドンドン…バタンッ!

真っ赤になりながら言い放つとそのまま入口の襖に向かい勢いよく襖を閉め出て行った。

「たくっ…何なんだ?かなの奴」

真っ赤な顔で叫んで出て行った雪の様子に何が何だか分からない葉山は殴られた顎を擦りながら疑問の声を漏らした。
一方、真っ赤な顔のまま出て行った雪はというと…

もうっ!れいにぃの変態教師!寝ぼけてるからってあんな…もう絶対今日は高菜納豆おにぎり作ってやんないんだからっ!

こうして今日一日葉山のみ好物である高菜納豆おにぎり無しが決定されたのだった。

*緑編

次に葉山の隣室にある緑と書かれた表札の部屋に入ると葉山と同じく途上に伊達眼鏡と深夜使用していた見回り用の懐中電灯が置かれ当の本人はうつ伏せで顔だけ横を向いて寝ていた。

「緑先生、起きてくださ~い!もう朝ですよ~!」

葉山と同じ様に体を揺らしつつ耳元で叫ぶ。

「んっ…」

小さく唸りゆっくりと瞼が開かれ焦点が合ってない目で見上げるとぼんやりと雪の姿が見えた。

「あ、緑先生起きてくれた!おはようございます!」

「ん…雪?」

雪の耳に響く声に毛布から手を伸ばしおぼつかない手で探りながら眼鏡を取り掛けると今度はハッキリと雪の姿が見え一気に眠気が覚め飛び起きる。

「うわっ!?あ、相浦!?」

眼鏡を掛けた途端毛布から飛び起き後ずさる緑の姿に雪はクスクスと小さく笑うと再度声をかける。

「ふふっ…緑先生おはようございます!もう朝なので起こしに来ました!」

「あ、ああ…おはよう」

突然の事に頭が追いつかず流されるように挨拶をする緑に笑顔で笑いかけながら部屋から出て行った。

「今の夢じゃなかったのか…」

呆然と雪が出て行った先を見つめながら深夜の雪の意味不審な言動により夢にまで出て来た雪の姿を思い出しながら脳内で先程の出来事と重なり合わせていた。

「はぁ…夢じゃなくてよかった」

緑は、現実に現れた雪の姿に嬉しさで安堵の溜息を漏らしたのだった。

*奥薗・神崎編

教師部屋を後にし奥薗・神崎がいる部屋へと向かうと表札に二人の名前が書かれた部屋を見つけ意を決して襖を開ける。

ガラッ…

「失礼しま…うわっ!?ま、間違えましたァァァ!!」

バァンッ!

部屋の入口の襖をゆっくり開けた先に見えたのは長い黒髪をタオルに当て上半身裸の後ろ姿が見え慌てて謝罪をし勢いよく襖を閉めた。

「はぁ…はぁ…び、びっくりしたぁ~!部屋間違えたのかな…?」

慌てて傍にある表札を確かめようとした瞬間、背後にある入口の襖が開き声が掛かった。

「…間違えてませんよ?」

「え…うわっ!?お、奥薗先輩っ!?」

背後から耳元で声を掛けられ飛び退くと薄い紫色の瞳をした奥薗先輩の姿があり驚いているとその様子に奥薗は小さく笑みを零すと再度口を開く。

「ふふ…ここの仲居さんもそうでしたが、この見た目ですからよく女性と間違われてしまうんですよ」

「あ、なるほど…」

確か奥薗先輩って女形の歌舞伎役者だもんね…間違われて当然だわ

改めて奥薗先輩を見つめ直し普通の女性より綺麗な容姿に見惚れていると奥薗先輩の手が伸ばされ頬に触れると妖艶な笑みで笑いかけられ真っ直ぐに見つめられた薄い紫色の瞳に吸い込まれた。

「可愛いですね…その表情益々独り占めしたいくらいです」

「っ…」

頬に当てられた指先が撫でられ妖艶な笑みが至近距離に迫るとクスッと小さく笑みを零した。

「ふっ…冗談ですよ」

「え…じょ、冗談?」

きょとんとした表情で見上げると触れていた手が離され悪戯っ子のような笑みを向けられた。

「ふふふっ…相浦さんの反応が可愛らしくてつい」

右手を口元に当て上品に笑う奥薗にからかわれたのだと気づき頬を膨らませ叫ぶ。

「もうっ!からかわないでくださいっ!」

「ごめんごめん…ふふっ」

冗談にも程があるよ!はぁ…びっくりしたぁ…

先程の奥薗の言動に未だ胸の鼓動が速い音に息を吐き落ち着かせると奥薗先輩に問いかける。

「神崎先輩はいますか?」

「ああ…葵なら隣の部屋に…」

「いるんですか?じゃあ、お邪魔します…」

ドンッ…

「あ、ちょっ…今は…」

引き止める奥薗の声は届かず雪は中に入っていくと部屋を仕切られた襖を恐る恐る開ける。

ガラッ…

「失礼します、神崎先輩起きて…うわっ!?」

「…ん?」

奥薗と同様に上半身裸で金髪の髪をタオルに当てる神崎が見え慌てて踵を返そうとしたが背中に見えた切り傷の跡を思い出し再度確認のように振り返ると背中に痛々しい切られたような切り傷の跡あった。

「傷…?わっ、どどどうしたんですか!?神崎先輩!?」

慌てて駆け寄り背中の切り傷の跡に慌てふためいていると神崎は小さく笑い声を漏らしながら声をかけた。

「ふふっ…大丈夫ですよ、もう塞がってますので」

「え?よ、よかったぁ…!」

神崎の言葉にその場にへたり込み安堵の声を漏らすと目の前の引き締まった上半身が目に入り慌てて飛び退く。

「わっ!?す、すみませんっ!今すぐ部屋から出ますの…うわっ!?」

慌てて後ろを向き部屋から出ようとすると後ろから神崎の手が伸ばされ腕を掴まれると勢いよく引き寄せられ背後から抱きすくめられる形となってしまった。

「すみません、髪を乾かして貰えませんか?いつもは使用人にして貰っているので上手く乾かせなくて…」

「っ…わ、私がですか?」

引き締まった素肌が触れる状態の中、恐る恐る見上げると金髪碧眼の神崎先輩の顔が見え思わず身を竦めると艶やかな金色の髪から未だ乾いてない水滴が滴り落ち色っぽさを引き立てていた。

「駄目…でしょうか?」

見上げた拍子に真っ直ぐ碧色の瞳に見つめられ言葉に詰まる。

えっと…マネジャーの仕事として皆に起きてもらうのは必須だしその為の手伝い?としてここはやった方がいいのかな…?

あまりの拒否権が出来ない状況に諦めを含みつつおずおずと首を縦に振り頷く。

「わ、分かりました…」

雪の承諾にようやく体を離してもらい背を向けたままの神崎の艶やかな金色の髪を掬うと水滴を取るように優しくタオルで当てながら乾かしていく。

うわぁ…神崎先輩の髪って金色に輝いていて綺麗だなぁ…質がいいわ

「あなたに頼んでよかった…心地いいです」

嬉しそうに感想を述べる神崎にやっている雪の方が嬉しくなり笑みを零す。

「いえ…よく妹達の髪でやってますので」

ついでに言うとあの我儘黒王子もだけどね…

メイドとして扱き使われる黒王子こと金城の姿を思い出しながら苦笑いを浮かべる。

…ガラッ

「おや?葵、相浦さんに髪を乾かして貰っているのですか?」

雪が心配で見に来た奥薗に神崎は首を回し返事をする。

「一人じゃ中々出来なくて相浦さんに手伝いをお願いしたのですよ」

「ふふ…葵も人が悪いですね」

「…渚ほどではないですけどね」

私を挟んで黒いオーラを醸し出す二人に引き攣りながら苦笑いを浮かべる。

何かこの二人似てるかも…

「では、私は先に大広間に行っていますね…相浦さん、ではまた…」

「はい、また大広間で…」

ガラッ…

奥薗先輩に小さく会釈をすると奥薗先輩は先に大広間に向かって行った。

「…髪乾いてきましたね」

水滴が無くなってきた髪を触りながら背を向ける神崎に声をかける。

「ええ…相浦さんのおかげです、早く乾いたので助かります」

「いえ…あのずっと気になってたんですけど、その背中の切り傷って…それに他にも傷跡が…」

腕や胸など上半身に複数見られる傷跡に困惑しながら恐る恐る問いかける。

「ああ…これは仕事で少し…まぁ、少しやんちゃした代償みたいなものなので気になさらないでください」

「あ、なるほど…」

そういえば神崎先輩ってマフィアの関係者だったけ?もしかしてその関係の仕事で怪我したのかな…?

「あの…無理しないでくださいね?」

背中の切り傷の跡に触れながら心配そうな声を漏らす雪に瞼を閉じたまま笑みを零す。

「ええ…心配してくださりありがとうございます」

二人の間に穏やかな空気が流れ金色に輝く髪が揺れた…

*桂馬編

奥薗先輩と神崎先輩の部屋を後にしそこから近い剣道部の部員が集まる少し広い部屋に向かうと剣道部一同様と書かれた表札を見つけ入口の襖をゆっくりと開け中に入ると畳の上で布団を引き詰めて寝ている剣道部の部員が寝ていた。

えっと…翔先輩はっと…

主将である桂馬の姿を探しながら見渡すと右端の方で寝間着である浴衣が少しはだけ鍛えられた胸板が見えながらも上向きで顔を横にし左腕を耳元に置きながら熟睡していた。

…あ、いた!

剣道部の部員達の体を踏まないように通りつつ桂馬の元へ近寄ると小さく寝息をたてる音が聞こえ右側で静かにしゃがみこみ覗き見る。

うわぁ…何か翔先輩のファンクラブの皆さん、全国の和風男子好きの女子の皆さんごめんなさい!

一人こんなレアすぎる姿を見ている事に何だか申し訳なくなり胸の内で謝罪しつつ気を取り直してはだけた胸板を隠そうと下にある毛布をそっと掴むと胸の辺りまで掛けようと腕を伸ばす。

「…そぉ~と…きゃっ!?」

ドスンッ!

掴んでいた毛布の裾に誤って足が滑り毛布を掴んだまま前に倒れ込むと慌てて顔を上げ辺りを見渡し硬直する。

「んっ…」

途上から倒れ込んだ反動で唸り声をあげる桂馬の顔を見ると起きる様子はなく心の中で安堵の溜息つく。

よかったぁ…!翔先輩も皆も起きなくて…今この状況で起きられたら危なすぎだ…とにかく早く離れなきゃっ!

慌てて体を離そうとするとがっしりした腕が背中に回り再度胸板に押し付けられ固定された。

「っ…」

や、やばいかも…

「ん…柔らかい」

焦りと恥ずかしさで真っ赤になりながら身動きを取ろうともがいていると途上から寝言で小さな声で桂馬の呟きが聞こえ益々頬に熱が集まる。

こ、これ…さすがにキャパオーバーなんですけどっ!?

葉山みたく顎を殴るなど出来るはずもなく今出来る抵抗として胸板をペシペシと叩きながら小さな声で叫ぶ。

「翔先輩っ…!は、離し…て…!」

「んっ…ゆ、雪?」

ようやく気づいて目を覚ました桂馬を見上げると寝ぼけながらも虚ろな目で見下ろす桂馬の姿があった。

「先輩…!翔先輩!あの…離してもらえませんか?」

「え…うわぁっ!?」

真っ赤な顔で訴える雪の姿に見下ろすと自分が何をしているのかを把握し慌てて手を離す。

はぁ…やっと開放された

桂馬から体を離し足元に座り込むと真っ赤になって動揺している桂馬に向き直る。

「す、すまん…っ!つい太郎かと思って…」

「太郎…?」

誰だそれ…?

桂馬から出た名前に思わずぽかんと口を開けていると耳まで真っ赤な桂馬が付け加えるように話を続ける。

「太郎っていうのは昔飼ってた犬の名前で…」

「犬!?」

私は犬と間違われたのか…

犬と同類だと察しショックを受けているとその様子を見た桂馬が慌てて訂正した。

「あ、いや!その…太郎より柔らかかったというか…はっ!?そ、そういういかがわしい意味ではなくて…その…つ、つまり全然太郎とは似ても似つかないから心配するなっ!」

「ふふっ…分かりました」

頑張って真っ赤になりながらも訂正する桂馬が可愛くて思わず小さく笑いながら頷く。

「っ…そ、それならよかった」

可愛らしく小さく笑う雪の姿に見惚れながらも桂馬は安堵の言葉を漏らすと雪が思い出したかのように声をかける。

「あ!皆を起こさなきゃ…」

周りを見渡すと未だに熟睡中の剣道部の部員達の姿に今更ながらにマネジャーとしての仕事を思い出す。

「あ、俺がやっておくから雪はバスケ部の所に行ってやれ…バスケ部のマネジャーなんだから」

「じゃあ、お言葉に甘えます…では、また大広間で…」

「ああ…またな」

互いに小さく笑いながら別れ桂馬がいる剣道部部屋を後にしたのだった。

*立川編

最後にバスケ部の部員がいる部屋へと向かうと剣道部と同じくバスケ部一同と書かれた表札の部屋を見つけ入口の襖をゆっくりと開けると剣道部の部員とは違い寝相が悪すぎる姿でバスケ部の部員達が熟睡していた。

うわぁ…これを起こすのかぁ…

枕や毛布の散乱状態に部員達の足や頭がバラバラにある姿に思わず絶句しつつもバスケ部部長でありエースの立川の姿探すとど真ん中で黒の半袖姿でお腹を出して少しヨダレを流して寝ている立川の姿を見つけ部員達の体を踏まないように近づく。

ふふっ…何か子供みたいだなぁ…立川先輩

遊び疲れて眠っている子供のような寝顔を覗き込みながら小さく笑うとポケットからポケットティッシュを取り出し口元に零れるヨダレをそっと拭き取る。

「んっ…むにゃむにゃ…」

いい夢見るのはいい事だけどそろそろ起きてもらわなきゃね…!

「立川先輩~!起きてくださ~い!朝ですよ~!」

頬をつつきながら叫ぶと唸り声と共に瞼がゆっくりと開かれた。

「ん~…もう食べられな…い?」

「立川先輩!おはようございますっ!」

「え…秋月…じゃなくて相浦っ!?うわっ!?」

秋月さん…?

ゴツンッ!

「いっ…!?」

「いてっ…!」

慌てて飛び起きようとした拍子に互いにおでこをぶつけ痛みでおでこを抑えていると立川が再度驚きの声をあげる。

「な、何で相浦が!?」

「これもマネジャーの仕事のうちなので…!」

満面の笑みで言い放つと立川は引き攣り気味に苦笑いを浮かべた。

「あははは…仕事か」

「もう皆、支度して大広間にる筈なので立川先輩も早く支度してください!朝から練習あるんですから!」

「は、はい」

「よし!じゃあ皆も起こさなきゃ…」

「起こす?なら俺に任せろ!」

「へ?」

そう言うと何故かニコニコ笑顔で立ち上がり周りでバラバラに寝ている部員達を蹴り飛ばし中には耳を引っ張り叫び起こし始めた。

ドンッバシッ!ドンドンッ!!

「おい!起きろ!グズグズしてっと朝飯抜きだぞ!?」

「痛っ!」

「ぎゃっ!!」

「うわっ!?」

「あ、あの…立川先輩?」

これはさすがにやり過ぎなんじゃ…というかやられてる部員達の方が可哀想に見えてきた…

「ん?こうでもしないとこいつ等永遠に眠りこけてるからな…おら!起きろっ!」

永遠に眠ってそうだったのは立川先輩の方です…

自分の事を棚に上げ矛盾している立川の行動に苦笑いを浮かべる雪であった…





















































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