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深夜の見回り

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夕食後、立川の花火大会前に花火がしたいと言う言葉に前もって持参していた花火グッズで東武道場の屋上にて遊ぶ事となった。

「あ~あ…つまないなぁ…」

「優希が花火やりたいと言い出したのに何を言っているのですか?」

隅の方で退屈そうに花火をやる立川に奥薗が問いかけるがあからさまにつまらないと言わんばかりに不満を口にする。

「だってよ~…相浦の奴、疲れたから部屋に戻るとか言ってやらねぇし…つぐみちゃんは何故か居ないし…掃除の時みたく野郎ばかりじゃつまんねぇつーの!」

「ふふ…優希は相浦さんと一緒に花火をしたかったのですね」

「なっ…誰もそんな事は言ってねーだろ!?」

「見てれば分かりますよ、優希は顔に出やすいですから」

「うぇ!?ま、マジかよ…っ!?」

慌てて自分の顔に手をやる立川に笑いながらもこの場にいない雪の姿が気になり手に持っていた花火を立川に渡す。

「これあげますから元気出しなさいな…」

「え?ちょっ…なぎちゃん先輩!?」

花火を渡し背を向けて下に降りる扉へと向かう奥薗に戸惑いの声をかけながらも引き止める寸前で葉山から頭を叩かれた。

パシッ!

「痛っ…!」

「な~に退屈そうな面してんだよ~?」

「うるせぇ!こんな野郎ばかりじゃ楽しくもねーよ!」

「ばーか!桂馬達を見てみろよ?華がなくても楽しんでるだろうが!」

葉山の言葉に周りを見渡すとバスケ部も含め桂馬を入れた剣道部の部員達は夏の花火を見事に楽しんでいた。

「あははは…あれは単純に馬鹿か男慣れしてるからじゃねーの?」

それに、剣道部に限っては掃除の時間の時つぐみちゃんと一緒だったし…何で俺だけ野郎ばかりなんだよ!

本当は雪と一緒に花火をやりたかった気持ちも含め桂馬と違い野郎ばかりの状況に嫉妬の言葉を愚痴愚痴に心の中で漏らしていると、葉山は立川の気持ちもお構い無しに根も葉もない事を口にした。

「お前なぁ…人生楽しんだもの勝ちなんだから華がなくても楽しまなきゃ意味ねぇだろうが!」

「華がない人生なんて楽しめないっすよ…」

「はぁ…グダグダ言ってねぇで行くぞ!」

「うわぁ…っ!?」

冷めた言葉を漏らす立川を半ば無理やり腕を引き桂馬達の元へと駆け出した。

俺…葉山先生は好きな女性なんて一生出来ない気がすると思うわ…

あまりにも女っ気のなさそうな葉山に立川は心内でふと思ったのだった…


立川が野郎ばかりの空間の中で花火をやけくそで楽しんでいる頃、雪はというとイベント回避という理由も含めつつ夕食時から姿の見えない秋月を探す為に懐中電灯を片手に電気が消えている旅館を歩き回っていた。

「少しづつイベント内容変わってきてるけどまだ油断ならないもんね…それに秋月さんの行方も気になるし…」

もしまた何か行動を起こしているのだとしたらと思うと不安で心配になり、夕食後前もってれいにぃに相談した結果一人秋月を探す事となった。
れいにぃが言うには強力な助っ人がいるから問題はないと言っていたが…

「強力な助っ人っていったい…」

キー…

「え…」

背後から扉が開く音がし恐る恐る振り返ると暗闇の中で誰かが近づく音がし持っている懐中電灯を恐怖心から力強く握りしめ明かりを照らすとそこには眩しそうに片目を瞑る神崎先輩の姿があった。

「神崎先輩…っ!?」

「…貴方は、こんな所で何をやっているのですか?」

「それはこっちの台詞ですよ…!神崎先輩こそ何をやっていらしたのですか?」

「私は業務室に置いていた書類を取りに…それより光を当てるのを止めてもらってもよろしいでしょうか?」

「あ…す、すみません!」

慌てて懐中電灯を下ろすと神崎先輩がゆっくりと近付いた。

「皆と花火しに東武道場には行かなかったのですか?」

「ええっと…実は、夕食の時に姿が見えなかった秋月さんの事が気になって…」

「そうですか、それなら丁度いいですね…良かったら一緒にこれから見回りでもしませんか?」

「へ?見回りですか?」

「相浦さんの探し人が見つかるかもしれませんよ…?」

「え?もしかして、神崎先輩は秋月さんの居場所が分かるんですか?」

「さぁ…私にはそんな人の行動を読み取れるような力は御座いませんよ」

「あははは…そうですね」

そんなサイコパス的な能力があったらもはや人間じゃないしなぁ…

正論とも言える神崎の言葉に納得していると再度確かめるかのように神崎が問いかける。

「では、一緒に見回りしますか?」

う~ん…どの道まだ秋月さんの場所は分かってないし見回りのついでに歩き回ってたら見つかるかも…

「…はい!ご一緒させて頂きます!」

神崎の言葉に頷くと夜の暗闇の中での見回りが始まった。

「そこ少し床板が軋んでおりますので気をつけてくださいね?」

「は、はい…っ」

懐中電灯を持っている雪よりも旅館の内情に詳しい神崎に助けられながら歩いていると奥薗と神崎の部屋付近から光が見え駆け出した。

もしかして秋月さんが…っ!?

部屋の前まで来ると入口付近にゆっくりと足音を立てずに近付く。

「相浦さんは私の後ろに隠れていてください…」

「…はい」

囁くような小さな声で会話をし神崎先輩の背後に隠れつつゆっくりと開かれる襖を凝視する。

トクン…トクン…

心臓の音が聞こえるぐらい緊迫した状況に高鳴りながら目だけは真っ直ぐに開かれていく部屋内を見つめていた。

スー…バタンッ!

「え…」

「秋月さん…?」

開かれた襖から姿を現したのはずっと探していた秋月の姿だった。
手には大きなハサミを持ち傍らには奥薗が着付けしてくれた桜柄の白色の浴衣に状況が追いつけず呆然と見下ろしているとすぐに状況が読み込めたのかみるみる怒りの表情に変わった秋月が手にあるハサミを握りしめ真っ直ぐに雪に向かった。

「っ…」

急な出来事に体が硬直し動けないまま向かって来るハサミが目に入り思わず目を瞑る。

殺される…っ!!












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