男装ホストは未来を見る

Shell

文字の大きさ
6 / 108

美男と美女

しおりを挟む
「先輩~!星那先輩~!」

校門の前に立ち並ぶ生徒の中から一人一際大きい声で名前を呼ぶ女子生徒がみえた。

「ひのちゃん!」

小柄で眼鏡をかけているショートボブヘアの女子生徒は私の声に気づき生徒を掻き分けこちらに向かって駆け寄る。

「星那先輩!おはようございます!」

「おはよう、ひのちゃん。それより大丈夫?怪我してない?」

沢山の人混みの中を小柄な彼女が居るだけでも危ないのにそれを掻き分け出てきた彼女の体が心配になった。

「大丈夫です!心配してくださりありがとうございます!」

嬉しそうにそう言う彼女にホッと安堵する。
彼女…壮真そうま日乃ひのは私や理沙、真昼の一つ下の二年生の後輩であり私がかつて助けた一人でもある。
壮真 日乃…通称ひのちゃんは校門の前にいる生徒達と同様私のファンになってしまい慕ってくれている一人なのだが唯一周りのファンと違うように接しているのには二つ理由がある。
一つは他のファンとは違いしっかりと時と場合を考えマナーを守れるしっかり者である事。
もう一つは彼女が私のよく知るホスト仲間の明の妹である事だ。
彼女自身も私が兄である明の同僚だとは知らないし、勿論明も私が彼女と知り合いだと知る由もないのだがバイト仲間のよしみで妹みたいに可愛がっているのだ。
その容姿と性格は兄である明とは似ても似つかなく気性が荒々しくチャラチャラしている兄と違い大人しくて律儀でしっかりしており小柄で可愛らしいひよこのようなほんわかした見た目が印象的である。

あー、明じゃなくて私のところに妹として貰えないだろうか。

つくづくそう思う気持ちを抑えつつ毎回のように明にはもったいないと思うのだった。

「ひのちゃんならこの現状を四字熟語で言うと何ていう?」

再度、目の前の生徒の大軍を見ながら横にいるひのちゃんに問いかける。

「そうですね…しいて言うなら四面楚歌ですかね」

「あははは…」

笑えねぇ…

乾いた笑いを浮かべつつ仕方ないとばかりに目の前の大軍に向き直る。

「ちょっと星那!?一人で行ったら危ないって!」

「大丈夫、理沙や皆はそこにいて。いつものようになんとかするから…」

校門に足を進め先生達に挨拶をする。

「おはようございます」

「おはよう美嶋。頼むからこの軍団何とかしてくれ」

生徒指導の先生にそう言われ苦笑いを浮かべつつ頷く。

パンパンッ!

手を叩き未だに対立しつつ騒ぐファンの生徒達に注意を引きつける。

「皆、おはよう!」

まずは挨拶とばかりに笑顔でそう言うと途端に奇声と共に返ってくる。

「おはようございます!!」

「星那先輩~!今日もお美しい!」

「星那ちゃん~!こっち向いて~!」

んー、まずは男の子から…

男子生徒達に近づくと一人の眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒の手をそっと握る。

「せ、星那先輩っ!?」

声がうわずる男子生徒をよそにほんの僅かな微笑みを向ける。

「私からのお願い…毎朝挨拶してくれるのは嬉しいけどこんな皆が通る校門前に集まるのはやめようね?」

半ば上目使いを使い女の子特有のうるうる目で可愛さを倍増させたお願いは男子生徒達には効果覿面だったらしくすんなりと受けいれてくれた。

「は、はい!星那先輩(ちゃん)の頼みなら!」

そそくさと退散する男子生徒達を見つつ未だに残る女子生徒達に向き直る。

次は女の子…

女子生徒達の中の少しツリ目の女子生徒に近づくと今度は上から覗き込むように顎をそっと救い視線を合わせる。

「せ、星那先輩っ…!?」

突然の事に真っ赤になる女子生徒を他所に更に追い討ちとばかりに攻めに出る。

「皆が会いに来てくれるのは嬉しいけど大勢で集まって大好きな皆が怪我したりしたら嫌だな。私の気持ち分かってくれるよね?」

若干上から目線で言った台詞だが女子生徒達はそのギャップに奇声をあげ一斉に頷く。

「わ、分かります!」

「よかった…じゃあ、怪我しないうちに戻ろうか?」

「は、はい!」

女子生徒達も素直に教室に戻っていく様子を見送りながらホッと溜息をつく。

「ふぅ…」

「星那先輩さすがです!」

「星那、お疲れ様!」

「やっぱり星那はすげーな!イケメンすぎるわ」

後ろから事の次第を見終わりかけよる三人に苦笑いを浮かべる。

「毎回やるのは少々骨が折れるけどね」

「美男すぎるのも美女すぎるのも罪だね」

理沙の一言に更に溜息をつきたくなったがチャイムが迫っていた事に気づき溜息所ではなく早走で教室に向かったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...