男装ホストは未来を見る

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能力の欠点

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近くの駅の公衆トイレでバイト用に男装をし脱いだ制服やスクール鞄をリュックに詰め込むと慌ててお店に向かって走った。

ガチャ

「あ、せなさん!実は、明さんが少し変なんです」

お店に着くと入口の掃除をしていた後輩ホストが心配そうな表情で詰め寄った。

「変?明なんていつも変みたいなもんじゃねーか。気にすんな」

適当に言ってその場を後にしそのまま更衣室に向かう。

ガチャ

「うわっ!?」

バタンッ!

更衣室のドアを開けた瞬間、中で丁度着替えていた上半身裸の隆二が目に入りすぐさま閉め直す。

びっくりした~~~!
隆二さんが今の時間着替えてるの忘れてた。
ここは出直した方がいいよね…?

寄っかかっている更衣室のドアから離れようとした瞬間、突然更衣室のドアが開き寄っかかっていたためそのまま後ろに倒れると着替え終わった隆二さんの胸板が支えとなった。

「っ…」

「何勢いよく閉めてるんだ?着替えるなら入ればいいだろ?」

その声におずおずと見上げるとすぐ途上に隆二さんの顔があり思わず固まる。

「あ、えっと…つい閉めてしまって…」

「そうか、もう着替え終わったから早く入って着替えろよ?」

「は、はい…」

隆二は星那の肩を優しく叩きその場を後にしていった。

「はぁ……」

急な事に力が抜けその場に座り込む。

分かってたのにやってしまった…

いくら未来がみえたとしてもそれを忘れてしまったりすれば元も子もない。
そんな予知の能力の欠点に再度危機感を覚えた。

 *

ガチャ

着替えが終わり休憩室に入ると後輩ホストが言っていた変な明がテーブルの前をウロウロと悩んだ様子で歩いていた。

「明、何やってんだ?」

「あ、せな。今はお前に構ってる暇はねぇんだよ」

「あ、そう」

まるでいつもは構ってあげてるみたいな言い草に若干イラつき放置しようと椅子に座るが、ずっとウロウロしている明が気になって集中出来なかった。

「あのさ!ずっと後ろでウロウロされても気になって仕方ないんだけど?何かあるなら聞くから理由ぐらい話せよ」

「はぁ?お前なんかにこの俺が相談なんかするかアホ!お前に相談するんならお店に来る客だけで充分だっつーの!」

「ほう…もういい!どうせ明の事だから妹ちゃんの事だろうからね!」

「なっ!?な、何で分かんだよ!?」

図星か…

明が悩み事と言ったら妹ちゃん…つまりひのちゃんの事しかないのは一目瞭然だった。

「お前は顔に出やすいんだよ、ばーか!」

「なっ…何考えてるか分かんねーお前よりマシだっつーの!」

何か明といい合いするだけで疲れてきた…

しょうもない言い合いに馬鹿げてきて座り直すと話の本題を切り出す。

「はぁ…それより妹ちゃんと今度は何があったんだ?」

ま、だいたい予想はつくけど…

朝の交差点での兄妹喧嘩を思い出しきっとその事だろうと結論付けた。

「ひのが事故らねぇようにって朝わざわざ俺が交差点まで送ってる事が気に食わねぇっていいやがって、明日も同じように着いてきたら口聞かないって言い出しやがってよ…兄として妹を守るのは当然の事なのに何で分かんねぇだよ!」

まぁ、明がそこまで心配するのも分かる。

明とひのちゃん兄妹は両親を交通事故で無くしており、だからこそたった一人の家族であるひのちゃんを大切に思うあまり明は若干過保護になっていた。

「ひのちゃんはお前の気持ちちゃんと分かってると思うぞ?」

「でも、じゃあ何で俺を遠ざけようとするんだよ?分かってねぇ証拠じゃねーか!」

「ひのちゃんももう高校生でいい歳だぞ?自由ぐらい少しは欲しいって思っての発言なんじゃねーか?」

「高校生でも俺からしたらまだ幼い妹なんだよ!自由だって少しはあげてるつもりだし…」

「はぁ…そんなんでひのちゃんに彼氏なんか出来たらどうすんだよ?」

「はぁ?彼氏なんか俺が許すか!」

ドンッ

思わず足で明の足を蹴る。

「いてっ!」

「アホかお前!恋愛ぐらい自由にさせてやれよ!そんなんでよく自由はあげてるなんて言えたな?」

「うっ…」

図星をさされ思わず口ごもる明に更に話を続ける。

「それに、そんなに心配ならひのちゃんにバレねぇように隠れてついていけばいいだろ!お前が一緒にいるっつー事が気に食わねぇだけでお前の気持ちを遠ざけてるわけじゃねぇんだからよ」

「た、確かに…」

「はぁ…」

本当、ひのちゃん苦労するなぁ…こんな馬鹿な兄がいて。

その場にいないひのちゃんに向けて同情の気持ちを向けたのだった。


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