男装ホストは未来を見る

Shell

文字の大きさ
47 / 108

気がかりなこと

しおりを挟む
深夜十一時頃、ホストの仕事が終わり帰宅した豹は玄関の鍵を開けドアを開くとそこにはメイド服のままの星那の姿があり靴だけは器用に脱ぎ捨てられた状態で玄関先で倒れていた。
 
「おいっ!」

すかさず近寄ると規則正しい寝息が聞こえ安堵する。

「なんだ寝てるだけか…」

爆睡してピクリとも動かない星那を見つめふいに髪の毛を耳にかける。

「んっ…」

「働きすぎだ…馬鹿」

星那の体を抱き抱えると星那の部屋へと運ぶ。

ガチャ

部屋のドアを開けベッドの上に下ろす。

「たくっ…先に帰って来たのが俺だからよかったもののバレたらどうするんだよ」

寝ている星那の鼻を摘み言うと小さく唸る声が返ってきた。

「うっ…んんっ…」

「少しは俺の忠告を聞けよな…?」

「んっ……豹」

「っ…」

急に名前を呼ばれ手を離すと赤くなる顔を手で覆う。

「…調子狂う」

小さく漏れた言葉は爆睡中の星那には聞こえずただ静かな部屋の中で消えていった。

 *

翌日、いつものように週明けの学校に行くとさっそくグラウンド場にて寧々ちゃんが比留間くんに先日買ったラッピングに入った手作りクッキーを渡している所が見えた。

ちゃんと渡せたみたいでよかった…

教室に入ると既に着いていた豹の姿を見つけ早足で自分の席に荷物を置きうつ伏せで眠る豹の肩をそっと叩く。

トントン

「んっ…?」

あからさまに眠そうに顔を上げ視線が交差する。

「なんだ…?」

「昨日その…運んでくれてありがとう」

小さく豹にしか聞こえない声でそうお礼を言うといつものように変わらず皮肉じみた返答が返ってきた。

「あんな所に放置してたら蓮さん達にバレるかもしれないからな…」

「なっ…人がせっかくお礼を言って…うわっ!?」

ドンッ!

「星那~!おっはよ~!」

教室に入って来た理沙に後ろから抱きつかれ話が途切れる。

「おはよう、理沙」

「ま~た宮端くんとバトってるの~?仲いいね~!」

「こんな奴仲良くなんかないって!」

指さし豹を見ると再度うつ伏せで寝ている姿が見え呆れて落胆した。

結局また反論出来ずじまいか…

 *

移動教室のため理沙と別れ別々の教室である三階に向かう途中での廊下を歩いていると相変わらず女子や男子生徒ファンからの声掛けを度々笑顔で答えながら歩いていると目の前を歩く豹の姿が見えた。

「豹!」

その声に足を止め振り向くと慌てて豹の元に近寄った。

「また運んだ話ならもう…」

「ううん、ちょっと聞きたい事があって…」

「なんだ…?」

「その…昨日のバイト終わりにお店の入口付近に誰が不審な影とか見なかった?」

「いや、特にそういうのはなかったが…何かあるのか?」

「ううん、何も無かったんならいいの…答えてくれてありがとう」

お礼を残し教室に向かおうとした瞬間、豹の手が腕を掴んだ。

パシッ

「待て!お前…何か隠してる事あるだろ?」

ギクッ

「…話せ」

ゆっくりと振り向き豹に向き直るとものを言わせる目で見つめられ降参とばかりに肩を落とす。

「分かった話す…でも隆二さんや皆には内緒にして?」

「分かった」

それからショッピングセンターでの出来事と縁側で隆二さんから聞いた話とくこの前バイト終わりに見た不審な影について包み隠さず話した。

「…で、またその不審な影とか見たか気になって」

「…これは俺の推測でしかないがその隆二さんの元カノという人とそのお前が見た不審な影は何か関係があるかもな」

「それ私も心のどこかで思ってた…もしそうなら直接元カノさんに話を聞かなきゃ!」

「お前また無茶するつもりか?次どんな目に会うか分からないのに一人で行動するな!」

「私は大丈夫だから!…心配してくれてありがとう」

「だから心配じゃなくて単に一人で行動したら危な…」

豹の口元に人差し指を押し当て反論する口を止める。

「分かってるよ…ちゃんと分かってるから」

私には未来を見る力がある…危険な時しか起きないとしてもこれからその危険な時がないとも言えない。
だからこそ自分の身は自分で守れるし隆二さんや元カノさんが危険に会うことはなくなる。
だが、豹と一緒に行動するとなるともし推測でしかないが未来が見えなかったら為す術もなくなってしまう…そうならないためにも一人で行動しなくては…

押し黙る豹をそのままに笑顔で別れを告げその場を後にした。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...