85 / 108
深夜の悪夢
しおりを挟む
あの後、どうやって帰ったのか家に着いた時にはあまりよく覚えていなかった。
気分が晴れない気持ちを押隠すため隆二さんに夕食の断りを入れ早々にベッドに入り睡眠に入った。
『…助けて!誰かっ…!』
一人の幼い少女が必死に分厚い壁を血まみれになりながら叩く様子がゆらゆらと表れては消えていった。
これは私の記憶…?
その少女は幼少期の自分に瓜二つだったがこの様な記憶は過去には存在しなかった。
「んっ…」
頭にピリッとした痛みを感じ顔を歪めながらも流れ込んでくる映像に集中した。
これは今日行った式典のドーム…?
ドームの中には見る事のなかった講堂のようなものが見え、そこには沢山の人々で埋め尽くされていた。
凄い人…
だんだんと映像は舞台に近づき見えたのは黒のスーツ姿の椿さんだった。
椿さん…?
何処か緊張した面持ちでゆっくりと前に進む椿を見ていると突如天井からスポットライトから落ち、それは下にいた椿に当たり椿本人は頭に血を流し倒れていた。
嘘っ…!?
思わず息を呑む映像はそこで切れ地響きのように痛かった頭は少しづつ痛みが薄れていった。
ガバッ!
思わず寝ていた体を起こし目を覚ますと額から薄ら冷や汗が流れ落ち荒く乱れた呼吸がこれが予知夢だと物語っていた。
「はぁ…はぁ…椿さんが何であんな…」
恐らく天井での設備の不具合と思われる現象に体中に寒気が走った。
「明日行かなきゃ椿さんが死んじゃうっ…!でもこの事は蓮さんには悟られちゃ駄目だ…蓮さんを式典には行かせないっ!」
どうかただの夢であってほしいと思いつつもこれは現実で起こると確証があるため恐怖で再度眠る事は出来ず気を落ち着かせるため一階に降りリビングにて水を飲んでいるとふといるはずもなかった豹の声が飛んできた。
「…眠れないのか?」
「え…」
すぐに声の方を振り向くと玄関がある方のドアの入口に腕を組みもたれ掛かる豹の姿があった。
「豹…帰ってたの?」
「…今帰った」
さらりと返す豹に今まで姿を見せずどこにいたのか?と問い詰めたかったが豹の表情はいつもより暗くどこか苦しそうな顔をしていたため問い詰める事は出来なかった。
「そう…」
「何かあったのか…?」
「実はね…蓮さんには秘密にしてほしいんだけど、明日式典に行こうと思うの」
「急にどうしたんだ?」
「言えない…ただ私が行かなかったら蓮さんを悲しませる事になる」
「そうか…」
「私ね、今日蓮さんの話を聞いて思い出した事があるの…昔暗いどこかの部屋で必死に助けを呼びながら壁を叩く自分の姿を」
「…」
「でもその記憶は私の記憶から一切なくて…どこかただの夢だと思ってる節があるんだ。そんな記憶と共に昔の自由のない蓮さんの話を聞いて許せない気持ちが強く湧いたの…まるで自分も似ていたかのようなそんな気持ちが」
「…記憶にないのならそれは夢だと信じてもいいと思う」
「ふふっ…やっぱりそうだよね?きっとただの夢だったんだ…」
夢で片ずけるにはあまりにもリアル過ぎると感じつつも豹の言葉にその夢を夢だと決めつけ無理矢理記憶の隅へと追いやった。
「は、はっくしゅんっ…!」
不意に出たくしゃみと同時に寒気を覚え両手で体を抱き締める。
「馬鹿…そんな薄着で来るからだ」
叱咤する言葉を星那に言いながらも着ていた黒のニットガウンを背後から星那の肩に掛ける。
「ありがとう…」
「早く部屋に戻れ…その服装じゃ見つかったら女だとすぐバレるぞ」
素の姿のまま女性らしい寝間着の星那を見下ろしそう言うとそそくさと自室である三階へと戻っていった。
豹の匂いがする…
ガウンから匂うミントの香りに鼻をくすぐりながらもその中で香る微かな血の匂いにふと嗅ぐのをやめた。
血の匂い…何で?
豹はいったい何処に行き何をしていたのだろう…?そんな疑問が眠れない頭の中で浮かんでいた。
気分が晴れない気持ちを押隠すため隆二さんに夕食の断りを入れ早々にベッドに入り睡眠に入った。
『…助けて!誰かっ…!』
一人の幼い少女が必死に分厚い壁を血まみれになりながら叩く様子がゆらゆらと表れては消えていった。
これは私の記憶…?
その少女は幼少期の自分に瓜二つだったがこの様な記憶は過去には存在しなかった。
「んっ…」
頭にピリッとした痛みを感じ顔を歪めながらも流れ込んでくる映像に集中した。
これは今日行った式典のドーム…?
ドームの中には見る事のなかった講堂のようなものが見え、そこには沢山の人々で埋め尽くされていた。
凄い人…
だんだんと映像は舞台に近づき見えたのは黒のスーツ姿の椿さんだった。
椿さん…?
何処か緊張した面持ちでゆっくりと前に進む椿を見ていると突如天井からスポットライトから落ち、それは下にいた椿に当たり椿本人は頭に血を流し倒れていた。
嘘っ…!?
思わず息を呑む映像はそこで切れ地響きのように痛かった頭は少しづつ痛みが薄れていった。
ガバッ!
思わず寝ていた体を起こし目を覚ますと額から薄ら冷や汗が流れ落ち荒く乱れた呼吸がこれが予知夢だと物語っていた。
「はぁ…はぁ…椿さんが何であんな…」
恐らく天井での設備の不具合と思われる現象に体中に寒気が走った。
「明日行かなきゃ椿さんが死んじゃうっ…!でもこの事は蓮さんには悟られちゃ駄目だ…蓮さんを式典には行かせないっ!」
どうかただの夢であってほしいと思いつつもこれは現実で起こると確証があるため恐怖で再度眠る事は出来ず気を落ち着かせるため一階に降りリビングにて水を飲んでいるとふといるはずもなかった豹の声が飛んできた。
「…眠れないのか?」
「え…」
すぐに声の方を振り向くと玄関がある方のドアの入口に腕を組みもたれ掛かる豹の姿があった。
「豹…帰ってたの?」
「…今帰った」
さらりと返す豹に今まで姿を見せずどこにいたのか?と問い詰めたかったが豹の表情はいつもより暗くどこか苦しそうな顔をしていたため問い詰める事は出来なかった。
「そう…」
「何かあったのか…?」
「実はね…蓮さんには秘密にしてほしいんだけど、明日式典に行こうと思うの」
「急にどうしたんだ?」
「言えない…ただ私が行かなかったら蓮さんを悲しませる事になる」
「そうか…」
「私ね、今日蓮さんの話を聞いて思い出した事があるの…昔暗いどこかの部屋で必死に助けを呼びながら壁を叩く自分の姿を」
「…」
「でもその記憶は私の記憶から一切なくて…どこかただの夢だと思ってる節があるんだ。そんな記憶と共に昔の自由のない蓮さんの話を聞いて許せない気持ちが強く湧いたの…まるで自分も似ていたかのようなそんな気持ちが」
「…記憶にないのならそれは夢だと信じてもいいと思う」
「ふふっ…やっぱりそうだよね?きっとただの夢だったんだ…」
夢で片ずけるにはあまりにもリアル過ぎると感じつつも豹の言葉にその夢を夢だと決めつけ無理矢理記憶の隅へと追いやった。
「は、はっくしゅんっ…!」
不意に出たくしゃみと同時に寒気を覚え両手で体を抱き締める。
「馬鹿…そんな薄着で来るからだ」
叱咤する言葉を星那に言いながらも着ていた黒のニットガウンを背後から星那の肩に掛ける。
「ありがとう…」
「早く部屋に戻れ…その服装じゃ見つかったら女だとすぐバレるぞ」
素の姿のまま女性らしい寝間着の星那を見下ろしそう言うとそそくさと自室である三階へと戻っていった。
豹の匂いがする…
ガウンから匂うミントの香りに鼻をくすぐりながらもその中で香る微かな血の匂いにふと嗅ぐのをやめた。
血の匂い…何で?
豹はいったい何処に行き何をしていたのだろう…?そんな疑問が眠れない頭の中で浮かんでいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる