男装ホストは未来を見る

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ほろ酔い

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灯篭流しを見終わり別荘にて窓から吹き抜ける夜風を浴びながらゆったりと街並みを見つめていた。

「おい、隆二!お前も飲むか?」

蓮はキッチンにある冷蔵庫を開きながらウッドデッキにて三人で足を伸ばしながら寛ぐ隆二に声をかける。

「少しだけ飲もうかな…?」

「ははっ!りょう~かい!」

蓮は冷蔵庫から白ワインと炭酸水とツマミであるマスカットを取り出し透明なグラスに白ワインを注ぎ氷で割ると炭酸水を別のグラスに注ぎ小皿に洗った葡萄を置きそれらをお盆に乗せ三人のいるウッドデッキまで運ぶ。

「はいよ!せなと豹は未成年だから炭酸水な?」

「ありがとうございます!」

星那、豹の順に炭酸水の入ったグラスを渡しお礼を言う星那に笑顔で応える。

「隆二はこれな?」

「サンキュ…」

飲み物とツマミを星那と蓮の間に挟み空に輝く星空を見上げる。

「田舎の星空ってよく見えて綺麗ですね…」

「そうだな…俺も久しぶり見た気がするわ」

ポツリと漏らす星那に蓮は幼い頃の別荘での思い出を思い出しながら答える。

あの頃は家族みんな仲良くて確執なんか一切なくて…ただ家族を優しく見守る母の笑顔が見るのが幸せだったな

ふと懐かしく思う幼少期の思い出に内心苦笑いしながらツマミである葡萄を口にする。

「…ひっく」
 
「…ん?」

隣で小さく聞こえた星那の声に隣を見ると炭酸水ではなく白ワイン入りのグラスを持つ星那の姿があった。

「おまっ…それ俺のワイン!」

「…ひっく…ふぇ?」

若干ほろ酔いみたいな様子で頬をほんのりと赤く染め虚ろな目で見上げる星那に慌てて白ワイン入りのグラスを取る。

「せな、それ飲んだのか!?」

「…ん?おいひぃよ?」

「馬鹿!これは酒だ!」

俺の白ワインと星那の炭酸水のグラスを一瞬に置いたのがまずかったか…

自分の失態に後悔しながらも白ワインを半ば半分ぐらい飲んだ様子の星那の顔を見る。

「せな、炭酸水はいいから水飲め!今すぐ持って来てやるから…」

ギュッ…

「え…うわぁっ!?」

バタンッ!

「蓮大丈夫か!?」

キッチンまで向かおうとし立ち上がると星那から浴衣の裾を掴まれ下に引っ張られるとそのまま床に崩れ落ちすぐに心配する隆二の声がかかった。

「いててっ…何とか大丈夫だ」

「水は俺が持って来てやるからそれまでせなを見てろ」

「わりぃ…」

蓮の代わりに隆二がキッチンに水を取りに行くと裾から手を離した星那が虚ろな目でゆっくりと足の間を割って迫っていた。

「っ…せ、せな!?」

「…れんしゃん…ぎゅ~ってしよ…?」

「っ…」

目と鼻の先にある星那の顔がコテッと小さく首を傾げ虚ろな目のまま舌っ足らずで甘える仕草に思わず心臓が鷲掴みされたみたいにドキッと跳ねる。

やばいっ…可愛すぎて何も言えねぇ…っ!

ホストとして酔った女性客の対応もそれなりに出来る蓮だがほろ酔いの星那の可愛いさには何も為す術がなかった。

「…れんしゃん?」

「…はっ!あ、えっと…」

この場合、いつも通りみたく抱き締めたらいいのか?

どうしたものかと悩んでいると星那の手が首に伸び抱きつく形なり浴衣越しに星那の胸の感触を感じ思わず硬直する。

「っ…」

「…れんしゃん…ぎゅ~…っ!」

胸元で可愛い声で言う星那に悶えまくりになり可愛すぎて限界状態の蓮はそのままされるがままとなっていた。

「せな!?離れなさいっ!!」

すると水を取りに行っていた隆二が戻りお盆の上に水を一旦置くと蓮から星那を引き剥がす。

「…んっ」

剥がした星那を抱き取りくたっとなる体を右腕で支え床で倒れている蓮に声をかける。

「蓮大丈夫か!?」

「っ…助かったぁ…」

真っ赤な顔のまま腕で顔を隠す蓮に安堵しているとくたっとなっていた星那が振り向き虚ろな目で見つめる。

「りゅうじしゃん…?」

「せな、早く水飲んで酔いを覚ませ…」

お盆に置いていた水入りのグラスを空いている手で取ると星那の前に差し出す。

「…りゅうじしゃん…のましぇて…?」

グラスを握る手にそっと触れとろんとした目でお願いする星那に思わず固まる。

「っ…」

「…だめぇ…?」

「いやっ…だ、ダメではないが…」

…って何言ってるんだ!俺は!?

思わず口が滑って言ってしまった言葉に内心動揺しまくっていると水入りのグラス越しに星那が口を開き唸る。

「あ~…はやくぅ~…!」

「っ…」

いやいや、可愛すぎだろっ…!

子供みたいな甘え方に世話焼きの心と悶える気持ちが交差しながらもグラスに入った水をゆっくりと流し込む。

ゴクゴク…

「んっ…ぷはぁ…」

「せな、水零れてるぞ…?」

グラスをお盆に置き口元に少し零れている水を浴衣の袖で拭うと星那の手が触れ口元を拭っていた袖にゆっくりと唇が近づき触れた。

「へへ…ありがとぅ…りゅうじしゃん…っ!」

「っ…もう酒は飲むなよ?」

「…ふぇ?」

まだ酔いが抜けていないのかキョトンとする星那に可愛さで完全に見惚れているといつの間にかキッチンにて避難しツマミである葡萄を食べ終え二階に上がろうとする豹の足音に気づきすかさず止めに入る。

「豹!せなを二階に運んでくれ!」

「は?…やだ」

あからさまに嫌そうな顔をする豹に再度ヘルプの声をかける。

「蓮もだが、俺は片付けしなくてならないからその前にせなを自室に運びたいんだ!頼む!ほらせな、豹のとこに…ん?」

いつの間にか胸の中に消えた星那を探して辺りを見るといつの間にか既に豹の元にいる星那の姿があった。

「なっ…」

「んっ…ひょぅ…いかないでぇ…」

浴衣の裾を小さく引っ張りながら虚ろな目で見上げる星那に驚きながらも蓮の二の舞になるのはごめんだと思い腰を下ろすと星那の腕を肩に回し背に背負う。

「よいっしょっ…」

「ん~…あったかぁ~い…!」

嬉しそうに背中に頬擦りする星那に呆れながらも再度隆二に向き直る。

「はぁ…仕方ないから運びます」

「悪いな、せなを頼んだ…」

 *

隆二と別れ二階に上がっていると背中から星那の甘えた声が聞こえた。

「ん~…ひょぅ…だいすきぃ…」

「っ…分かったからしがみついとけ」

いつもは言わない星那の素直な言葉に一瞬ドキッとなりつつも星那の部屋に着き開けるとふかふかの大きな白いダブルベッドに星那をゆっくり下ろす。

バフッ…

「んっ…」

髪や浴衣が乱れながらも横向きで倒れる星那の髪をそっと耳にかけ優しく髪を撫でる。

「お前じゃなければよかったのに…」

何故、星那だったのだろう?どうして…

そんな儚く苦しい思いもきっと眠る星那には届かない事は分かっていた…それでもベッドの上で幸せそうに眠る星那の姿に言わずにはいられなかった。

程なくして寝息を立て始めた星那を確認するとドアノブに手をかけ静かに部屋を後にした。

ガチャ……カランッ…

豹が部屋を出て行った際にドア付近にて青色の指輪が転がった音が静かな部屋に響いたのだった…
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