モブキャラCの私は乙女ゲーム世界で助言役を勝ち取りました

一章 幼少期編

とにかく、平凡には過ごせそうです

私の前世はイケメンによって壊された。だが、壊される前までの私はイケメン好きの面食いであるゲームに理想を抱いていた。そのゲームの名前は…『～フルーツパラダイス～恋の蜜は七人のプリンス』とい女子の夢である逆ハーレム系の乙女ゲームである。そして、そのヒロインというのは現在砂場で沢山の園児達に囲まれて遊ぶ『星七 苺』その人である。

「あずきちゃん～！見て見て！お城だよ～！」

「お城なら仕掛けを作った方がいいよ。もし誰かが侵入して来たら大変だから…」

「うわぁ！あずきちゃん凄い～！」

「こんなの朝飯前だよ」

星七 苺の隣でリアル過ぎるお城を作った彼女…『桜桃 小豆』もこの乙女ゲーム世界の重要人物の一人である。桜桃 小豆はヒロインである苺の親友であり攻略対象者の一人である『桜桃 凌牙』の双子の姉でもある。しかも、小豆は物を作る天才で将来高校生にして”天才機械工学者”と言われるようになりヒロインである苺の一番の頼れる味方でもある。一方、弟である凌牙はというと…

「りょうが！何すんだよ！？」

「投げろと言われたから投げただけど？」

「だからって…うぇぇぇんっ！」

「りょうがくん、ボールをぶつけちゃダメだって言ったじゃないの！」

「知らない」

うわぁ…冷徹感満載だなぁ

素知らぬふりで一人隅の方でサッカーボールを蹴る凌牙に先生達は困った顔をしていた。

乙女ゲームでは桜桃 凌牙は冷徹のツンデレでたまに見せるデレが可愛かったんだけど…今の感じでは全然デレ感ないな

「桃ちゃん～？皆と遊ばないの？」

背後から先生に声をかけられ真顔で答える。

「暑いから嫌だ」

「でも皆、暑くても元気よく遊んでるよ？」

「嫌だ」

「そっかぁ…」

中身が十八歳の女子高生だから周りの園児達みたいに暑い中遊びたいとは思わないのだよ。日陰が一番！

日差しの下で遊ぶ園児達に駆け寄って行った先生を見送りながら地面に乙女ゲーム内容を書き上げる。

えっと…今、会ってるのはヒロインである『星七 苺』と親友脇役キャラの『桜桃 小豆』とその双子の弟であり攻略対象者の『桜桃 凌牙』だよね。攻略対象者はあと六人…

・担任で生徒会顧問の『棗なつめ杏子あんず』
・生徒会会長の『鳳梨ほうなしグアバ』
・生徒会副会長の『柿本かきもと蜜柑みかん』
・生徒会会計の『木通あけび檸檬れもん』
・生徒会書記の『国光くにみつ林檎りんご』
・生徒会監査の『梅木うめきライチ』

ついでに言うと桜桃 凌牙は生徒会書記である。

…ん？あれ？でも桃の名前はないよね？脇役キャラでもないとすれば、単なる論外過ぎるモブキャラ？それに、この乙女ゲームの設定はヒロインが高二になってからだ。今は五歳児の園児だし、焦る必要ないんじゃないか…？

目の前でヒロイン達が遊ぶ様子に地面に書いていた手が止まる。

もし、高校生だったとしても先生に名前を忘れられるくらいの影の薄い桃ならモブキャラとして平凡に暮らしていける気がする…

一筋の光が見えたような可能性に焦っていた気持ちが一気に消えた。

うん、とにかく平凡には過ごせそうだ。