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一章 幼少期編
アップルパイは恋の味
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「桃ちゃん、お待たせ!大丈夫だった?」
「うん、何ともないよ」
「良かった!受付によるともう乗らなきゃいけないらしいから改札口に行きましょ」
「はい」
結局、どうする事も出来なかったアップルパイを片手に母から手を引かれ改札口まで向かうと父が名残惜しそうに問いかけた。
「桃、パパは寂しいよ。桃と離れるなんて…」
「私は寂しくないよ」
「そうだよな。ママがいるもんな?」
「うん」
「でも、パパが恋しくなったらいつでも電話してくれていいんだからね?」
「うん」
一切するつもりないけどね
「んじゃ…またな、桃」
「んっ…」
名残惜しそうに最後に瞼にキスを落とし父は去って行った。
「桃ちゃんは泣かないのね?」
「うん、別に…」
返事をしながら母を見上げるとそこには薄ら涙が見え胸が締め付けられた。
あんなどうしようもないダメ男でも好きだったんだから悲しいよね…まぁ、私は涙なんて…
「うわぁぁぁんっ!行かないでぇ…!」
「へ?」
不意に聞こえた泣き叫ぶ子供の声に驚き視線を巡らせると改札口の前で両親の服を掴んで泣き叫ぶ男の子か女の子か分からない程の美形の子供がいた。
「りん、ママとパパは仕事なの。お願いだから離して?ね?」
「嫌だぁ…!僕も一緒に行くもん!」
「仕事だからりんを連れていく事は出来ないんだよ。パパ達の言う事を聞いてくれ!」
「ふっ…うわぁぁぁんっ!!」
「楠、あとはお願いね?」
「はい、お任せ下さい」
「りん、帰って来たら沢山遊んであげるから大人しく待っているんだぞ?」
「楠の言う事をしっかり聞いてね?」
「…っ…うん」
りんと呼ばれた子供の返事を聞くと両親達は飛行機へと向かった。
「ママ、ちょっと行ってくる」
「え、ちょっ…桃ちゃん!?」
母を残し立ち尽くすりんの所へと向かうと手に持っていたアップルパイを差し出した。
「これあげる」
「え…?」
「甘い物でも食べて元気出して?今は一人でもきっといつか貴方を好きな人でいっぱいになるから」
「そう…かな?」
「うん、私が約束する」
りんに小指を差し出すとりんの小指が絡まり指切りげんまんをする。
「嘘ついたら針千本の~ます、指切った!」
「ねぇ、また…会える?」
「う~ん、それは分かんないけど互いに覚えてたらきっとまた会えるよ」
「分かった!じゃあ絶対忘れないからね!」
「ふふっ、期待せずに覚えておくよ。バイバイ!」
「またね!」
薄い桃色の髪に大きな黒い瞳を持つりんと呼ばれていた泣きぼくろが特徴的な子に手を振りながら今日の事を記憶の奥にしまった。
「桃ちゃん、あの子と何してたの?」
母の元へ戻ると何故かニヤニヤ顔の母がいた。
「別に。ただの人助けだよ」
「ふ~ん、人助けねぇ~?」
「な、何?」
「別に~、桃ちゃんも隅に置けないなぁと思ってね」
「そんなんじゃないからね!それに、桃は顔が良すぎる人とは恋をしないんだもん!」
「それはママも賛成。イケメンを好きになっても泣きを見るだけよ」
「うん、分かってる」
母が悲しげな顔を見せたのはその日が最後だった。そして、父とは一生会うこともなく母と二人で再スタートを切ったのだった。
*
桃が去って行った後、アップルパイを手に初恋をした少年がいた。
「可愛らしい方でしたね?林檎坊っちゃま」
「うん!名前聞きそびれちゃったけどね」
「その箱には何が入ってるんですか?」
「ん~、何だろう?…あ!アップルパイだ」
「まぁ、美味しそうですね!」
「うん、食べるのが楽しみだよ。…ん?”マイ・スターへ、愛を込めて”?」
「きっと林檎坊っちゃまへのメッセージですよ」
「えへへっ、そうだといいな」
りん…いや、林檎少年はアップルパイの箱を大事そうに抱えまた銀髪の少女に会える事を指切りした小指に願いを込めたのだった。
「うん、何ともないよ」
「良かった!受付によるともう乗らなきゃいけないらしいから改札口に行きましょ」
「はい」
結局、どうする事も出来なかったアップルパイを片手に母から手を引かれ改札口まで向かうと父が名残惜しそうに問いかけた。
「桃、パパは寂しいよ。桃と離れるなんて…」
「私は寂しくないよ」
「そうだよな。ママがいるもんな?」
「うん」
「でも、パパが恋しくなったらいつでも電話してくれていいんだからね?」
「うん」
一切するつもりないけどね
「んじゃ…またな、桃」
「んっ…」
名残惜しそうに最後に瞼にキスを落とし父は去って行った。
「桃ちゃんは泣かないのね?」
「うん、別に…」
返事をしながら母を見上げるとそこには薄ら涙が見え胸が締め付けられた。
あんなどうしようもないダメ男でも好きだったんだから悲しいよね…まぁ、私は涙なんて…
「うわぁぁぁんっ!行かないでぇ…!」
「へ?」
不意に聞こえた泣き叫ぶ子供の声に驚き視線を巡らせると改札口の前で両親の服を掴んで泣き叫ぶ男の子か女の子か分からない程の美形の子供がいた。
「りん、ママとパパは仕事なの。お願いだから離して?ね?」
「嫌だぁ…!僕も一緒に行くもん!」
「仕事だからりんを連れていく事は出来ないんだよ。パパ達の言う事を聞いてくれ!」
「ふっ…うわぁぁぁんっ!!」
「楠、あとはお願いね?」
「はい、お任せ下さい」
「りん、帰って来たら沢山遊んであげるから大人しく待っているんだぞ?」
「楠の言う事をしっかり聞いてね?」
「…っ…うん」
りんと呼ばれた子供の返事を聞くと両親達は飛行機へと向かった。
「ママ、ちょっと行ってくる」
「え、ちょっ…桃ちゃん!?」
母を残し立ち尽くすりんの所へと向かうと手に持っていたアップルパイを差し出した。
「これあげる」
「え…?」
「甘い物でも食べて元気出して?今は一人でもきっといつか貴方を好きな人でいっぱいになるから」
「そう…かな?」
「うん、私が約束する」
りんに小指を差し出すとりんの小指が絡まり指切りげんまんをする。
「嘘ついたら針千本の~ます、指切った!」
「ねぇ、また…会える?」
「う~ん、それは分かんないけど互いに覚えてたらきっとまた会えるよ」
「分かった!じゃあ絶対忘れないからね!」
「ふふっ、期待せずに覚えておくよ。バイバイ!」
「またね!」
薄い桃色の髪に大きな黒い瞳を持つりんと呼ばれていた泣きぼくろが特徴的な子に手を振りながら今日の事を記憶の奥にしまった。
「桃ちゃん、あの子と何してたの?」
母の元へ戻ると何故かニヤニヤ顔の母がいた。
「別に。ただの人助けだよ」
「ふ~ん、人助けねぇ~?」
「な、何?」
「別に~、桃ちゃんも隅に置けないなぁと思ってね」
「そんなんじゃないからね!それに、桃は顔が良すぎる人とは恋をしないんだもん!」
「それはママも賛成。イケメンを好きになっても泣きを見るだけよ」
「うん、分かってる」
母が悲しげな顔を見せたのはその日が最後だった。そして、父とは一生会うこともなく母と二人で再スタートを切ったのだった。
*
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「可愛らしい方でしたね?林檎坊っちゃま」
「うん!名前聞きそびれちゃったけどね」
「その箱には何が入ってるんですか?」
「ん~、何だろう?…あ!アップルパイだ」
「まぁ、美味しそうですね!」
「うん、食べるのが楽しみだよ。…ん?”マイ・スターへ、愛を込めて”?」
「きっと林檎坊っちゃまへのメッセージですよ」
「えへへっ、そうだといいな」
りん…いや、林檎少年はアップルパイの箱を大事そうに抱えまた銀髪の少女に会える事を指切りした小指に願いを込めたのだった。
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