モブキャラCの私は乙女ゲーム世界で助言役を勝ち取りました

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二章 ゲーム開始

暴君の暴走現場

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まず、私が思った事は…何処で間違えた?今まで両親の離婚以外は全て平行線で通って来た筈だ。それなのに突如として攻略対象者達に気づかれ声を掛けられ更には推測していた”助言役”並の頼み事をされる…今の私には最悪としか言い様もない想定外過ぎるイベントだ。

「桃~ちゃん?聞いてる~?」

よし、ここは完全に…

「お断りします」

…拒否るが勝ちだ

「え~!?桃ちゃんだって、俺と苺ちゃんが恋仲になる事を応援してくれてるんでしょ~?なら、そうなる為に協力ぐらいしてよ~!」

「お断りします。確かに、貴方と星七さんが一緒になる事は望んでいますが私が協力する意味がありません。そうなりたいなら人に頼るのではなく自分の力でしてください」

「そんなぁ~…動くのは基本俺だから桃ちゃんはアドバイスして欲しいだけなのに~!」

「お断りしますって言ったらお断りします!これ以上、貴方に関わりたくありません」

「あ、ちょっ…桃ちゃん!?」

檸檬の引き止める声を無視し空になったお弁当を片手に屋上を出た。

うん、これで良かったんだ。これ以上彼奴に関わりたくないし…

自分に言い聞かせるように呟くと屋上を振り返ることなく教室へと向かった。

 *

ドンッ!!

「…貴様、俺様に盾突くつもりか?」

などと二次元でしか聞かないようなアウェイなセリフを聞いたのは何時ぶりだろうか?というか、現実で聞くってどうよ?いや、現実というか乙女ゲー世界だけども…

「お願いです!もう間違えませんから許してください…っ!!」

「”もう間違えません”…か、それ何百回言えば気が済むんだ?あん?」

現在、私の目に映るのは同じクラスのひ弱な委員長の小堺こさかい君が地べたにて土下座しているのを何食わぬ顔で見下ろす金髪ヘアに赤い瞳が光る浅黒い肌が特徴的の鳳梨ほうなしグアバが居た。何故、そんなありえな~い!的な状況に遭遇したかと言うと屋上から教室へ戻る際に誰も通ることも無い六階にて最悪な状況に遭遇したわけである。

「すみませんっ!もうしません!言いません!だからどうか…どうか…っ!!」

そんな切ない懇願は血も涙もない彼には届く訳もなく赤い瞳が益々睨みを効かせていた。

「誰が貴様なんか…」

「待って!グアちゃん止めてっ!!」

グアちゃんという他の人が口にすることも無い可愛らしいあだ名で叫び止めに入って来たのはヒロインこと苺だった。

まずい…っ!?ヒロインまで来るとか反則でしょ!

壁にて張り付いて身を潜めていた私はヒロインの登場に慌てて口元を抑えた。

「苺…お前、何でここに?」

「グアちゃんが小堺君を連れていくのが見えたのよ!それより、また小堺君を虐めてたでしょ!?もう止めてって言ったのに」

「お前には関係ない事だ」

「ああ、そ~うですかっ!もうそんなグアちゃんなら絶交よ!破局よ!もう近づかないで!!」

「なっ…!?」

「小堺君、大丈夫?一緒に行こう?」

「あ、えっと…」

女神の救いかのように苺から差し伸ばされた手にチラッとグアバを見るが今にも殺られそうな目にすぐ様目を逸らし苺の手を掴む委員長に私は心底同情した。

こんな痴話喧嘩に巻き込まれる委員長って…ドンマイ

「…クスッ」

「おい!誰かいるのか…?」

やば…っ!つい声でちゃった!?えっと、こういう時は…

「にゃ~ぉぅ…」

鼻を抑えて絞り出した猫真似は我ながら似てると思った。

「チッ…猫か」

…っておい!信じるのかよ!普通学校内に猫いないぞ馬鹿暴君!

バレて欲しいのか欲しくないのか分からないツッコミを心内に入れた。

「…じゃ、さ・よ・な・らっ!」

「お、おい…っ」

捨て台詞のように死刑宣告を言い残したヒロインはグアちゃんこと暴君を置いて委員長と共に去って行った。

「何でこうなるんだよ…」

一人崩れ落ちる取り残された暴君を壁際からこっそり見つめるが私が彼に手を差し伸べる事はないだろう。この先永遠に…

よし、今のうちに下に降りるか!

…と足を階段の方角に向けた瞬間冷たい声が掛かった。

「おい、待て」

!?…いやいや、有り得ないから!

聞かなかった事にし再度足を踏み出そうとするが阻むように冷たい声が再度掛けられた。

「お前だ、変質者。そこで人を覗いて楽しかったか…?」

「っ…」

間違いなくこれは…私だ

冷たい汗と背筋を突き抜ける寒気が走りその場に体が停止した。

「俺のヘタレっぷりに笑っていたのか?それがお前の趣味か?変質者」

そう声を掛けると同時に私の視界に現れたのは金髪に浅黒い獅子が風をなびかせ鋭い赤い瞳が真っ直ぐに射抜いた。

私…寿命尽きたかも





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