モブキャラCの私は乙女ゲーム世界で助言役を勝ち取りました

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二章 《教育編》~夏の誘い~

期末テスト本番〜ライバル出現!?鬼の通話と苛立ちの火花

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赤点を取るという失態を犯した抜き打ちテストから一週間後、期末テスト本番が始まり生徒達は五日間目の前のテストと戦う事になる。だが、一つ差し引くとすれば最後の一日の期末テストの内容が各々の学科問題の為普通科の生徒達は受けずに済むので期末テストは四日間で終わる。故に、一般クラスの普通科である星野 桃からしたら嬉しい限りであった。

「はぁー…今日からテストかぁ…気が重いなぁ…」

「何言ってるの?今回も、苺は楽勝に上位でしょ?」

「えー、そんなに勉強出来てないから上位なんて無理だってー!」

攻略対象者三人に教えて貰っておきながら勉強出来てないって有り得ないと思うが‥?

教室内で話し合うヒロインである星七 苺とその親友であり攻略対象者の桜桃 凌牙の双子の姉である桜桃 小豆の会話をノートを見る振りをしつつ何気なく耳を傾けていると、最悪だと言わんばかりに不快そうな声が入ってきた。

ガラッ…

「耳障りだな」

っ…!? 

聞こえたのと同時に体が条件反射でビクついた。

「何が耳障りよ!りょーの方が耳障り極まりないわよ!」

小豆にりょーと呼ばれる人物は小豆の双子の弟であり攻略対象者の桜桃 凌牙であった。

「あ?お前らの方が耳に響いて仕方ない」

「この…っ!可愛くない弟!」

「もうっ!喧嘩は駄目だって!テスト前に喧嘩するなんて、良い結果にならなかったらどうするの?」

「”それはない(わ)”」

桜桃姉弟が同時に真顔で言うとヒロインの嬉しそうな声が漏れた。

「ふふ、二人同時にハモるなんてやっぱり仲良いんだね」

「”それは絶対ない(わ)”」

「ほら?ふふふっ」

苺の茶化しに桜桃姉弟は嫌そうな顔で互いに顔を見合わせると直ぐに顔を背けた。

「それより、今回のテストで赤点なんて取ったら目も当てられないだろうな」

うっ…‥

「はぁ?誰にそんな事を言ってるのよ?」

いえ、それおそらく私にです

小豆の指摘に内心で挙手しながらも凌牙の圧をかけるような言葉にノートをめくる手が震える。

「さぁ?誰にだろうな?」

っ…‥

嘲笑うように冷めた声で言う凌牙に昨晩、散々聞いた鬼の様な声を思い出し冷や汗が背中を伝う。

耳が覚えすぎてトラウマになりそう…‥

それは、一つの気の抜けたミスがきっかけだった……

期末テスト前日、桃はココナとの勉強途中でココナが疲れて眠った隙に抜け出し自室がある一般クラスの女子寮へと帰宅した。その頃には、既に日が落ち十九時ぐらいだったと朧気おぼろげに覚えていた。何故、記憶が朧気だったかというとココナの一件によりかなりの睡眠不足と疲労が重なり帰宅して直ぐに机の上に気絶するように眠ってしまったからだった。

‥…ブー‥…ブー‥…

「…ん……」

…‥ブー‥…ブー…‥ブー‥

「でん…わ…?」

耳元で鳴り響く携帯の着信音に上手く開かない瞼を薄らと開けながら携帯に手を伸ばし取ると通話ボタンを押し耳に当てる。

「だ…れ…‥?」

『何寝惚けてるんだ?”終わったら直ぐに連絡よこせ”と言ったよな?』

桜桃 凌牙の鬼の様な冷たい声が耳に響き寝起きで動かなかった体が反射的に飛び起きた。

「忘れてた…っ!?」

「あ?」

「あ、えっと…色々あって時間がかかったというか寝てしまったというか…」

「そうだな、おかげで今から馬鹿猿の部屋に行くのは不可能になった」

「じゃあ、今からでも一人で勉強するしか…」

壁に飾っている小型の時計を見ると既に二十三時に回っていた。

これくらいなら少しは出来るかも…?

「カメラ繋げ。馬鹿猿一人でやってもたかが知れてる」

「そこまでしなくてもだい‥」

「早くしろ。俺の時間を水の泡にする気か?」

「っ…分かった」

半ば強制的に急かす凌牙に渋々カメラを繋ぎ机の上に立てると、そこに映ったのは黒の半袖シャツに首にタオルを巻きくせっ毛のないストレートな赤髪の凌牙の姿だった。

「誰…?」

「あ?」

「別人過ぎて違和感が…」

「シャワーを浴びたばかりだからな」
 
何故、シャワー?

「汗をかくような事でもしたの?」

何気なく問いかけた質問に凌牙は顔を背け少しの間が空いた後、ぽつりと零した。

「…‥鍛えてた」

「あ、なるほど…」

テスト勉強をそっちのけでサッカーの為に鍛えるなんて好きの振り幅の差を感じる

「それより、明日出る教科のテスト範囲を重点的に問題を出すから解いていけ」

「は、はい」

それからというもの、凌牙の出す問題をひたすらに解き続け時間が経ち眠りそうになると鬼の様な声で起こされまた解くという事を繰り返すうちに記憶は途中で途切れた。

起きたらカメラ切れてたし、既に朝になってたからバタバタと支度をしたら寝癖が直らなくて諦めてそのまま来たという始末だ

天辺に一箇所だけ跳ねる寝癖に内心溜息を吐く。

はぁ…お陰様でテスト範囲は頭に全部入ったけど、飴とむちの飴は一切無かったような気がするんだが…?

小豆といがみ合う凌牙の顔を盗み見ると、小豆の言動に表情一つ崩さない凌牙の姿があった。

うん、ないな。あるわけない

怪訝な眼差しで凌牙を見ていると、不意に栗色がかった茶色の瞳と目が合い反射的に顔を伏せた。

っ…駄目だ、勝てる気がしない

凌牙に対して劣勢すぎる状況に脱帽していると、それを切り崩すように勢いよくドアが開けられた。

ガラッ…!

「はぁー、間に合って良かった…っ!」

息を切らしながら現れた委員長こと小堺 瓜の登場にその場に居た生徒達の視線が集中する。

「小堺君が時間ギリギリなんて珍しいね」

「えっと、色々あって‥…」

苺の問いかけに言いにくそうに言葉をつぐんだ小堺にその場に居た面々は首を傾げた。

あの様子だとまた会長に何か扱き使われてたんだろうな

会長こと鳳梨 グアバの顔を思い出し内心苦笑いを浮かべた。

「そ、それより早く席に着かないともう先生来ちゃうよ!?」

「えっ!?そうなの!?」

小堺の言葉に慌てて散らばっていた生徒達が席に着くと、タイミング良く教室のドアから棗 杏子が現れ緊張に包まれた。

ガラッ…‥

「あれー?何か皆いつもと違う?そんなに緊張しなくても大丈夫だよ~!肩の力抜いて頑張ろ~!」

「先生を見てたら緊張感無くなるって」

「せっかく集中高めてたのに~!」

私は棗 杏子を見ていたら逆に不安しか湧かない

一人教卓の前で盛り上がる棗 杏子の姿に顔が引き攣った。

「よ~し!じゃあ、筆記用具だけを残して鞄や教科書等を廊下に置いたら席に着いて大人しく待っててね!皆が席に着いたら始めるよん!」

「”は~い!”」

棗 杏子の言葉に従い生徒達は各々鞄や教科書類等を廊下へと置き始めた。

色々考えている場合じゃない。今はテストに集中しないと…っ!目指せ赤点回避!目指せ写真削除!

こうして、期末テストという名の戦いが始まったのだった。

 *

桃の戦いの火蓋が切られた同時刻、一年の特進クラスの教室にてもう一つの戦いの火蓋が切って落とされていた。

何でこいつがここに居るの?…最悪 

生徒会書記であり音楽科の国光 林檎は背後に居る人物の存在に苦虫を噛み潰したような面持ちでいた。

背後に居る人物の存在に気づいたのはテスト用紙を後ろへ回している時の事だった。

…パサッ…‥

「はい…‥っ!?」

何でこいつがここに?

後ろを振り向くと翡翠色のボブヘアに銀色の瞳を持つ小柄な女子生徒の姿がありテスト用紙を持つ手が宙で止まる。

「あら?ようやくお気づきになりましたの?ふふっ、白波 ココナと申します。以後お見知りおきを…」

そう言うと宙で止まっていたテスト用紙を奪い後ろへと回していった。

最悪だ。同じクラスだったのかよ。しかも、後ろの席だし…

前へと向き直り背後で感じるココナの存在に嫌悪感を抱いていると、ふとか細い声が耳に届いた。

「…‥昨日はお姉様と一緒に勉強をしましたわ。私のお部屋で」

イラッ…‥

何こいつ?喧嘩でも売ってるの?

まるで自慢するかのような言葉に一瞬、ペンを持つ手が止まった。

「…名前は書き終わったみたいだな?では、テストを開始するがカンニング等がないように静かにテストに集中する事。いいな?」

細身で丸眼鏡を掛けた音楽科担当の男性教師の言葉に生徒達は静かに頷くと、時計の針が開始時間ピッタリに止まった。

「開始」

先生の言葉と共に静かにテスト用紙を捲り目の前の問題に集中する。

さっきの言葉が無駄に気に触るけど、先にテストを終わらせよっと…

林檎は背後のココナの存在や言動を頭の外に追いやると終始目の前の問題に集中した。

程なくして、終了時間と共に解答用紙は教師に回収され問題用紙は後ろから前へと回していく際に背後に居たココナと目が合った。

「僕も昨日はあいつから手を握られてびっくりしたよ。それはもう嬉しそうにしてたから」

「っ…‥」

余裕の笑みを浮かべていた顔が崩れ歪むココナの表情を無視し、今度は林檎からテスト用紙を奪うと前へ向き直り回した。

ふんっ、いい気味

事実を織りまぜ盛った言動はココナに対して仕返しをするには十分すぎるものだった。



















    
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