1 / 1
初すぎた恋の結末
しおりを挟む
『なっ、ま、待って…、どうしっ、ダメ、だよ…』
雨に濡れたままの身体。
熱っぽい、息遣いで、それでも最後の抵抗を示そうとする、私の唇は塞がれ熱い舌にこれでもかと蹂躙される。
(なんで……)
『ん、ちょ、あっ、は…、ん』
漸く解放された互いの唇からは銀の糸が伝い、互いに見つめ合う。
冷えてるはずの身体とは裏腹に、熱を帯びた男の目に見つめられる。
それはまるで怒ったような顔だった。
友達から向けられる瞳ではない事は本能的に悟った。
『桐谷……?』
『……ここまできて、罪悪感?』
そう言われた私は顔を歪めた。
そうだ。
ここは中学時代からの友人、桐谷の家。
久しぶりに会おうって話になって、酔い覚ましに公園行って、突然の雨に降られて言われるままに駆け込んだ。
『お前に、…そんな顔させてる奴、庇う訳?』
そう突然言われて、自分の状況の情けなさに唇をキュッと結んだ。
そんな私に苛立ったように顔を歪めた男は再び私を抱き寄せた。
肩に乗せられた頭の重み。
柑橘系の整髪料の臭いとサラリとした髪の肌触りが鼻を擽る。
友達だと、ずっとそう思っていた相手。
『……なんでだよ、なんで、俺にしなかった?』
どこか痛そうな薄暗い声で、そう問われた瞬間、怪訝に目を見開いた。
『……え?』
(なんで、俺にしなかった?)
そう言っただろうか?
今、その言葉に酷く引っかりを覚えた。
(なんで……)
自分に問いかける。
次の瞬間、ハッとして見上げた先には、苦く私を見つめる顔がある。
六年、いやもう七年前になろうとしているのか?
『…思い出したか?』
そう問われた瞬間、私は顔を引攣らせた。
きっとあの時の事を言っている。
そう悟った時には、目の前の男に組み敷かれていた。
逃がさないとばかりに指を絡めて握りしめられた手は、ベッドのシーツに押し付けられてる。
真剣な瞳で見下ろされるのに不思議と怖さを感じない。
だが、それを上回る戸惑いに固まっていた。
あの頃の会話を思い出す。
大学受験が終わったあの頃、偶然駅で桐谷にあった。
私達は中学の同級生で、高校は別だった。
⭐︎
【久しぶり!元気だった?】
【…あぁ、真帆も元気だった?…大学、どこ行くか決まったのかよ?】
そう問われた私は、第二希望の大学に受かった事を報告した。
【京都…?待てよ、東京じゃなくて?】
そう絶句した桐谷に私は飄々と答えた。
【うん、第一希望は残念ながら逃しちゃって、模試ではいいところまではいったんだけどな、ほら、私って昔から本番弱いんだよね?】
【………そうか】
【桐谷は?】
【……あぁ、○東大】
【えっっ!?桐谷、○東大受かったんだ!すごいじゃん!私も昔は行きたいと思ってた時期もあったんだよね、まぁ、流石に成績及ばず、早々に進路変更余儀なくされたから受験もできなかったんだけどね。はははっ】
【え……】
【いいな、桐谷が○大ボーイか、ほんと頑張ったね!偉い、偉いよ!しかもさ、その学部って、将来の日本を背負うエリート達の集まりだよね?いいな、あっ、そうだ!もしさ、私が将来嫁き遅ちゃって、その時いい男いたら紹介しておくれ!心の友よー!】
久しぶりに会った友達の快挙に盛大に盛り上がる私に、桐谷は言った。
【……な、なぁ、真帆】
【ん?】
【じゃあさ……俺たち、付き合おうか?】
【……は?】
【……ダメ?】
【なっ、何言ってるの??もーう、冗談ばっか、こんな時にからかわないでよ、ははっ、それともどさくさに紛れて手近なところで童貞卒業狙ってるとか?そんな痛そうな実験道具なんて私やーよ!きゃーん、桐谷くんてばサイテー!】
【なっ、どっ!?、ばっ、馬鹿、ちげーよ】
【あはっ、冗談だってば、怒らない!でも、おあいにく様、初めから遠距離なんて、私やーよ!お断りします!】
【………】
【桐谷?】
【そうか、そうだよな、冗談だよ!悪い】
【もう、タチ悪いんだから…】
【だから、悪いって!】
⭐︎
そんなやり取りを思い出す。
『だって……嘘、じゃ?』
目の前の男は目を細めた。
『嘘な訳ないだろ?…嘘であんな事いうかよ、お前って本当無神経…ってかサイテー』
『いや、だっ、だってさ…、何の重みも無かったよ?あの時のあれを本気なんて思うわけないじゃん』
『いや、…あれはだって、照れもあったから、それくらい察するだろ?長い付き合いなんだから?』
『はっ?無理だよ?エスパーじゃあるまいし』
『いや、そうかもだけど、こっちだって必死だったんだよ、別れちまったら、…もう会えないかもしれないし、そう思うと自然とあんな態度になって…』
気まずそうに逆ギレすると、困ったように瞳を逸らされた。
『桐谷…』
そう言えば、昔にも何か言いかけた拍子に見せた表情だ。困ったような苛立ったような顔で黙り込む桐谷。
私は確かにこの表情を知っている。
今は昔より随分大人っぽくなっているけど。
(そんな、まさか…)
『……大事にしたかったんだよ、お前との関係だけは。守れるもんが友達ポジションだけなんて、ほんと、ダサ過ぎたよな俺…』
その言葉に思いあたる過去は一つしか無い。
『でも、こんなに後悔する事になるなんて分かってたら、絶対言ってたのに…』
薄暗い顔で見つめられた。
『今だから言うけど、あの後、本当は諦められなくて、同じ年のGWにもう一回ちゃんと告ろうって思って、中学の奴らとの集まりに参加したんだ』
『え…?』
『でもさ、お前来なかった』
『あ……』
心当たりがある私は顔を痙攣らせた。
『そこで同級生達から聞いた。彼氏できて旅行中だって…』
『………』
(一度目の彼氏だ。その後すぐに相手の二股が発覚してあっさり別れたんだ。学生時代はそれに凝りて恋愛から距離をおいた。私の黒歴史)
黒い瞳にジッと見つめられる。
「きりっ…」
名を口にできないまま、再び唇を重ねられた。
唇を割り開かれ再び激しいキスを求められる。
同時に触れられる頬や髪への触り方が愛しげで、なんだか無性に甘やかされたい衝動に駆られる。
ずっと友達と思ってきた相手なのに。
流されそうになっていたその時、空気を戻すように、私のスマホがここに来てから二度目の着信を告げた。
「あ……」
「っ……」
桐谷の視線の先には、鳴り響く私のスマホ。
それを見て険しくなる表情。
「あ、…桐谷?」
スマホに見慣れた名前が表示されている。
サク
私の人生二番目の彼氏、ほんの三日前まで確かに信じてた人。
朔夜からの電話はここに来てから二度目だった。
一度目の着信は桐谷がバスルームのお湯を張っていた時で、なかなか鳴り止まない着信を気にした私はそれに出た。
「今、友達といるから、話があるならまた今度にして」
そう言った私に普段は淡白この上ない相手はいつになく食い下がった。
「待って、真帆、せめて俺の気持ちだけはちゃんと伝えさせて…」
そのとき洗面所の方から声がした。
「暖房入れろよ、寒いだろ?」
桐谷が戻る気配を感じた私は話を切り上げた。
「ごめん、さく、今はやっぱりまだちゃんと考えられないから、あっ、ゴメン切るから…」
「えっ、真帆、待って…」
桐谷が部屋に戻ったそのタイミングで話を切り上げていたのだ。
「電話、誰……?」
そう言われた私は一瞬固まるも観念した。
愚痴はもうとっくに居酒屋でこれでもかと吐き出した後だったからだ。
「……ん、さっき話した人」
その瞬間、私は桐谷の纏う空気が変わった事に愚かにも気づかなかった。
「……ふーん」
桐谷がこれまでどんな気持ちで穏やかな友達に徹してくれていたかをこの時の私は知る由は無かった。
『真帆…』
『ん…ん?』
それから突然、なんの前触れもなく激しいキスをされた。
それが冒頭のあの部分だ。
そして、二度目の電話に固まる私に桐谷は言った。
『………でたら?』
『へっ…?』
『電話、また、さっきの奴だろ。お前の元カレくん』
『え……』
この状況での二度目の電話にそう言われた私は固まった。
『いや、今はいいから…』
そう…
彼、いや、正確には別れたばかりの元彼からの電話。
もはや気なんて遣う必要もないのかもしれない。
無視しようと思うのに鳴り止まない電話とこの状況の桐谷の威圧感に戸惑う。
なにがどうしてこうなっているのか。
始まりはきっと三日前、仕事の帰りに、携帯の繋がらない彼氏の家に行った事だった。
だがそこで偶然にも浮気現場に遭遇してしまった私は、追いかけてきた彼に謝られたものの、パニック状態のまま手を振り切り別れを告げた。
『私だけじゃ、満足出来ないんでしょ?そうだよね、私、色気なんてないし、大した顔でもないし、付き合ってだいぶ経つし、サク滅茶苦茶モテるし!でもね、だったら、せめてちゃんと言いなよ!そしたら、ちゃんと別れてあげたのに。私、こんな風に朔夜に裏切られたくなんてなかった』
『真帆、まって、俺そんな風に思ってないから…、聞いて真帆…』
気の合う友達カップルのような私達。
きっと周りからは付き合っている事も気づかれてはいない。それくらい地味で華やかなサクの隣では花にすら見えない女。
私なりに気を遣って生きてきた。
邪魔な存在になりたくなくて、足を引っ張りたくなかった。
友達の延長のような彼氏。
人には言えない関係。
私は昔から男勝りで、男の子達からは女としてより友達として扱われた。
私にも彼にも異性を含む友達も沢山いた。
それを許せてワイワイと楽しくやってこれたのは、今更ながら信頼があったからで、それが無くなると今までの生活には戻れる気がしない。
もう、今までのように笑える気がしなかった。
『……でろよ、真帆』
一向に鳴り止まない電話を桐谷から押しつけられる。
渋々それに応じた私は、通話ボタンを押した。
『…もしもし』
『真帆…、聞いて、俺、本当にあの夜の事はどうかしてて、よく覚えてもなくて、最低だった、でも、俺が好きなのは、真帆だけだから…』
『……』
『…真帆が好きなんだ。お前だけなんだよ』
『朔夜…』
『だからさ…別れるなんて、簡単に言うなよ?』
『俺を信じて…』
必死な声が聞こえる。
昔なら、きっと信じられた。
(じゃあ、そんなに簡単に裏切らないでよ…)
あんな光景を目の当たりにしたのだ。
『朔夜、ゴメン、わたし、やっぱりもう…』
(無理だ…)
その瞬間、鎖骨に強い痺れを感じた。
『っ……、なっ?』
『真帆?どうした?』
『な…、なんでもない』
『はっ、…』
耳朶に舌を這わされて、胸の双丘を大きな手で包み込まれ、息を呑み込んだ。
その手は、器用に私の胸の先端を弄ぶ。
『ちょ、ダメ、や、…ぁん』
『真帆、…お前、何してる??誰といる?まさか、男か…?』
『…ちっ、違っ…、これは』
そう言った瞬間、低くて甘い声で囁かれた。
『真帆、…好きだよ』
その瞬間振り返った。
『……そんな奴より、ずっと前からお前だけ好きだ』
本当に愛しそうに、優しい表情で桐谷は私に告げた。
(ずるい…)
『そんな事、今…』
『今、だから、ちゃんと今言わないと後悔するから…』
『そんな、だって…』
『忘れちまえよ、お前を苦しめる男なんか…』
『ちょ、何言って…』
『や、…あぁ、ちょっと、桐谷…』
次の瞬間、プチって音の後に胸元に外気を感じた。
ゾクリと体を震わせると同時に人肌を感じて飛び跳ねる。
(ヒャ…?)
『え…、ちょ…』
剥き出しにされた胸に驚いた私は、更に後ろから抱きしめられて乳首に舌を這わされ驚きの声を上げる。
チュ、チュパ…
『まっ、何して…、やだ…』
『真帆、何されてる?どこだ?誰といるんだ??クソっ…』
離れてしまったスマホからは遠くでそんな声が聞こえる。
『真帆の胸、エッロ…、ホクロ可愛い…』
『ちょ、桐谷…』
「何やってんだよ、やめろ!ふざけんなっ、桐谷って誰だよ?おいっ…」
もはや、絶叫してる遠い電話の声に、やれやれと小さく息を吐いた桐谷がスマホを手にした。
『はじめまして、桐谷です。…あんたがいらないみたいだから、これ幸いと思って迎えにきたんだよ、俺のお姫様を…』
「は、ふざけんなっ、誰がいらないなんて言った、このヤロ、どこだ、言えよ!どこにいるんだー、真帆!」
『あんた、煩いよ、でもまぁ、別れてくれてありがとう』
『こらっ、ちょっと待て、誰が別れたって?話はまだ続いてるんだろ…』
『…いや、終わりだな、こう言うのは信頼関係だろ?真帆は許してお前の都合のいい女になるような奴じゃない。じゃーな』
『まて、切るな、真帆!?』
プチ
ツーツーツー
カシャ
(電源落とした…)
『よし、これでケジメをつけたぞ!』
『何のケジメだよ…』
『いや、だから今度こそ、はじめようと思って、俺の初恋の続き』
『何言って…』
『これくらい強引じゃないと手に入らないだろ?真帆は』
『桐谷…』
『本当に欲しいものは諦めないって決めたんだ。人間は過去から学ぶって言うだろ?俺も色々学んだ…』
そう言い放った強引で不埒な唇は再び私を蹂躙する。
『好きだよ、真帆…』
そう言って頬を撫でられる。
そうだ…
この一言があれば、この思いがキチンと伝わっていたならば、あの頃の私達の未来は違うものになったのかも知れない。
『ふふっ、言わない方も言わない方だけど、聞かない方も大概だよね』
『…?』
『……好きだって』
『……えっ?俺言って無かった?』
『うん、聞いて無かった』
『マジか、…あの日散々脳内シュミレーションしてたから、言ったつもりになってたんだな』
『え、…偶然会ったんじゃないの?』
『……んな訳ないだろ?待ってたんだよ三時間以上も』
『マジか…』
『だから、マジだったんだって…』
『なんか、…ゴメン』
『そう思うならさ、…責任とってよ?』
『なんのだよ?』
『俺の童貞卒業、真帆で出来なかった責任』
『知るかよ!この馬鹿たれが!』
『ははっ、だからさ、真帆、責任とって、俺を最後の男にして?』
『………』
『真帆?』
『か、考えなくもないけど』
『ないけど…?』
『桐谷は、それでいいの?』
『え……?』
『私、不平等条約は結ばない主義だからね』
『…それってさ、もしかして浮気するなって言ってくれてるの?』
『ばっ、何で嬉しそうなんだよ!?』
『めちゃくちゃ嬉しいに決まってるじゃん』
『そ、……そっか』
『と言う事で、真帆さん、無事条約締結という事で、先にすすんでも宜しいでしょうか?俺、もう限界なんですが…』
『し、仕方ないな…』
そう言った私は、自らの意思で桐谷に口付けた。
一瞬、目を見開いた桐谷は凄く嬉しそうな顔をして私を抱きしめた。
そこから、私達の、いや桐谷の六年分の思いが詰まった激しい夜の営みは空が白むまで繰り広げられた。
きっとこの日結んだ二人だけの条約は私達にとって婚姻届より重要な意味を持つ事になるだろう。
⭐︎
次の日の昼過ぎに、気持ち悪いくらい上機嫌の桐谷が作ってくれたパスタを口にしていると、何やらワイドショーが盛り上がっていた。
【昨夜、俳優の橘朔夜くんが、深夜に知人女性の部屋を訪れて騒ぎを起こしたと報じられていますね】
その一言を聞いた私はゴホンゴホンと盛大に蒸せた。
【朔夜と言えば、今年の抱かれたい男二位にまで急上昇した若手俳優ですよね?】
【えぇ、そうなんです!二位と言っても、犯したい男まで含めたならNO1だろうなんて冗談言われてた、あの朔夜くんに一体何があったんでしょうねぇ?】
【最近、新人女優の栗島雫さんとの密会も報じられているようですが、今回の行動は栗島さんとは関係ないようで】
【いやー、実に妙ですなあ】
【その部屋の女性は留守だったようですね】
そう言って入った指輪のCM
そこに登場する、人好きのする笑顔
『あっ、この俳優かな、さっき言ってたのって…、えっと橘朔夜?ん、真帆顔色悪いぞお前、昨日無理させすぎたか?』
『ちがっ、大丈夫…』
冷や汗が溢れ出す。
【お前だけなんだ。信じてよ】
指輪と共に映し出される真剣な眼差し。
『……ん?この声、最近聞いたような、…朔夜』
その瞬間、肩がビクリと強張った。
『……まさか、こいつか?サクって』
観念した私はコクリと頷いた。
CMが終わり、ニュースに戻ると引き続き語られる、ファンからの朔夜の魅力。
【そりゃ、抱かれたいですよ!お相手誰でしょうね?羨ましい】
【いやー、ショック私のサク!】
【一夜でもいいから、抱かれたいですね♡】
【お金積んだら抱いて貰えるなら貯金全部ハタきます私】
そんな女性たちからの賛辞に桐谷の瞳は座っていく。
『ゴメン、皆にも黙ってたから…』
『………』
『あの、…何か怒ってる?』
『お前の部屋の荷物は俺が引き上げる』
『うん、ありがとう、ってかあれ、…やっぱり私の部屋なのかな?』
『……、でもその前に』
『桐谷??』
『もっかい、抱かせろ!』
『えっ、ちょっと待って桐谷、私もう…』
『なぁ、真帆、俺に抱かれたいって言って』
『なっ、何馬鹿言ってるの?昨日散々人の事抱いといて』
『ダメ、俺を欲しがる真帆が見たいの』
『なにそれ、嫉妬?』
『悪いかよ…』
『朔夜には、もう一度ちゃんと私から話すから、もう会わないって、私には桐谷がいるからって』
『……そうか』
そう言った桐谷はボソリと呟いた。
『でも、会って話すなよ』って…。
世間の朔夜への賛辞は桐谷の嫉妬への導線になりそうだ。
了
雨に濡れたままの身体。
熱っぽい、息遣いで、それでも最後の抵抗を示そうとする、私の唇は塞がれ熱い舌にこれでもかと蹂躙される。
(なんで……)
『ん、ちょ、あっ、は…、ん』
漸く解放された互いの唇からは銀の糸が伝い、互いに見つめ合う。
冷えてるはずの身体とは裏腹に、熱を帯びた男の目に見つめられる。
それはまるで怒ったような顔だった。
友達から向けられる瞳ではない事は本能的に悟った。
『桐谷……?』
『……ここまできて、罪悪感?』
そう言われた私は顔を歪めた。
そうだ。
ここは中学時代からの友人、桐谷の家。
久しぶりに会おうって話になって、酔い覚ましに公園行って、突然の雨に降られて言われるままに駆け込んだ。
『お前に、…そんな顔させてる奴、庇う訳?』
そう突然言われて、自分の状況の情けなさに唇をキュッと結んだ。
そんな私に苛立ったように顔を歪めた男は再び私を抱き寄せた。
肩に乗せられた頭の重み。
柑橘系の整髪料の臭いとサラリとした髪の肌触りが鼻を擽る。
友達だと、ずっとそう思っていた相手。
『……なんでだよ、なんで、俺にしなかった?』
どこか痛そうな薄暗い声で、そう問われた瞬間、怪訝に目を見開いた。
『……え?』
(なんで、俺にしなかった?)
そう言っただろうか?
今、その言葉に酷く引っかりを覚えた。
(なんで……)
自分に問いかける。
次の瞬間、ハッとして見上げた先には、苦く私を見つめる顔がある。
六年、いやもう七年前になろうとしているのか?
『…思い出したか?』
そう問われた瞬間、私は顔を引攣らせた。
きっとあの時の事を言っている。
そう悟った時には、目の前の男に組み敷かれていた。
逃がさないとばかりに指を絡めて握りしめられた手は、ベッドのシーツに押し付けられてる。
真剣な瞳で見下ろされるのに不思議と怖さを感じない。
だが、それを上回る戸惑いに固まっていた。
あの頃の会話を思い出す。
大学受験が終わったあの頃、偶然駅で桐谷にあった。
私達は中学の同級生で、高校は別だった。
⭐︎
【久しぶり!元気だった?】
【…あぁ、真帆も元気だった?…大学、どこ行くか決まったのかよ?】
そう問われた私は、第二希望の大学に受かった事を報告した。
【京都…?待てよ、東京じゃなくて?】
そう絶句した桐谷に私は飄々と答えた。
【うん、第一希望は残念ながら逃しちゃって、模試ではいいところまではいったんだけどな、ほら、私って昔から本番弱いんだよね?】
【………そうか】
【桐谷は?】
【……あぁ、○東大】
【えっっ!?桐谷、○東大受かったんだ!すごいじゃん!私も昔は行きたいと思ってた時期もあったんだよね、まぁ、流石に成績及ばず、早々に進路変更余儀なくされたから受験もできなかったんだけどね。はははっ】
【え……】
【いいな、桐谷が○大ボーイか、ほんと頑張ったね!偉い、偉いよ!しかもさ、その学部って、将来の日本を背負うエリート達の集まりだよね?いいな、あっ、そうだ!もしさ、私が将来嫁き遅ちゃって、その時いい男いたら紹介しておくれ!心の友よー!】
久しぶりに会った友達の快挙に盛大に盛り上がる私に、桐谷は言った。
【……な、なぁ、真帆】
【ん?】
【じゃあさ……俺たち、付き合おうか?】
【……は?】
【……ダメ?】
【なっ、何言ってるの??もーう、冗談ばっか、こんな時にからかわないでよ、ははっ、それともどさくさに紛れて手近なところで童貞卒業狙ってるとか?そんな痛そうな実験道具なんて私やーよ!きゃーん、桐谷くんてばサイテー!】
【なっ、どっ!?、ばっ、馬鹿、ちげーよ】
【あはっ、冗談だってば、怒らない!でも、おあいにく様、初めから遠距離なんて、私やーよ!お断りします!】
【………】
【桐谷?】
【そうか、そうだよな、冗談だよ!悪い】
【もう、タチ悪いんだから…】
【だから、悪いって!】
⭐︎
そんなやり取りを思い出す。
『だって……嘘、じゃ?』
目の前の男は目を細めた。
『嘘な訳ないだろ?…嘘であんな事いうかよ、お前って本当無神経…ってかサイテー』
『いや、だっ、だってさ…、何の重みも無かったよ?あの時のあれを本気なんて思うわけないじゃん』
『いや、…あれはだって、照れもあったから、それくらい察するだろ?長い付き合いなんだから?』
『はっ?無理だよ?エスパーじゃあるまいし』
『いや、そうかもだけど、こっちだって必死だったんだよ、別れちまったら、…もう会えないかもしれないし、そう思うと自然とあんな態度になって…』
気まずそうに逆ギレすると、困ったように瞳を逸らされた。
『桐谷…』
そう言えば、昔にも何か言いかけた拍子に見せた表情だ。困ったような苛立ったような顔で黙り込む桐谷。
私は確かにこの表情を知っている。
今は昔より随分大人っぽくなっているけど。
(そんな、まさか…)
『……大事にしたかったんだよ、お前との関係だけは。守れるもんが友達ポジションだけなんて、ほんと、ダサ過ぎたよな俺…』
その言葉に思いあたる過去は一つしか無い。
『でも、こんなに後悔する事になるなんて分かってたら、絶対言ってたのに…』
薄暗い顔で見つめられた。
『今だから言うけど、あの後、本当は諦められなくて、同じ年のGWにもう一回ちゃんと告ろうって思って、中学の奴らとの集まりに参加したんだ』
『え…?』
『でもさ、お前来なかった』
『あ……』
心当たりがある私は顔を痙攣らせた。
『そこで同級生達から聞いた。彼氏できて旅行中だって…』
『………』
(一度目の彼氏だ。その後すぐに相手の二股が発覚してあっさり別れたんだ。学生時代はそれに凝りて恋愛から距離をおいた。私の黒歴史)
黒い瞳にジッと見つめられる。
「きりっ…」
名を口にできないまま、再び唇を重ねられた。
唇を割り開かれ再び激しいキスを求められる。
同時に触れられる頬や髪への触り方が愛しげで、なんだか無性に甘やかされたい衝動に駆られる。
ずっと友達と思ってきた相手なのに。
流されそうになっていたその時、空気を戻すように、私のスマホがここに来てから二度目の着信を告げた。
「あ……」
「っ……」
桐谷の視線の先には、鳴り響く私のスマホ。
それを見て険しくなる表情。
「あ、…桐谷?」
スマホに見慣れた名前が表示されている。
サク
私の人生二番目の彼氏、ほんの三日前まで確かに信じてた人。
朔夜からの電話はここに来てから二度目だった。
一度目の着信は桐谷がバスルームのお湯を張っていた時で、なかなか鳴り止まない着信を気にした私はそれに出た。
「今、友達といるから、話があるならまた今度にして」
そう言った私に普段は淡白この上ない相手はいつになく食い下がった。
「待って、真帆、せめて俺の気持ちだけはちゃんと伝えさせて…」
そのとき洗面所の方から声がした。
「暖房入れろよ、寒いだろ?」
桐谷が戻る気配を感じた私は話を切り上げた。
「ごめん、さく、今はやっぱりまだちゃんと考えられないから、あっ、ゴメン切るから…」
「えっ、真帆、待って…」
桐谷が部屋に戻ったそのタイミングで話を切り上げていたのだ。
「電話、誰……?」
そう言われた私は一瞬固まるも観念した。
愚痴はもうとっくに居酒屋でこれでもかと吐き出した後だったからだ。
「……ん、さっき話した人」
その瞬間、私は桐谷の纏う空気が変わった事に愚かにも気づかなかった。
「……ふーん」
桐谷がこれまでどんな気持ちで穏やかな友達に徹してくれていたかをこの時の私は知る由は無かった。
『真帆…』
『ん…ん?』
それから突然、なんの前触れもなく激しいキスをされた。
それが冒頭のあの部分だ。
そして、二度目の電話に固まる私に桐谷は言った。
『………でたら?』
『へっ…?』
『電話、また、さっきの奴だろ。お前の元カレくん』
『え……』
この状況での二度目の電話にそう言われた私は固まった。
『いや、今はいいから…』
そう…
彼、いや、正確には別れたばかりの元彼からの電話。
もはや気なんて遣う必要もないのかもしれない。
無視しようと思うのに鳴り止まない電話とこの状況の桐谷の威圧感に戸惑う。
なにがどうしてこうなっているのか。
始まりはきっと三日前、仕事の帰りに、携帯の繋がらない彼氏の家に行った事だった。
だがそこで偶然にも浮気現場に遭遇してしまった私は、追いかけてきた彼に謝られたものの、パニック状態のまま手を振り切り別れを告げた。
『私だけじゃ、満足出来ないんでしょ?そうだよね、私、色気なんてないし、大した顔でもないし、付き合ってだいぶ経つし、サク滅茶苦茶モテるし!でもね、だったら、せめてちゃんと言いなよ!そしたら、ちゃんと別れてあげたのに。私、こんな風に朔夜に裏切られたくなんてなかった』
『真帆、まって、俺そんな風に思ってないから…、聞いて真帆…』
気の合う友達カップルのような私達。
きっと周りからは付き合っている事も気づかれてはいない。それくらい地味で華やかなサクの隣では花にすら見えない女。
私なりに気を遣って生きてきた。
邪魔な存在になりたくなくて、足を引っ張りたくなかった。
友達の延長のような彼氏。
人には言えない関係。
私は昔から男勝りで、男の子達からは女としてより友達として扱われた。
私にも彼にも異性を含む友達も沢山いた。
それを許せてワイワイと楽しくやってこれたのは、今更ながら信頼があったからで、それが無くなると今までの生活には戻れる気がしない。
もう、今までのように笑える気がしなかった。
『……でろよ、真帆』
一向に鳴り止まない電話を桐谷から押しつけられる。
渋々それに応じた私は、通話ボタンを押した。
『…もしもし』
『真帆…、聞いて、俺、本当にあの夜の事はどうかしてて、よく覚えてもなくて、最低だった、でも、俺が好きなのは、真帆だけだから…』
『……』
『…真帆が好きなんだ。お前だけなんだよ』
『朔夜…』
『だからさ…別れるなんて、簡単に言うなよ?』
『俺を信じて…』
必死な声が聞こえる。
昔なら、きっと信じられた。
(じゃあ、そんなに簡単に裏切らないでよ…)
あんな光景を目の当たりにしたのだ。
『朔夜、ゴメン、わたし、やっぱりもう…』
(無理だ…)
その瞬間、鎖骨に強い痺れを感じた。
『っ……、なっ?』
『真帆?どうした?』
『な…、なんでもない』
『はっ、…』
耳朶に舌を這わされて、胸の双丘を大きな手で包み込まれ、息を呑み込んだ。
その手は、器用に私の胸の先端を弄ぶ。
『ちょ、ダメ、や、…ぁん』
『真帆、…お前、何してる??誰といる?まさか、男か…?』
『…ちっ、違っ…、これは』
そう言った瞬間、低くて甘い声で囁かれた。
『真帆、…好きだよ』
その瞬間振り返った。
『……そんな奴より、ずっと前からお前だけ好きだ』
本当に愛しそうに、優しい表情で桐谷は私に告げた。
(ずるい…)
『そんな事、今…』
『今、だから、ちゃんと今言わないと後悔するから…』
『そんな、だって…』
『忘れちまえよ、お前を苦しめる男なんか…』
『ちょ、何言って…』
『や、…あぁ、ちょっと、桐谷…』
次の瞬間、プチって音の後に胸元に外気を感じた。
ゾクリと体を震わせると同時に人肌を感じて飛び跳ねる。
(ヒャ…?)
『え…、ちょ…』
剥き出しにされた胸に驚いた私は、更に後ろから抱きしめられて乳首に舌を這わされ驚きの声を上げる。
チュ、チュパ…
『まっ、何して…、やだ…』
『真帆、何されてる?どこだ?誰といるんだ??クソっ…』
離れてしまったスマホからは遠くでそんな声が聞こえる。
『真帆の胸、エッロ…、ホクロ可愛い…』
『ちょ、桐谷…』
「何やってんだよ、やめろ!ふざけんなっ、桐谷って誰だよ?おいっ…」
もはや、絶叫してる遠い電話の声に、やれやれと小さく息を吐いた桐谷がスマホを手にした。
『はじめまして、桐谷です。…あんたがいらないみたいだから、これ幸いと思って迎えにきたんだよ、俺のお姫様を…』
「は、ふざけんなっ、誰がいらないなんて言った、このヤロ、どこだ、言えよ!どこにいるんだー、真帆!」
『あんた、煩いよ、でもまぁ、別れてくれてありがとう』
『こらっ、ちょっと待て、誰が別れたって?話はまだ続いてるんだろ…』
『…いや、終わりだな、こう言うのは信頼関係だろ?真帆は許してお前の都合のいい女になるような奴じゃない。じゃーな』
『まて、切るな、真帆!?』
プチ
ツーツーツー
カシャ
(電源落とした…)
『よし、これでケジメをつけたぞ!』
『何のケジメだよ…』
『いや、だから今度こそ、はじめようと思って、俺の初恋の続き』
『何言って…』
『これくらい強引じゃないと手に入らないだろ?真帆は』
『桐谷…』
『本当に欲しいものは諦めないって決めたんだ。人間は過去から学ぶって言うだろ?俺も色々学んだ…』
そう言い放った強引で不埒な唇は再び私を蹂躙する。
『好きだよ、真帆…』
そう言って頬を撫でられる。
そうだ…
この一言があれば、この思いがキチンと伝わっていたならば、あの頃の私達の未来は違うものになったのかも知れない。
『ふふっ、言わない方も言わない方だけど、聞かない方も大概だよね』
『…?』
『……好きだって』
『……えっ?俺言って無かった?』
『うん、聞いて無かった』
『マジか、…あの日散々脳内シュミレーションしてたから、言ったつもりになってたんだな』
『え、…偶然会ったんじゃないの?』
『……んな訳ないだろ?待ってたんだよ三時間以上も』
『マジか…』
『だから、マジだったんだって…』
『なんか、…ゴメン』
『そう思うならさ、…責任とってよ?』
『なんのだよ?』
『俺の童貞卒業、真帆で出来なかった責任』
『知るかよ!この馬鹿たれが!』
『ははっ、だからさ、真帆、責任とって、俺を最後の男にして?』
『………』
『真帆?』
『か、考えなくもないけど』
『ないけど…?』
『桐谷は、それでいいの?』
『え……?』
『私、不平等条約は結ばない主義だからね』
『…それってさ、もしかして浮気するなって言ってくれてるの?』
『ばっ、何で嬉しそうなんだよ!?』
『めちゃくちゃ嬉しいに決まってるじゃん』
『そ、……そっか』
『と言う事で、真帆さん、無事条約締結という事で、先にすすんでも宜しいでしょうか?俺、もう限界なんですが…』
『し、仕方ないな…』
そう言った私は、自らの意思で桐谷に口付けた。
一瞬、目を見開いた桐谷は凄く嬉しそうな顔をして私を抱きしめた。
そこから、私達の、いや桐谷の六年分の思いが詰まった激しい夜の営みは空が白むまで繰り広げられた。
きっとこの日結んだ二人だけの条約は私達にとって婚姻届より重要な意味を持つ事になるだろう。
⭐︎
次の日の昼過ぎに、気持ち悪いくらい上機嫌の桐谷が作ってくれたパスタを口にしていると、何やらワイドショーが盛り上がっていた。
【昨夜、俳優の橘朔夜くんが、深夜に知人女性の部屋を訪れて騒ぎを起こしたと報じられていますね】
その一言を聞いた私はゴホンゴホンと盛大に蒸せた。
【朔夜と言えば、今年の抱かれたい男二位にまで急上昇した若手俳優ですよね?】
【えぇ、そうなんです!二位と言っても、犯したい男まで含めたならNO1だろうなんて冗談言われてた、あの朔夜くんに一体何があったんでしょうねぇ?】
【最近、新人女優の栗島雫さんとの密会も報じられているようですが、今回の行動は栗島さんとは関係ないようで】
【いやー、実に妙ですなあ】
【その部屋の女性は留守だったようですね】
そう言って入った指輪のCM
そこに登場する、人好きのする笑顔
『あっ、この俳優かな、さっき言ってたのって…、えっと橘朔夜?ん、真帆顔色悪いぞお前、昨日無理させすぎたか?』
『ちがっ、大丈夫…』
冷や汗が溢れ出す。
【お前だけなんだ。信じてよ】
指輪と共に映し出される真剣な眼差し。
『……ん?この声、最近聞いたような、…朔夜』
その瞬間、肩がビクリと強張った。
『……まさか、こいつか?サクって』
観念した私はコクリと頷いた。
CMが終わり、ニュースに戻ると引き続き語られる、ファンからの朔夜の魅力。
【そりゃ、抱かれたいですよ!お相手誰でしょうね?羨ましい】
【いやー、ショック私のサク!】
【一夜でもいいから、抱かれたいですね♡】
【お金積んだら抱いて貰えるなら貯金全部ハタきます私】
そんな女性たちからの賛辞に桐谷の瞳は座っていく。
『ゴメン、皆にも黙ってたから…』
『………』
『あの、…何か怒ってる?』
『お前の部屋の荷物は俺が引き上げる』
『うん、ありがとう、ってかあれ、…やっぱり私の部屋なのかな?』
『……、でもその前に』
『桐谷??』
『もっかい、抱かせろ!』
『えっ、ちょっと待って桐谷、私もう…』
『なぁ、真帆、俺に抱かれたいって言って』
『なっ、何馬鹿言ってるの?昨日散々人の事抱いといて』
『ダメ、俺を欲しがる真帆が見たいの』
『なにそれ、嫉妬?』
『悪いかよ…』
『朔夜には、もう一度ちゃんと私から話すから、もう会わないって、私には桐谷がいるからって』
『……そうか』
そう言った桐谷はボソリと呟いた。
『でも、会って話すなよ』って…。
世間の朔夜への賛辞は桐谷の嫉妬への導線になりそうだ。
了
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました
ユユ
恋愛
婚姻4年。夫が他界した。
夫は婚約前から病弱だった。
王妃様は、愛する息子である第三王子の婚約者に
私を指名した。
本当は私にはお慕いする人がいた。
だけど平凡な子爵家の令嬢の私にとって
彼は高嶺の花。
しかも王家からの打診を断る自由などなかった。
実家に戻ると、高嶺の花の彼の妻にと縁談が…。
* 作り話です。
* 完結保証つき。
* R18
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる