声を失くした女性〜素敵cafeでアルバイト始めました〜

MIroku

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Sweets Party ⑤

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 「いや~、マジ嬉しいっす‼︎ 肉なんて何日ぶりっすかね⁉︎」

 花見をする為に途中で飲み物を買い、公園へと到着した未来、勇気、梓、明彦の4人。明彦の言葉を聞いて、梓が問い掛ける。

 「そうなの? 明彦さんならいつでも食べれるんじゃないの? 一人暮らしなんだし」

 「いえ、一人暮らしだからこそっす。1人で肉を買って焼いて食べるのは面倒ですし、正直言って寂しいっす。でも世の中には1人で焼肉が出来る人もいるんっすよね? そう言う人、憧れるっす」

 「明彦さん、意外と寂しがりだよね」

 「男ってそんなもんっすよ? ねぇ勇気さん」

 「えぇ、そうですね。僕も1人で住んでいた時はそんな感じでした。なので今は、とても賑やかで楽しいですよ」

 勇気は未来と梓を見て、ニッコリと笑う。未来はそう言ってもらえた事が嬉しくて、満面の笑顔で答えた。

 「良いっすよね~……明彦さんは……可愛い子と天使級超絶可愛い子と一緒に住めて」

 「ちょっと……そこ分ける必要ある? 可愛い子で良くない?」

 「いや、“表現は正確に”が俺のポリシーなので」

 「………店長、こいつを簀巻きにして桜の木の下で放置しましょう」

 「うえ⁉︎ 何でっすか⁉︎」

 「女心のの字も知らない野郎は一晩桜の木の下で放置されれば良い‼︎ 桜おばけと呼ばれるが良い‼︎」

 「ちょ‼︎ あんまりっす‼︎」

 「うるせぇ‼︎ 黙って私に簀巻きにされろ‼︎」

 追い掛ける梓と逃げる明彦。その様子を笑顔で見ている未来と勇気。

 未来は、明彦達が追いかけっこをしている更に向こう側、ブランコに1人ポツンと座っている少年を見つけた。

 ニコニコと笑っている勇気の袖を引く。勇気は未来を見て微笑みかけた。

 未来は少年を指差し、勇気は未来が指を指す方向を見る。そして勇気もその少年に気が付いた。

 「気になりますか?」

 勇気の質問に、未来はコクコクと頷く。

 「もう少し様子を見ましょう。ただ単に1人でいるのが好きな少年かも知れませんから」

 勇気が笑顔で未来に言う。未来は頷いて返事をしたが、その少年が気になり続けた。

 時刻は夕暮れ、追いかけっこに飽きた梓と明彦は、ベンチで腰かけて休んでいた。

 辺りは徐々に暗くなり、街灯が点灯し始めた時、梓は少年に気が付いた。

 「あれ、あの子。もう真っ暗なのに何してるんだろ?」

 「実は、柊さん達が追いかけっこをしている時からずっと座ってました」

 「え? そうなの?」

 梓が未来を見る。未来はコクコクと頷き、勇気の言葉を肯定した。

 「ちょっと様子がおかしいですね。声をかけてきます」

 そう言って勇気が少年の元へ向かう。それに続いて未来も向かった。

 「こんばんわ。もう辺りは暗いですけど、帰らなくて良いのですか?」

 明彦が笑顔で少年に声を掛ける。少年は勇気の顔を見て言った。

 「……帰ったって、誰もいないし」

 少年は俯き、ブランコを揺らす。

 「ご両親は? 2人とも帰りが遅いのでしょうか?」

 少年はブランコを止め、肩を震わせた。未来は少年の顔の下にある地面を見る。雨も降っていないのに、乾いた土が“ポツ、ポツ”と丸く湿っていく。

 未来は屈んで、少年の顔を覗き込み心配そうに見つめた。

 少年の声が徐々に大きくなり、そして震える声で言った。

 「お母さんは……3ヶ月前に死んじゃった………」

 それを聞いた瞬間、未来は少年を抱きしめる。少年は驚いたが、優しく包み込む様に抱きしめる未来の胸に顔を押し付け、声を噛み殺す様に泣いた。
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