追放される悪役令嬢だと思ったら産んだ娘が『稀代の悪女』だった

emi

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全てを捨てて選んだ私の娘は

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私の人生を捨てたあの夜の日から数か月。私はとある下町の診療所に身を寄せていた。

「此処までは私の考えた作戦の通りに進んでいるわね。」

そう言いながら、診療所の掃除をしているとこの診療所の主治医が私を呼ぶ声が聞こえる。

「シュリー! そろそろ診察の時間だよー! 」

「はーい! 今行きます!! 」

私は随分と大きくなったお腹に気を付けながら診察を受けるべく診療所へ入って行った。


---------------------

覚悟を決めたその夜、私は直ぐに換金出来るものを持てるだけ持って隠し通路を使い屋敷を出た。

(もう、此処に帰ってくることはないでしょうね……)


目的の場所に着くまでは絶対に振り向かなかった。そうしなければ、屋敷に戻ってしまうと思ったから。


「お父様……お母様……どうか親不孝者を忘れてください。」


足を進める度に16年の記憶が溢れてきて涙が止まらない。自分で選んだ選択なのに名残惜しいと未練が足を止めようとするのを振り切って歩くスピードを速めた。



「やっと着いたわ……。」


目的地は城下町からさらに下にある所謂下町と呼ばれる場所にある診療所だった。

「ここからが勝負よ……。ここでつまずいてしまったら作戦が台無しになってしまう。」


一呼吸を置いてから扉をノックすると女性が出てきた。

「もう診療時間はとっくに過ぎてるよー!……って、あんた、どうしたんだい?」

「夜分遅くにすみません。私はシュリーと申します。一晩でいいので泊めていただけませんか? 」

彼女は私を頭からつま先までジッと見ると入りなと家に入れてくれた。


椅子に座ることを促されお茶を入れてくるといって台所に行ったのを確認してふぅとため息をついた。

(取りあえずは第一関門クリアだわ)

妊娠の可能性を感じた1か月間、私も色々と考えていたのだ。この子を産む環境、お父様達に見つからない場所を考えた結果ここが一番だと判断した。


お茶を持ってきてくれた彼女にお礼を言って口に含むと彼女から話を切り出してきた。

「その格好……あんた、貴族様だろ? 一体何用でこっちに来たんだ? 」


(その言葉を待っていたわ)

「実は、今夜行われたパーティーで婚約破棄を言い渡されましたの。」

その言葉に興味を持ったのか聞く体制に入ってくれた。

「へぇ、どこぞの物語みたいな話だね。何かやらかしたのかい? 」

「何も……。本当に何も心当たりがないのです。けれど、そんな事はどうだっていいのか勘当を言い渡されました。」


優しく迎え入れてくれた両親を悪く言うのは心が痛んだけど、それを勘違いして親身になってくれた。


「辛かっただろうね。……そんなお嬢様が何でこんな所に来ちまったんだい? 」

「行く当てもなく歩いていたら気がついたら此処に居て……。---お願いします!此処に私を置いてくれませんか!?  読み書き計算は出来るので必ずお力になれます!! 」

勢いよく頭を下げると困った様に話しかけてきた。

「そうは言っても、給金を出せるほどここは儲かってないからねぇ。」

「お金は要りません! ここに置いてください!! 」


実際、換金すれば数年は暮らせる宝石を持ってきている。私が欲しいのはお腹の子を誰にもバレずに生むことが出来る場所だった。


「確かに書き物をしてくれるのはありがたいし……。良いよ、少ししか出せないけど文句言うんじゃないよ。」

「あ、ありがとうございます!! 」


そこからはトントン拍子に事が進んだ。

先ずは家を追い出された令嬢としてこの診療所で働き、それから二月ほど経ってから彼女に体調が悪いと報告した。


「あんた、妊娠してるよ!! 一体いつ……っ!」

そう言うと何かを察したように目を逸らしてから私に話しかけてきた。
きっと、お母様と同じ勘違いをしているんだと思う。


「恐らく妊娠2~3か月だろう。……あんたはどうしたい? 」

「生みます。生まれてくる子に罪はないから。」


即答できたのはお腹の子の愛情が芽生えたというよりもこの状況を打破する一心同体の同士のような感じだった。


(それに目論見の通り妊娠期間を誤魔化せたわ)

今、巷ではとある貴族が安定期に入った妊婦を探していると言う噂が耳に入ってきている。---この為に、私は此処に潜伏した。
いくら診療所とは言え、前世の様に機械なんてないので問診と脈拍を測って妊娠しているか確認する。下町の診療所となれば的確な周期を出すことは難しいだろうと考えた。


(彼女の診察での出産予定日より早くに生まれるけど、早産の範囲内だわ)


お腹も出てないから誤魔化せたのも大きいだろうなと考えながら、まだ何処か他人事のように考えてしまう自分に嫌気がした。


---------------------

そんな事があり、働きながら生む場所を運よく手に入れることが出来たのだった。
大きくなったお腹を撫でつつも、未だに愛情は芽生えなかった。


「……生まれてくる子に罪は無いわ。」


ポコポコとお腹を蹴る我が子に感じたのはどうしようもない不安だけだった。




そして数日後、死んでしまうのではないかという痛みに耐えて明け方に遂に子供は生まれてしまった。

(生まれてしまったって何よ……)


満身創痍の中出産の手伝いに来てくれていた町の人が赤ちゃんの体を洗って綺麗な布で包まれた我が子を連れてきてくれた。


「まぁ、可愛らしい女の子。ほら抱っこしてあげて。」


そう言われて抱きしめると小さな命は泣き出してしまった。取りあえず泣き止ませようと必死にあやしていると連れてきてくれた人が話しかけてきた。

「貴方に似て目鼻立ちが整っているから将来は絶対に美人になるわよ~。 名前はもう決めてあるの? 」


(そう言えば決めてなかったな)


性別がどちらか分からなかったし、これから決めると言おうとした口は違う言葉を発していた。


「リリアナ。この子の名前はリリアナよ。」


まぁ、可愛らしい名前ねーと言ってくれているが私はそれどころじゃなかった。


(流石にこれは分かんないわよ)


アシュリーとして生を受けて16年経って、やっと自分が悪役令嬢か取り巻きではなく「稀代の悪女」の母親として転生をしている事を理解したのだった。

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