追放される悪役令嬢だと思ったら産んだ娘が『稀代の悪女』だった

emi

文字の大きさ
14 / 33

同情?いいえ、愛情です

しおりを挟む
すやすやと眠る我が子を眺めつつ今思い出した記憶の状況の整理を始めた。

「やっぱり小説の世界に転生してたんだ……。それにしては思い出すのが遅すぎない? 」

私が読んでいた小説『優しき皇女様』の世界だとリリアナを産んでから思い出した。


小説『優しき皇女様』は皇女カトリーヌと侯爵家の次期当主アスランの恋模様を描いた恋愛小説だ。そして、私の娘リリアナは『稀代の悪女』として登場する。

美貌と魔法の才に恵まれたリリアナであったが親の愛には恵まれず、愛情を欲しがる女性へと成長し、デビュタントの際に優しくしてくれたアスランに熱を上げて恋を叶えるのに邪魔となるカトリーヌの暗殺を企て、その他諸々の悪事もバレて最終的には斬首刑となってしまう。

「物語の軌道修正が掛かっているのが何とも言えないわ~。」

そう、私が自暴自棄になって一夜を共にしたあの男こそ、この国一番の魔法使いジャック・ハーネスト。リリアナの父親として登場するキャラクターだ。

「そして、リリアナの母親のアシュリーは下町で暮らしてアルコール依存症で彼女が10歳の時に亡くなるのよね。」

リリアナの過去回想のシーンは母親の葬式からはじまるので母親の事は死亡理由以外は特に書かれていなかった。

「ジャックが欲しかったのは『自分の血を継ぐ子供』。あの人でなしがリリアナに愛情を注ぐなんて思えないわ。」

そんな事を考えていると眠っていたリリアナが起きたのか泣き出してしまった。
急いでベビーベッドに向かい、リリアナを抱き上げた。

「リリアナ……。泣かないで、お母様は此処にいるわ。」

さっきまで感じてなかった愛情が記憶を思い出してから湯水の様に溢れてくる。
あのまま思い出せていなければ小説と同じ道筋を歩んだかと思うと怖くなった。

(こんなに愛しく感じるのは私がアシュリーの置かれた状況を理解して心に余裕があるから。本当のアシュリーなら精神をすり減らしていても可笑しくないわ)

子供の事は私の様に家族に言えなかったんだろう。そして、自業自得とは言え自分をここまで追いやった自分の子供を愛することが出来なかったんだろうな。

「リリアナに暴力を振るった描写はなかったから多分八つ当たりだって出来なかったんだろうな。それでお酒におぼれてしまった。」

アシュリーの人生を考えるとあまりにも哀れだ。勿論そんな人生を歩むつもりなんて毛頭ないのだけど。

「この子を『稀代の悪女』になんてさせないわ。」


物語の修正力を甘く見ていた。真っ当に生きれば回避できると本気で信じていたんだから。


「10年……。10年でこの子の生きる基盤を整えなくちゃ。」


物語の修正力によって私はリリアナが10歳の時にはこの世に居ないかも知れない。
それでも、この子には幸せに生きてほしいと願うから。

「リリアナ、絶対に不幸な道に行かせたりなんてしないわ。」



---例え、私の人生を全て捧げたとしても

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...