31 / 33
彼の感情に触れるとき 1
しおりを挟む
涙も止まりようやく落ち着いてきた頃、タイミングを見計らっていたかのようにリリアナが姿を現した。
「お母様……。その、大丈夫? 」
私の顔を見て泣いていたことに気づいたリリアナは気まずそうにしている。
どんな反応をしても心配をかけてしまいそうだけど私は努めて元気に振舞った。
「心配をかけてごめんなさいね、もう大丈夫よ。」
その言葉に納得してはいなかったけど、これ以上のかける言葉が見つからないのか話そうとして口を開けては閉じることを繰り返していた。
(どうしようかしら……)
話の切り上げ方を考えていると突然リリアナが勢いよく後ろを振り返った。
不思議に思って声をかけようとした瞬間、瞬く間に屋敷が氷漬けになっていた。
「まさか……これ……。」
「当然、お父様の仕業よ。」
「やっぱり怒っているのね。この屋敷を凍らせて私達を追い出そうとしているの?」
そう呟くとリリアナが苦々しい表情をみせた。
「これは魔法というよりも魔力が漏れ出てる感じだわ。……ほら、此処まで凍ってきてる。」
リリアナが花壇に指をさして教えてくれた場所もじわじわと浸食が進み、花を凍らせていて吐いた息が白くなるくらい寒くなってきた。腕をさすりながらリリアナに尋ねる。
「漏れ出てるって事は彼は精神が不安定なの? 」
リリアナも数年前までは泣いたり怒ったりするたび触ってもないのに家の物が壊れてしまっていた。最初は意味が解らず住んでいる家に幽霊が居るのかと思ってヨハンに尋ねたところ精神不安からくる魔力暴走の一種だと教えて貰った。彼が魔法を教えだしてからはその頻度はかなり減っていたのでその対応も教えて貰っていたのだろう。
「その言葉で片付けて良い規模じゃないけどね。うわぁ、このままだと屋敷どころか被害が町にまで行きそう……。」
「そんな……今すぐにでも止めないと!! 」
そう言うとリリアナは嫌そうな顔をした。
「お父様の責任だわ。もう離婚間近って事にして今から転移魔法でお母様の実家に帰るって選択肢はどう? 」
「流石にダメでしょう!? 」
こうなってしまった原因は確実に私だ。それが分かっているのに我が身可愛さに逃げてしまうのは流石に無責任だ。屋敷の中に入るために扉に向かうが近づくにつれ気温が下がっている様な気がした。
「寒い……。でも、屋敷の扉は凍っていなくて安心したわ。」
ガチガチと歯を鳴らしているとリリアナが防寒の魔法をかけてくれたのか寒さをそれほど感じなくなった。
「扉が凍っていたら屋敷に入れないわ。」
「それはそうなんだけどね……。」
正論ではあるけど何もかも凍ってしまっているのに玄関扉だけ無事なんて不自然にもほどがある。そんな事を考えていると信じられないかも知れないけどとリリアナが話しかけてきた。
「こんな状態にしてるけどお父様はお母様に会いたくて扉を開けてるんだよ。心が冷たくなるくらいに寂しいって無意識に感じてる。」
自覚があったら魔力漏れのコントロールくらい出来るはずと言っているが到底信じられなかった。人の心なんて分からないような人がそんな事思うのだろうか。
(でも、これが魔力暴走だと魔法使いであるリリアナが言っているのだから本当なんでしょうね)
この屋敷を覆いつくすほどの氷が彼の寂しさだと言うのなら私はいったい彼の何処を見てきたのだろうか。そう考えて思わず笑ってしまった。
「見てきたも何も私は彼を知ろうとしなかった。」
話し合いもせずに相互理解が無いまま出来てしまった関係性の綻びが今になって出てきてしまっているのなら向き合わなくてはいけない。
(これが愛してるからなんて理由だったら収まりが良いんでしょうけど……)
今の私は彼の欲しい感情を返すことは出来ない。そんな嘘の言葉は彼だって望まないだろうとは何となく感じていた。
(だったら、嘘偽りなく話すしかないじゃない)
それがリリアナの魔法が効いているのにも関わらず寒さを感じる程の悲しみを与えてしまった私の考える唯一出来る事だった。
「お母様……。その、大丈夫? 」
私の顔を見て泣いていたことに気づいたリリアナは気まずそうにしている。
どんな反応をしても心配をかけてしまいそうだけど私は努めて元気に振舞った。
「心配をかけてごめんなさいね、もう大丈夫よ。」
その言葉に納得してはいなかったけど、これ以上のかける言葉が見つからないのか話そうとして口を開けては閉じることを繰り返していた。
(どうしようかしら……)
話の切り上げ方を考えていると突然リリアナが勢いよく後ろを振り返った。
不思議に思って声をかけようとした瞬間、瞬く間に屋敷が氷漬けになっていた。
「まさか……これ……。」
「当然、お父様の仕業よ。」
「やっぱり怒っているのね。この屋敷を凍らせて私達を追い出そうとしているの?」
そう呟くとリリアナが苦々しい表情をみせた。
「これは魔法というよりも魔力が漏れ出てる感じだわ。……ほら、此処まで凍ってきてる。」
リリアナが花壇に指をさして教えてくれた場所もじわじわと浸食が進み、花を凍らせていて吐いた息が白くなるくらい寒くなってきた。腕をさすりながらリリアナに尋ねる。
「漏れ出てるって事は彼は精神が不安定なの? 」
リリアナも数年前までは泣いたり怒ったりするたび触ってもないのに家の物が壊れてしまっていた。最初は意味が解らず住んでいる家に幽霊が居るのかと思ってヨハンに尋ねたところ精神不安からくる魔力暴走の一種だと教えて貰った。彼が魔法を教えだしてからはその頻度はかなり減っていたのでその対応も教えて貰っていたのだろう。
「その言葉で片付けて良い規模じゃないけどね。うわぁ、このままだと屋敷どころか被害が町にまで行きそう……。」
「そんな……今すぐにでも止めないと!! 」
そう言うとリリアナは嫌そうな顔をした。
「お父様の責任だわ。もう離婚間近って事にして今から転移魔法でお母様の実家に帰るって選択肢はどう? 」
「流石にダメでしょう!? 」
こうなってしまった原因は確実に私だ。それが分かっているのに我が身可愛さに逃げてしまうのは流石に無責任だ。屋敷の中に入るために扉に向かうが近づくにつれ気温が下がっている様な気がした。
「寒い……。でも、屋敷の扉は凍っていなくて安心したわ。」
ガチガチと歯を鳴らしているとリリアナが防寒の魔法をかけてくれたのか寒さをそれほど感じなくなった。
「扉が凍っていたら屋敷に入れないわ。」
「それはそうなんだけどね……。」
正論ではあるけど何もかも凍ってしまっているのに玄関扉だけ無事なんて不自然にもほどがある。そんな事を考えていると信じられないかも知れないけどとリリアナが話しかけてきた。
「こんな状態にしてるけどお父様はお母様に会いたくて扉を開けてるんだよ。心が冷たくなるくらいに寂しいって無意識に感じてる。」
自覚があったら魔力漏れのコントロールくらい出来るはずと言っているが到底信じられなかった。人の心なんて分からないような人がそんな事思うのだろうか。
(でも、これが魔力暴走だと魔法使いであるリリアナが言っているのだから本当なんでしょうね)
この屋敷を覆いつくすほどの氷が彼の寂しさだと言うのなら私はいったい彼の何処を見てきたのだろうか。そう考えて思わず笑ってしまった。
「見てきたも何も私は彼を知ろうとしなかった。」
話し合いもせずに相互理解が無いまま出来てしまった関係性の綻びが今になって出てきてしまっているのなら向き合わなくてはいけない。
(これが愛してるからなんて理由だったら収まりが良いんでしょうけど……)
今の私は彼の欲しい感情を返すことは出来ない。そんな嘘の言葉は彼だって望まないだろうとは何となく感じていた。
(だったら、嘘偽りなく話すしかないじゃない)
それがリリアナの魔法が効いているのにも関わらず寒さを感じる程の悲しみを与えてしまった私の考える唯一出来る事だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる