追放される悪役令嬢だと思ったら産んだ娘が『稀代の悪女』だった

emi

文字の大きさ
33 / 33

旦那の愛が重すぎて世界が壊れそうです

しおりを挟む
「アシュリー! 本邸の掃除が終わったよ。」

ニコニコと笑う彼にため息をついた。
掃除とは聞こえがいいかも知れないが、きっと昨日までの屋敷は建っていないだろう。


(屋敷を立て直すと言った時は耳を疑ったわよ)


人間が長い時間をかけてやる事をあっという間にやってのけてしまうのがジャック・ハーネストという男なのだ。やる気を出せば世界征服なんてこともやってのけてしまうかもしれない。


(小説のリリアナもヒロインを害するときにチート級の事をやってた時は作者の余りのご都合主義に驚いたけどジャックはその上をいってるわ)


魔法という言葉は実に便利で、訳の分からない展開になっていたとしても『それは魔法の力だ』と言われてしまえばこちらが納得するしかない。


「……10年前のあの事件も魔法が使われていた? 」


考えてみればその可能性もない訳じゃない。ルーマン侯爵家は一族に魔法使いが居ない為その考えに至るときには手遅れの場合が多い。


「その前に魔法使い自体が少ないから考えられる優先順位が下がってしまうのよね……。」


「魔法使いがどうしたって? 」


私の独り言が聞こえていたらしくジャックが訊ねてきたのでこれ幸いと思って10年前の憶測を言ってみた。すると珍しく考え込む仕草を見せてあり得ない話ではないけどと話し出した。


「それをした魔法使いは相当な実力者だ。だって俺に気づかれずに何十人と魔法をかけたんだから身体の負担だって相当の筈だよ。」


「マリアベルはデビュタントの時に体調を崩していたわ。貴方みたいに魔法を使ってそうなったのかも知れない。」


「でも、その日の夜には回復していたんだろう? 俺がこの前やった魔法は規模が大きいとは言ってもやった事は記憶の造り替えであって洗脳ではないからあの程度で済んだけど大人数の洗脳なんて体の負担が大きすぎる。」



どんな手を使ったとしても半日ではまず回復しないと言い切るジャックに何で洗脳だと言い切れるのか疑問に思ったけどその言葉に一番納得しているのは私自身だった。


(マリアベルが洗脳をしているとしたら疑問点が解消されるわ )


私の知っているジェレミー様は女の趣味は分からないけど決して国を傾かせるような人ではなかったし、仮にそうであったとしても皇后の権限で国庫を使えるとして後ろ盾がないマリアベルの我儘を国民の反感を買ってまで王室がするとは思えなかった。


「マリアベルが魔法で洗脳しているとしたら辻褄が合うわ。考えてみれば私はあの日マリアベルに直接会ってはいないから。……でも、マリアベルが魔法を使っているところなんて見た事が無いの。」


「隠していただけかもよ。そう言う魔法具だってない訳じゃないし。」


「彼女とは4歳の時からの付き合いだけど魔力暴走を起こしているなんて聞いたことがないわ。貴方やリリアナだって起こした事をしないなんてあり得るの? 」


そう尋ねると暫く考えた後にとんでもないことを言い放った。


「よし、面倒くさいから皇后陛下に直接聞きに行こう。」


そう言って魔法陣を展開させていたので慌てて止めた。何をしようかなんて聞き返さなくても分かる。


「正気ですか!? 何もなしに乗り込んだら不敬罪ですよ!? 」


そう言うとジャックはアシュリーは優しいねと私に向かって微笑んでいた。---微笑んでいたけど彼の目は全く笑っていなかった。


「だからこそ皇后陛下のしたことは許せないな。……君を傷つけた奴は全員消せば問題ないよね? 」


(この人、本気で言ってるわ……っ! )


冗談で考えていた事が現実で起きるのは何としても避けたい。理由は分からないけどそんな事になったら私が外の景色を拝めなくなりそうな気がしたからだ。


「これから私が彼女を追い詰めていくのよ!! ジャックは余計な事をしないで私に協力しなさい!! 」


我ながら随分な物言いだと十分分かっていたけど、これが私の本音だ。引導を渡すのは彼ではなく私じゃないといけない。そう思っていると彼が震えだしたのでやっぱり怒ってしまったかと考えていると突然私を抱きしめた。


「伯爵様じゃなくてジャックって呼んでくれた……。嬉しい……。」


顔を赤く染めながらうっとりしているが私はそれどころじゃない。


(王室の破壊よりも私に呼ばれるのが嬉しいって事……? いや、それで喜んじゃダメでしょう私!? )


軽くパニックを起こしているとお母様から離れてとリリアナが叫びながら駆けつけた。


「こんな事だろうって思ったわ!! お父様の行いはお母様が許したって私が許さないんだから!!」


するとジャックはキョトンとしてから笑顔でリリアナと呼んだ。


「その俺の行いで君は生まれることが出来たんだけど、それって君の許しが必要なのかな? 」


その言葉にとうとう耐えれなくなってリリアナは魔法をジャックに向かって打ち出した。そんな自分の娘の行動に彼は猫と戯れるかのように軽々と避けていた。



(……好きにさせよう)


これからこの生活が日常と化すことに頭を抱えたけど、お昼ご飯が出来るころには何もなかったかのように来ると何となく予感がして私はお昼ご飯を作るべく部屋を後にするのだった。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...