その日、猫は希望と願いを天秤にかける

留菜マナ

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第一章 迷い猫に誘われて

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「最初、わたし、電車に轢かそうになったよね」
「にゃ? でも、神様がハルカちゃんを救ったことで助かったはずにゃ」

我輩の戸惑いに、ハルカちゃんは小さく首を振ったにゃ。

「……ううん、本来の歴史では助かっていないよ。神様が関与したのは、この世界だけ。だから、にゃん太郎さんが知っているわたしはもう、本来の未来にはいない」

ハルカちゃんが語る事実に、胸が苦しくなったにゃ。

「今、こうして生きているわたしは結局、どこにもいけないんだ。だから、このまま消えても――」
「そんなことないにゃ!」

我輩はありったけの声で叫んだにゃ。
身体が粟立ち、胸がいっぱいになって、苦しくて苦しくてたまらなくなる。
本来の歴史にはもう、ハルカちゃんはいないかもしれないにゃ。
でも、神様が導いた、この世界ではハルカちゃんは確かに生きている。
それなのに……ハルカちゃん、何でそんな風にぜんぶ諦めたみたいな顔をするんだにゃ。
我輩、そんなの嫌にゃ!

「ハルカちゃん、どこへも行けないなんて言わないでにゃ! 未来が必ず来ると信じてほしいにゃ!」
「……にゃん太郎さん」

ハルカちゃんが絞り出したつぶやき。
すがるような響きのその声は、じわりじわりと我輩の心に浸透したにゃ。

「我輩が今、必死になっているのは、ハルカちゃんと一緒に幸せになりたいからにゃ!」

我輩、いても立ってもいられなくなって、ハルカちゃんに抱きついたにゃ。

「ハルカちゃんなしの未来なんて、あり得ないにゃ。それだけは忘れないでほしいにゃ!」
「……にゃん太郎さん」

心地よい温もりが訪れたにゃ。
嬉しさと緊張で、我輩は胸がいっぱいになる。

「さみしい時はいつでも呼んでにゃ。猫に戻っても、我輩、何度でも神様にお願いして、すぐに人間になって駆けつけるからにゃ」

愛しさは、何気ない日々の中で募っていくにゃ。
これからも一緒に過ごす彩りとともに。

「だからもう、この世界を間違いなんて言わないでにゃ。1%でも、ハルカちゃんがハルカちゃんらしく、生きられる世界なら……」

我輩はそこで一旦、言葉を止める。
そして、意を決して、思いの丈をぶつけたにゃ。

「我輩、ハルカちゃんにこのまま、この世界で生きてほしいにゃ! これだけは伝えたいにゃ!」
「わたしだって生きたいよ! あんな終わり方、望んでない。でも……」

その時、神様が『もう一度、選んだら』とささやいたにゃ。
本来なら、神様の声は我輩たち、神の使いしか聞こえない。
でも、神様が届けたいと念じたからか、ハルカちゃんにも聞こえたみたいにゃ。
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