その日、猫は希望と願いを天秤にかける

留菜マナ

文字の大きさ
44 / 57
第二章 あの海の向こうへ

3-22

しおりを挟む
「海翔、ごめんね。わたし、颯太が生き返って……何か勝手に、そこがゴールのような気がしたの」

六花ちゃんは未来を怖がっている。
理解し合えないかもしれない。
傷つけ合うかもしれない。
だから、怖いんだにゃ。
そんな感覚が、身体中を駆け抜けていったにゃ。

「あの日の後悔はたくさんしたけれど、ここから先は未知だから、三人で付き合うのがどういうことなのか、よく分からないの」

考えるような間を空けて、六花ちゃんは悲しげに笑ったにゃ。

「頼りにならなくてごめん」

六花ちゃんの内側が見えた気がする笑顔。
それを見た海翔くんはため息をついたにゃ。

「心配するなよ。それは、僕にも分からないから」
「……えっ?」

海翔くんの言葉に、六花ちゃんはぽかんとする。

「恐らく、颯太も同じだろ。だったら、ゆっくり三人で一緒に考えていけばいいだけのことだ」
「……うん。『一緒にゆっくり』でいいんだ」

海翔くんは重し苦しくならないように、優しく背中を押す。
ふと、微笑みを取り戻した六花ちゃんには伝わったようだにゃ。

「海翔、ありがとう」
「何だよ、急に」
「海翔のおかげで……三人で付き合えて、でも、ここがゴールじゃないって分かったから」

答えが分かれば、もう悩むことはない。
表情が朗らかになった六花ちゃんは願うように言ったにゃ。

「このくすぐったくて幸せな時間がどうか、ずっと続きますように」

育った環境の異なり。
思考の異なり。
答えにたどり着くまで、決して平坦な道程ではなかったにゃ。
新しい感情、新しい区切りを経て。
それでも絆を深め合い、時に回り道もしながら、ようやくにして辿り着いた三人の答えだったにゃ。

「にゃ~。良かったにゃ」

我輩、ほっと安堵する。
『願いをかなえる切符』と『願いの対価を支払う切符』。
神様の力によって、六花ちゃんたちは最悪の結末を塗り替えて、最善の未来にたどり着いたにゃ。
でも、まだ、最後のひと押しが残っている。
今、六花ちゃんたちにあるものは、六花ちゃんたちのもの。
だから、神の使いである我輩たちは、それに気づくきっかけを作ってあげればいいにゃ。
……ということで。

神様、ついに我輩たちの出番みたいにゃ!
我輩、早速、神の使いらしく、かっこよく振る舞ってくるにゃ!

にゃにゃ?
うまく導けるのか心配、だとおっしゃるにゃ?
――そこは気にしちゃいけないことにゃ。
やや、それより、我輩たちの出番。

「神様、今すぐ、『三時間だけ、人間になれる薬』をくださいにゃ。そして、超イケメンの我輩が、六花ちゃんたちの前に出たら、スポットライトを照らしてほしいにゃ。我輩、超人気アイドルグループの一人らしく、華麗に登場したいにゃ」
「……全く、どんな時でも目立とうとするなんて、愚かな猫ですにゃ」
「にゃ!?」

そんな我輩の懇願に、にゃん吉先輩はやれやれと肩をすくめたにゃ。

「神様。我らは姿を消して、このまま、猫の姿で行くにゃ」
「あんまりにゃ~」

にゃん吉先輩にそう言われて結局、我輩は神様の力で透明化。
にゃん吉先輩は、妖術で姿を消して。
猫の姿のままで、六花ちゃんたちのもとに行くことになったにゃ。
とほほ……にゃ。
でもでも我輩、気を取り直して、六花ちゃんたちの前に登場。

『……そっかそっかにゃあ。君たちは、君たちなりの答えにたどり着いたみたいだにゃ』
「あの時の……」

六花ちゃんは呆気にとられたように、我輩を見つめたにゃ。
六花ちゃんのリアクションに、我輩、気持ちを切り替えるように咳払いして告げる。

『まだ、名乗っていなかったにゃ。我輩の名前はにゃん太郎。偉大なる神の使いにゃ』

我輩はくるりと回転して、堂々と名乗ったにゃ。
神様。
我輩、立ち直りの早さは自慢にゃ。

にゃにゃ?
早すぎ、だとおっしゃるにゃ?
――そこは気にしちゃいけないことにゃ。
うにゃ?
隣にいるにゃん吉先輩も、我輩に対して呆れているような?
やや、それより、六花ちゃんたちに事情を説明しないと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

行かないで、と言ったでしょう?

松本雀
恋愛
誰よりも愛した婚約者アルノーは、華やかな令嬢エリザベートばかりを大切にした。 病に臥せったアリシアの「行かないで」――必死に願ったその声すら、届かなかった。 壊れた心を抱え、療養の為訪れた辺境の地。そこで待っていたのは、氷のように冷たい辺境伯エーヴェルト。 人を信じることをやめた令嬢アリシアと愛を知らず、誰にも心を許さなかったエーヴェルト。 スノードロップの咲く庭で、静かに寄り添い、ふたりは少しずつ、互いの孤独を溶かしあっていく。 これは、春を信じられなかったふたりが、 長い冬を越えた果てに見つけた、たったひとつの物語。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...