その日、猫は希望と願いを天秤にかける

留菜マナ

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第二章 あの海の向こうへ

3-23

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『三人の今後について。それを伝えに来たにゃ』

その言葉に、完全に思考停止した海翔くんと六花ちゃん。
うまくそれを飲み込めない二人に、我輩はこう続けたにゃ。

『これからも、三人は一緒にいられるにゃ。でも、それは永遠じゃないにゃ』
「永遠じゃない……?」

六花ちゃんは不安げに視線をさまよわせていたにゃ。

『何故なら、六花ちゃんの真の願いは、颯太くんを生き返させることではないからにゃ』
「……え?」

予想外な言葉だったのだろう。
六花ちゃんは思わず、言葉を失ったにゃ。

「でも、六花はあの時、確かに『颯太を生き返させて』って言っただろ」
『そのとおりにゃ。だから、こうして今も、颯太くんは海翔くんの中にいるにゃ』

海翔くんの言い分に、我輩はうなずいたにゃ。

『ただ、六花ちゃんが本当にかなえたかったのは、あの日、果たせなかった約束。颯太くんと一緒に、海に行くことにゃ』
「海……」

海に行くこと。
その言葉が、六花ちゃんの記憶を刺激したみたいにゃ。

『それがかなった今、三人の関係はどうなるのかは定かではないにゃ』
「そうなのか……?」

海翔くんは理由を探るように見つめていたにゃ。
強くうなずくと、我輩は改めて、状況を説明する。

『六花ちゃんが口にした願いは、『颯太くんを生き返させること』。でも、六花ちゃんが真に望んでいたのは、『颯太くんとの約束を果たすこと』。だから、『願いをかなえる切符』が、どちらの願いをかなえたのかは分からないにゃ』
「そんな……」

我輩が示した答えに、六花ちゃんは絶句する。
ふと、これまでの六花ちゃんの人生を思う。
三人で過ごした、永遠にも思えた一瞬の日々のこと。
我輩、それを思うと胸が苦しくなったにゃ。

『でも、忘れないでほしいにゃ。今、六花ちゃんたちにあるものは、六花ちゃんたちのもの。六花ちゃんたちが選び取った未来にゃ』
「わたしたちが選び取った未来……」

六花ちゃんは強い瞳で前を見据える。
それは深い絶望にまみれながらも、前に進む決意を湛えた眸だったにゃ。

「わたしたちは、これからもずっと一緒。『願いをかなえる切符』が、どちらの願いをかなえたとしても関係ない」
「そうだな。信じてみよう。これから染まっていく新しい世界に」

六花ちゃんの決意に、海翔くんは安心したように息を吐いたにゃ。

『新たな未来へのきっかけは、神様が示した。これからの未来は、お主たちの手で選び取っていくにゃ』
『海翔くんと六花ちゃんと颯太くん。三人の力があれば、大丈夫にゃ』

にゃん吉先輩は満足そうに言い、我輩もうなずいたにゃ。
これが最後のひと押し。
神の使いとしての導きは、六花ちゃんに、海翔くんに何をもたらすだろう。
たとえ、目の前に答えはなくても、そこにあるのは――心の距離を越えてつながる温度。
これからの日常の中に、今までの時間はちゃんと残っている。
三人はまた、日々の中で、新しい『今』を重ねていくにゃ。
願いの結実が待つのだと信じながら。

『不思議にゃ。六花ちゃんたちを見ているだけで、どうしてこんなに幸せなんだろう』

風は冷たく吹き抜けたけれど、みんなで寄り添い合えば、気にもならないにゃ。
温もりに包まれながら、未来への足取りは弾んだにゃ。
ここが転換期。
あるいは、六花ちゃんたちの未来の旅の始まりだったのかもしれないにゃ。
そこで我輩、神様の異変に気づく。

にゃ?
神様、どうかしたのかにゃ?
海翔くんと六花ちゃんを見て、難しい顔をして。

えっ?
これが『願い』の出発点、とおっしゃるにゃ?
これから我輩たち、神の使いが、『希望』と『願い』を天秤にかけることになる?
――何だか、気になる導きにゃ。

我輩、不思議な神託に首をかしげたにゃ。

『願い』の出発点。
いつもの使命は、気づかないうちに新しい色を取り込み始めていたにゃ。
そのことを、この時の我輩はまだ知らなかったにゃ。



その女の子には、どうしてもかなえたい願いがありました。
女の子のもとに吹き抜けたのは、冬の凛とした空気をはらんだ冷たい風。
その風が、女の子のところへ運んできてくれたのは春のかけらでした。
春の光がもたらしたのは、大切な人の再会とかけがえのない奇跡。
昨日まで共に歩いた幼なじみ。
今日、出会った神の使いと名乗る猫たち。
明日を一緒に歩いていく、愛しい人たち。
だから、女の子はもう、未来を歩くことを恐れることはありません。
これは神様と落ちこぼれの神の使いである猫が紡いだ、いつかの春へと続く未来ねがいの物語。
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