61 / 81
第60話:“この場所、ちょっと安心かも”。学校という異世界への第一歩
しおりを挟む
「“Reforgeの空気”を、できるだけそのまま持ってきてください」
学校側からの要望は、たったそれだけだった。
でも、“空気”を運ぶというのは、想像以上に難しい。
ノアとセリアは、王都第一学区の小学校にやって来た。
彼らのミッションは、“選べる居場所”を校内に仮設的に設けること。
案内されたのは、図工準備室の一角。
古い机、くすんだカーテン、棚の奥には誰も読まない教材。
「……ここに、“安心”をつくるのか」
ノアは、少しだけ緊張した顔で鞄を置いた。
セリアは慣れた手つきで、布をかけ、クッションを並べ、
壁に“選べるカード”を一枚ずつ貼っていく。
・今日は話したい? 話したくない?
・今の気分:にこ/もや/しん/ぴた/くた(五段階)
・してみたいこと:並べる/描く/音を聞く/見てるだけ
ただの紙だけど、それが**「ここでは、自分で選んでいい」**というサインになる。
ノアは一息ついて、立て札を机に置いた。
> 【このスペースでは、話さなくても大丈夫です。】
【できなくても、がんばらなくても、大丈夫です。】
【ここにいてくれるだけで、うれしいです。】
準備が整ったタイミングで、最初の子どもが現れた。
教師がそっと紹介したその子は――
椅子に座る前から、すでに視線を下げていた。
「この子は、教室ではずっと黙ってる。
誰とも話さず、でも帰ることもできないんです」
セリアはゆっくり手を振り、ノアがしゃがんで目線を合わせた。
「こんにちは。ここは“話さない場所”でもあるから、大丈夫。
そこにある紙、触ってみるのだけでもOKだよ」
子どもは言葉を返さなかった。
けれど、目だけがゆっくり、壁のカードを見つめた。
“もや”に手が伸びて、小さなピンで留める。
その横に、“見てるだけ”のカードを並べた。
セリアが小さく笑った。
「選んだね。……それが、今の“関わり方”だね」
***
その日、部屋を訪れたのは4人。
話す子も、黙る子もいた。
でも、全員が何かしらを“選んで”、帰っていった。
授業に戻る前、先ほどの子が立ち止まり、
振り返って一言だけ呟いた。
「……ここ、ちょっと安心かも」
ノアの胸に、何かがふっと灯った。
> Reforgeの支援は、“施設”にあるんじゃない。
“ここにいても大丈夫”と、心が言える場所なら、
どこでも支援は始められる。
セリア:「ね、支援って持ち出せるんだよ」
ノア:「うん。“外の世界”も、ちゃんと支援を受け入れる準備、できてる気がする」
***
その日の記録。
> 【学校内支援試験:1日目】
実施場所:図工準備室
対象:教員紹介による任意参加者
記録:カード選択・非言語反応・滞在時間
備考:選択率100%。“話さなくても参加できる”という構造が、
安心の起点になりうることを確認。
Reforgeの支援は、確かに外の世界でも息をし始めていた。
学校側からの要望は、たったそれだけだった。
でも、“空気”を運ぶというのは、想像以上に難しい。
ノアとセリアは、王都第一学区の小学校にやって来た。
彼らのミッションは、“選べる居場所”を校内に仮設的に設けること。
案内されたのは、図工準備室の一角。
古い机、くすんだカーテン、棚の奥には誰も読まない教材。
「……ここに、“安心”をつくるのか」
ノアは、少しだけ緊張した顔で鞄を置いた。
セリアは慣れた手つきで、布をかけ、クッションを並べ、
壁に“選べるカード”を一枚ずつ貼っていく。
・今日は話したい? 話したくない?
・今の気分:にこ/もや/しん/ぴた/くた(五段階)
・してみたいこと:並べる/描く/音を聞く/見てるだけ
ただの紙だけど、それが**「ここでは、自分で選んでいい」**というサインになる。
ノアは一息ついて、立て札を机に置いた。
> 【このスペースでは、話さなくても大丈夫です。】
【できなくても、がんばらなくても、大丈夫です。】
【ここにいてくれるだけで、うれしいです。】
準備が整ったタイミングで、最初の子どもが現れた。
教師がそっと紹介したその子は――
椅子に座る前から、すでに視線を下げていた。
「この子は、教室ではずっと黙ってる。
誰とも話さず、でも帰ることもできないんです」
セリアはゆっくり手を振り、ノアがしゃがんで目線を合わせた。
「こんにちは。ここは“話さない場所”でもあるから、大丈夫。
そこにある紙、触ってみるのだけでもOKだよ」
子どもは言葉を返さなかった。
けれど、目だけがゆっくり、壁のカードを見つめた。
“もや”に手が伸びて、小さなピンで留める。
その横に、“見てるだけ”のカードを並べた。
セリアが小さく笑った。
「選んだね。……それが、今の“関わり方”だね」
***
その日、部屋を訪れたのは4人。
話す子も、黙る子もいた。
でも、全員が何かしらを“選んで”、帰っていった。
授業に戻る前、先ほどの子が立ち止まり、
振り返って一言だけ呟いた。
「……ここ、ちょっと安心かも」
ノアの胸に、何かがふっと灯った。
> Reforgeの支援は、“施設”にあるんじゃない。
“ここにいても大丈夫”と、心が言える場所なら、
どこでも支援は始められる。
セリア:「ね、支援って持ち出せるんだよ」
ノア:「うん。“外の世界”も、ちゃんと支援を受け入れる準備、できてる気がする」
***
その日の記録。
> 【学校内支援試験:1日目】
実施場所:図工準備室
対象:教員紹介による任意参加者
記録:カード選択・非言語反応・滞在時間
備考:選択率100%。“話さなくても参加できる”という構造が、
安心の起点になりうることを確認。
Reforgeの支援は、確かに外の世界でも息をし始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ?
――――それ、オレなんだわ……。
昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。
そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。
妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。
大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)
たぬころまんじゅう
ファンタジー
小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。
しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。
士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。
領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。
異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル!
圧倒的不利な状況を武と知略で切り抜ける!
☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる