異世界ライフ〜異世界の自分を自分で救ってみました〜

スーナ

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一章 〜冒険者編〜

岩山戦

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 お風呂でのこともあり、ミズキは急いで出発の準備をしていた。これで荷物が多ければ確実に遅刻していただろうと、少しだけ荷物が少ない事に感謝する。支度し終えたミズキが宿屋を出ると既に彼女たちは揃っていた。

「おはようございます。ダブルさん」
「おはようございますエスティさん。すみません遅くなりました」
「いえ、私たちも今出てきたばかりですので気にしないでください。それより今日はよろしくお願いしますね」

 挨拶を交わすとエスティが唐突にミズキの顔を凝視し始めた。まさか「また仮面を」と思ったミズキは顔をペチペチと触って確認するがしっかりと身に付けている。その事に安堵し、別の理由があるのかとエスティに直接聞いてみた。

「あの、どうかなさいましたか?」

 ミズキの唐突な質問にエスティは手をバタつかせて慌てて答える。

「ああ、いえ、その……仮面が変わっていたのでつい。とても似合っていますよ」

 ミズキは褒められた事に少し照れてしまう。元々ミズキが身に付けていた仮面は昨日壊れてしまったので、今はススゥが新しく作り直してくれたものをつけていた。ミズキ的には前のとあまり変わってないように思えていたが、他の人から見るとそうでもないのかと内心ぼやくのであった。

「少々話し込んでしまいましたね。時間もあれですしそろそろ出発ましょうか」
「そうですね」

 ミズキは頷き、エスティ達と一緒に岩山のふもとの宿を出発した。


 岩山を登り始めて一時間程が経ち、やっと目的の場所へ辿り着いたミズキ達は、早速依頼の標的であるゴーレムの探索を始めた。

 しかし、いくら対象を探しても未だにゴーレムの姿が確認できない。とてもじゃないが依頼内容に記されていた大量発生の状態とは言えない。むしろ彼女達がよく知るいつも通りの岩山の状態だった。

「おかしいわね。情報じゃ大量発生しているはずなのに」

(確かに聞いていた話とは違い過ぎる。ススゥが言った通り何か起きてるのか……? 警戒しておかないと)

 ミズキは今まで無い以上に警戒レベルを上げて周囲に意識を向けた。すると、少しだが何か視線のようなもの、というより敵意に近いものを感じ、すぐに彼女達にそれを伝える。

「みなさん、止まってください。何かいます……」
「ダブルさん……??」
「なに言ってるのよ。なにもいないじゃない」

 ミズキが感じたそれに彼女達は気付いていなかったのだ。しかし、それは段々と強くなり確実にこちらに近づいて来ていたのだ。

「何かが起きてからでは遅いです‼︎ 構えてください‼︎」

 ミズキの放った言葉には怒気が含まれていた。彼女達はその言葉に気圧され、すぐに戦闘態勢に入る。

「よくわかりませんが、わかりました。ススゥ、アティをお願い」

(何かが起きるかもとは言ったけど——)
「——なんなのよ、もう!」

 彼女達からすると敵の魔力や気配をなにも感じていないため、ミズキの言葉に戸惑いまでは隠せないでいた。そこで、遠く離れた岩の向こうを注視し続けるミズキにエスティが問いかける。

「ダブルさん、あの岩の向こうに何かあるんですか?」
「わかりません。ですが、確かに向こうから何かを感じます」

 すると、アティが岩の向こうに指をさしながら、急に叫ぶ。

「——何か飛んできます‼︎」

 アティの示す方向、それはミズキが見ていた方向でもあり、そこの上空から得体の知れない何かが、凄い速さでこちらに向かって飛んできていた。

「防御魔法を——急いで‼︎」

 ミズキは叫ぶ。 

 が、とてもじゃないが間に合わない。

 それを瞬時に理解したミズキは、咄嗟に無詠唱で風魔法を使う。三人の中心に、人をも簡単に吹き飛ばすほどの風を発生させてその場からみんなを吹き飛ばした。

「——くっ‼︎」
「きゃぁ‼︎」

 先程立っていた場所には飛来物が着弾し、砂塵が舞い上がる。ミズキは回避後すぐに着弾物に対して構えていた。

(ゴーレムが飛んできた……?)
「すぐに立ってくださいっ‼︎ 次がきます‼︎」

 何が起きているのかわからない三人は恐怖に支配されていた。

「ダブルさん説明して下さい‼︎ 何が起きているんですか‼︎」
「一体なんだっていうのよ……」
「やだよぉ……ぅ……」

 怯える彼女達を見てミズキは自分を叱咤する。

(そうだ……彼女達は魔法が使えて強いけど、まだ14歳のただの女の子なんだ……)

 ダメだな……俺は……

 気付くとミズキの口から自然に溢れるように出ていた。

「今何が起きているかは俺にも分からない。だけど君達のことは必ず守る」
「ダブルさん……すみません……私、身体がうまく動きません……」

 エスティが感じている恐怖が、リンクしているせいかミズキの中に流れ込んでくる。

(それが普通だよエスティ……正直俺も一人だったら、恐怖に呑まれて動けなかった……ありがとう)

 そこへ、不意を突くかのように「ゴオオォォゥ!」と轟音を放ちながら地を這ってなにかが迫ってくる。

「うぅぅ、ススゥさんこの音なんですか……?」
「私に聞かれてもわからないわよ‼︎」

 怯えているアティにススゥが怒鳴る。ススゥはアティを連れてエスティの側に行こうとすると、自分の目を疑った。——エスティは全てを諦めた顔をしていたのだ。

 ススゥがその理由に気づいた時にはもう遅い。エスティの視線の先から巨大な炎が迫ってきていたのだ。

「こんなとこで……」

 ——ススゥ‼︎ アティを連れて俺の後ろにこい‼︎

「ミズキ……くっ‼︎」

 いつの間にか風を纏ったミズキが、エスティの前に立ち塞がっていた。ススゥはアティを連れてミズキの背後に回り込む。全員がミズキの後ろに揃ったところで、エスティから力の無い言葉が投げられた。

「ダブルさん……私……」
「大丈夫だ。ここを切り抜けて帰ろう」
「そうです‼︎ いつものエスティ様に戻ってください‼︎」

 エスティはグッと何かを堪える。

 不甲斐ない自分を見せてしまったこんな私を、それでもまだ信じてくれている。その期待に応えるためにもエスティは覚悟を決めた。

「ダブルさんこの子達を守ってください‼︎」
多重魔法マルチプルマジック土壁クレイウォール——‼︎」

 何重にもなる土の壁を作り、それが巨大な炎と衝突する。何度も衝突音を放ち、辺りが煙炎天えんえんてんみなぎった。

「ケホッ、ケホッ……ダブルさん……大丈夫で——っそんな‼︎」
「うそっ……ちょっとあんた………… 体が‼︎」

 今の攻撃でミズキは右半身を焼かれていたのだ。皮膚はただれ、肉が見えている部分もあり立っているのがやっとなのがわかる。幸い、焼けた部分は麻痺しているおかげで、ミズキにはもはや何が痛みなのか分からない状態だった。

「ハァ……ハァ……だい、じょうぶです……それより、ススゥ……アティは……」
「気を失ってるだけ。それよりもっ‼︎」
「そうか……なんとか守れたみたいだ……よかった」
「よくない‼︎ なによ……自分だけそんなにボロボロになって……」
「気にするな……約束だからな……」

 火が残る中、煙だけが晴れていく。その先から人の形をしているが明らかに人ではないものがこちらに向かってきていた。そして、それはあざ笑うかのように口を開いた。

「ほぉ、興味深いですね。本気ではないとはいえ、私の攻撃を防ぐ人間がいたとは。お見事です」
「今の攻撃は……お前が……?」
「いかにも! あの攻撃で焼き払ったと思っていたのですが残念です」

(こいつはヤバすぎる‼︎ 逃げなきゃ……)

「ススゥ、二人を連れて先に逃げてくれ。そしてこの事をコヒーさんに伝えるんだ」
「イヤよ——‼︎ あなたをおいて逃げるなんてできない……ぅ……」
「ススゥ‼︎ 約束しただろ……俺は大丈夫だから。エスティ、二人を頼む」
「わかったわ」

 エスティはなにもできない自分に唇を噛みしめる。そこから僅かに血が垂れていた。

「逃げるわよ‼︎」
「イヤッ‼︎ 離して‼︎」
「逃しはしませんよ?」

 ミズキを無視して火の玉が逃げる彼女達を襲う。

雷槍グロームスピア——‼︎」

 エスティの魔法が火の玉を貫き消滅させる。それを不快に思ったのか少し表情を崩しながらエスティを睨んだ。

「くらえっ風玉ウインドショット‼︎」
「おっと危ない、不意打ちとはいただけませんね」

 火柱をたてそれを簡単に防ぐと、細い目でミズキを睨んだ。

「俺を無視するなよ。それとも何か、逃げる奴しか恐くて相手ができないのか?」

 このままこちらに注意をそらさせようと、挑発するように言うと。乗ってきてくれたのかこちらに話しかけてきたのだ。

「フンッ、人にしてはなかなかやりますね。一応名前を聞いておきましょうか」
「ミズキだ。そっちは、人……じゃないな?」
「その通り。私は九曜の1人『ハースター・マプラープタ』といいます」

 ハースター・マプラープタと名乗った相手は、赤い目と黒い肌以外は殆ど人と変わらない見た目をしていたのだ。

「お話はこの辺にしましょうか、折角の獲物が逃げてしまいますし」

(流石に待ってはくれないか。でも、遠くまで逃げてくれたみたいだ。これでもう少しだけ時間を稼げば)

「さて、安心しているところすいませんが、彼女たちには死んでもらいます。私のとっておきですよ——火途クワズ!」

 ハースターが一閃した腕に同調する様に、赤い球体が出現する。パッと見て数百はくだらないだろう。ミズキはすぐさま風を纏い、上空に退避する。

 そして、一瞬で辺り一帯を覆う猛火がその球体から放たれた。それはまるで炎の津波だ。その大きさ、範囲を見て、すぐに理解する。逃げているエスティ達、いや、もしかしたらラバーズまで被害が及ぶかもしれないと。

 急いで彼女達の元へ向かうが、炎のせいで風の操作が上手くいかず、スピードが出ない。猛火の勢いの方が速く、次第に距離が離されていく。ミズキも必死に追いかけるが何も変わらない。
  
 ——くそぉ、どうすればっ……‼︎

 諦めかけたその時、ススゥとの約束が頭の中を過ぎる。弱くなった握り拳に強さが戻り、ミズキは何かを決心する。

 ——絶対に助けてやる‼︎
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