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#003 淑女の仮面と悪魔の囁き
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故郷の駅で見送られた両親の温かい声を背中に感じてから、数時間。乗り慣れない新幹線は、僕を再び巨大なコンクリート・ジャングルへと運び込んだ。太陽が空の真上でぎらぎらと輝き、アスファルトが陽炎を揺らしている。たった半日の移動だというのに、人混みと喧騒だけで僕の体力はすでに限界に近かった。
「……やっと、着いた……」
機術学園の敷地に戻ってきた僕は、一刻も早く自分の部屋に倒れ込みたい一心で、校舎から少し離れた学生寮へとふらつく足取りで向かった。白亜の壁が美しい、ホテルのようなモダンな建物が今日の僕の城だ。
「えーと……ここ、かな」
割り当てられた部屋番号のプレートを確認し、カードキーを差し込もうとして、手が止まる。ドアノブがわずかに動いたのだ。本来なら固く施錠されているはずの扉に、なぜか鍵がかかっていない。
——その時、気づくべきだったのだ。この些細な、しかし致命的な違和感に。長旅の疲労で思考力を奪われていた僕は、無防備にもそのままドアを開け放ってしまった。
「えっ……」
「あっ……」
そこに広がっていたのは、まさに少女の聖域だった。そして、その中心にいたのは、黒いレースの、少し大人びたランジェリーだけを身につけた一人の少女。まさに制服のブラウスを脱ぎ捨てた瞬間だったのだろう、滑らかな肩のラインから、同い年とは思えないほど豊かに膨らんだ胸の谷間までが、あまりにも無防備に晒されていた。
「す、すすすす、すみませんでしたっ! 部屋、間違えました!」
思考が真っ白になり、僕はコンマ1秒にも満たない速度で扉を閉め、背中をドアに叩きつける。心臓が肋骨を突き破るのではないかと思うほど激しく脈打っていた。
「い、いえ、こちらこそ……! 私《わたくし》ったら、朝ゴミを出しに行った帰りに鍵を掛け忘れていたみたいで……」
ドアの向こうから、か細くも凛とした声が聞こえ、やがてガチャンと内側から鍵が掛かる音がした。恐る恐る隣のプレートを見ると、そこには確かに自分の部屋番号が記されている。……完全に、僕のミスだった。
自分の部屋に転がり込み、ドアにもたれかかったまま、先ほどの光景を反芻する。
——陶器のように白い肌。芸術的な曲線を描くウエストライン。そして、黒いレースに縁どられた、圧倒的な質量を誇る双丘……。
そこまで考えて、はっと我に返る。今の僕は、誰がどう見ても「女の子」だ。この姿で良かった。もし元の男の姿で鉢合わせていたら、変質者と間違えられて警察沙汰になり、僕の学園生活は始まる前に終わっていただろう。
不本意ながら、零音先生の変態的な趣味に、心の底から感謝しなければならないようだ。
部屋の隅に積まれたダンボールの山を横目に、僕は備え付けのベッドへ身を投げ出した。スプリングが軋む音が、静かな部屋にやけに大きく響く。
入学式までは、まだ数日の猶予がある。荷解きをして、生活に慣れて……それから、この東京という街で、自分の「居場所」を探す。それが当面の目標になるのだろうか。
——自分の、居場所。
思えば中学時代、僕は常にそう感じていた。「ここには、僕の居場所はない」と。
小学生の頃からネットの世界にのめり込み、意識高い系の言説に影響されては「自分は周りの凡人とは違う特別な存在だ」と本気で信じ込んでいた。背伸びして難解な哲学書を読み漁り、都会のきらびやかな生活に憧れ、「必ず東京に出て可愛い女の子と結婚するんだ」と、誰にも言えない野望を抱いていた。
結果、僕は周囲から浮き上がり、孤立した。友達と呼べる人間は一人もおらず、部活も「馴れ合いは時間の無駄だ」と切り捨てた。その全てを、この機術学園に合格するためだけに捧げてきたのだ。
そして、その目的は——補欠合格という何とも締まらない形ではあったが——達成されてしまった。皮肉にも、僕は本当に「他人とは違う存在」になってしまったけれど。
「これからの、僕の目標かぁ……」
今まで、無理をして背伸びばかりしてきた。自分の「好き」が、何なのかもわからない。動画鑑賞はただの暇つぶしだし、読書だって、内容を語って周囲に「すごい」と思われるのが快感だっただけだ。
空っぽだ。僕の中身は、驚くほどに。
僕って、一体、何なんだろうな……。
そんな自己嫌悪の沼に沈みかけた、その時だった。唐突に、部屋のチャイムがけたたましく鳴り響いた。
思考を中断され、警戒心も薄れたままドアを開けた僕を、豊満で柔らかい衝撃が襲った。
「わぶっ!?」
「ハールくーんっ! 入学おめでとーっ! キミがこの学校に来てくれて、あたし、とーっても嬉しいわぁ~♡」
甘い香りと共に抱きしめられ、顔が例の柔らかい渓谷に埋まる。この感触には覚えがあった。
「ちょっ……! その声は、零音先生!? や、やめっ……息が……!」
「……で、ご用件はなんです?」
一通りスキンシップという名のセクハラを終えた零音先生は、満足げに僕のベッドに腰掛けていた。
「まだ入学式まで時間があるでしょ? だから、あたしがハルくんに学校のこととか、東京のこととか、その他もろもろを、い~っぱい教えてあげちゃおうかなって♡」
「……そうですか。僕一人でどうしようかと思っていたので、ありがたいです」
からかいの視線を受け流すと、零音先生は意外そうな顔をした。
「あら、素直。……とは言ってもね、あたし、普段から研究室に引きこもってるインドア派だから、東京のことなんてさっぱりなのよ」
「……え?」
「だからね、ハルくんの学校生活をサポートする『お目付け役』をとある子に頼んでおいたの。あたしの代わりに、東京観光にも付き合ってくれるわ。すっごい美人だから、ハルくんも絶対気に入るわよ~」
「お、お目付け役……?」
「もう入っていいわよ、杏那《あんな》」
先生の言葉に応じるように、静かにドアが開かれる。そこに立っていたのは——。
「はい、お邪魔いたします」
腰まで届く艶やかな黒髪。その両サイドを、まるで芸術品のように精巧ならせんで巻上げた、巨大なドリル型のツインテール。そして、零音先生にこそ劣るものの、制服の上からでもわかるほど豊満なスタイルの美少女。
「あら……」
「あっ……」
——さっき、着替え中に出くわしてしまった、あの少女だった。
「紹介するわ。漆館杏那。あたしの可愛い姪よ」
「漆館杏那、と申しますわ。こちらの美王先生は叔母にあたるのですが...こんな若々しいお方を叔母様呼ばわりするのも失礼に当たりますし、私はいつもお姉様、と呼んでおります」
「ふふっ、いつもありがとうね、杏那♡」
「あ、あの、はじめまして。七座晴人です。これから、よろしくお願いします……」
動揺を隠せないままぎこちなく挨拶をすると、杏那さんはくすくすと上品に笑ってみせた。
「はじめまして、だなんてご冗談を。今しがた、お会いしたばかりではございませんこと?」
「あら? そうだったの?」
「えぇ。先ほど、私がお着替えをしておりました時に、ちょうどそちらの……殿方? が、私の部屋へといらっしゃって」
「あっ! いや、そのっ! それは事故というか! 何かの間違いで!」
僕が必死に弁解する横で、零音先生がニヤニヤと実に楽しそうに口元を歪めるのが見えた。
「なっ……! なんで言っちゃうんですか……! 零音先生の性格、知ってるでしょう!?」
杏那さんに小声で抗議するが、彼女は優雅に微笑むだけだった。その瞳の奥は、全く笑っていない。
「あら? 私だけ下着姿を見られっぱなしでは、不公平ではございませんこと? こうして貴方の恥ずかしい秘密を暴かせてもらって、ようやく『おあいこ』というものではなくて?」
この人、絶対性格悪い……!
「それにしても、零音お姉様からお話は伺っておりましたが……本当に、男性とは思えないほど可憐な出で立ちですのね。お姉様が惚れ込んでしまうのも頷けますわ」
「……」
「ところで、男性だとわかった上でお聞きしますけれど。私の裸体をご覧になった感想は、何かございませんこと?」
「えっ! いや、あの、それはパニックで、ちゃんと見てないというか、覚えてないというか……!」
「まぁ……。では、私のこの自慢の『おっぱい』についても、ご感想はない、と?」
「お、おお、おっ、おっぱ!?」
お嬢様然とした上品な口調から飛び出した、あまりにも直接的な単語に僕の思考はショートする。その隙を逃さず、杏那さんは僕の体にその豊満な胸をぐりぐりと押し付けてきた。柔らかくも弾力のある感触が、薄いブラウス越しに伝わってくる。
「あぁ……もしかして、お姉様のわがままボディを見慣れてしまったせいで、私のような貧相な体では、興奮のひとつもなさいませんか?」
「ひ、貧相!? いえいえ滅相もございません! つい先日まで中学生だったとは思えぬ、大変ご立派な肢体でいらっしゃいます!」
「ふふっ♡ そうですわよね。上から98・56・91、Iカップを誇るこの肉体が、貧相なわけ……」
「あ、Iカップ! 僕と同い年で!?」
「あらあら、声に出てしまって♡ 興奮しすぎですわよ、晴人さん♡」
杏那さんは、追い打ちをかけるように耳元で囁く。
「ち・な・み・に……まだ15歳。成長期の真っ只中ゆえ、今も絶賛、成長中でしてよ♡」
「ぜっ……ぜっさんせいちょうちゅう……!」
まずい。まずいまずいまずい。想像力が、僕の意思を裏切って暴走する……!
「あらあら~? なんだか、スカートの一部分がこんもりと盛り上がっているみたいだけど~?」
零音先生の指摘に、僕ははっと我に返る。しまった! この体は正直すぎる!
「本当ですわね……。こんなに可愛い女の子のスカートが盛り上がるなんて、一体どういう仕組みなのでしょう……」
「ちょ、ちょっと待っ! そこに触るのは……はひぃんっ!?」
「おかしいわねぇ~? 男の子ならともかく、『こんなに可愛い女の子』が、こんなにカチカチになるなんて~」
「おかしいですわねぇ~? 本当に♡」
「ちょっ、まっ、やめっ……あああ~~っ……♡」
その後しばらく、全てを承知の上で僕をからかう二人の美女によって、僕は身も心も弄ばれ続けたのだった……。
「……やっと、着いた……」
機術学園の敷地に戻ってきた僕は、一刻も早く自分の部屋に倒れ込みたい一心で、校舎から少し離れた学生寮へとふらつく足取りで向かった。白亜の壁が美しい、ホテルのようなモダンな建物が今日の僕の城だ。
「えーと……ここ、かな」
割り当てられた部屋番号のプレートを確認し、カードキーを差し込もうとして、手が止まる。ドアノブがわずかに動いたのだ。本来なら固く施錠されているはずの扉に、なぜか鍵がかかっていない。
——その時、気づくべきだったのだ。この些細な、しかし致命的な違和感に。長旅の疲労で思考力を奪われていた僕は、無防備にもそのままドアを開け放ってしまった。
「えっ……」
「あっ……」
そこに広がっていたのは、まさに少女の聖域だった。そして、その中心にいたのは、黒いレースの、少し大人びたランジェリーだけを身につけた一人の少女。まさに制服のブラウスを脱ぎ捨てた瞬間だったのだろう、滑らかな肩のラインから、同い年とは思えないほど豊かに膨らんだ胸の谷間までが、あまりにも無防備に晒されていた。
「す、すすすす、すみませんでしたっ! 部屋、間違えました!」
思考が真っ白になり、僕はコンマ1秒にも満たない速度で扉を閉め、背中をドアに叩きつける。心臓が肋骨を突き破るのではないかと思うほど激しく脈打っていた。
「い、いえ、こちらこそ……! 私《わたくし》ったら、朝ゴミを出しに行った帰りに鍵を掛け忘れていたみたいで……」
ドアの向こうから、か細くも凛とした声が聞こえ、やがてガチャンと内側から鍵が掛かる音がした。恐る恐る隣のプレートを見ると、そこには確かに自分の部屋番号が記されている。……完全に、僕のミスだった。
自分の部屋に転がり込み、ドアにもたれかかったまま、先ほどの光景を反芻する。
——陶器のように白い肌。芸術的な曲線を描くウエストライン。そして、黒いレースに縁どられた、圧倒的な質量を誇る双丘……。
そこまで考えて、はっと我に返る。今の僕は、誰がどう見ても「女の子」だ。この姿で良かった。もし元の男の姿で鉢合わせていたら、変質者と間違えられて警察沙汰になり、僕の学園生活は始まる前に終わっていただろう。
不本意ながら、零音先生の変態的な趣味に、心の底から感謝しなければならないようだ。
部屋の隅に積まれたダンボールの山を横目に、僕は備え付けのベッドへ身を投げ出した。スプリングが軋む音が、静かな部屋にやけに大きく響く。
入学式までは、まだ数日の猶予がある。荷解きをして、生活に慣れて……それから、この東京という街で、自分の「居場所」を探す。それが当面の目標になるのだろうか。
——自分の、居場所。
思えば中学時代、僕は常にそう感じていた。「ここには、僕の居場所はない」と。
小学生の頃からネットの世界にのめり込み、意識高い系の言説に影響されては「自分は周りの凡人とは違う特別な存在だ」と本気で信じ込んでいた。背伸びして難解な哲学書を読み漁り、都会のきらびやかな生活に憧れ、「必ず東京に出て可愛い女の子と結婚するんだ」と、誰にも言えない野望を抱いていた。
結果、僕は周囲から浮き上がり、孤立した。友達と呼べる人間は一人もおらず、部活も「馴れ合いは時間の無駄だ」と切り捨てた。その全てを、この機術学園に合格するためだけに捧げてきたのだ。
そして、その目的は——補欠合格という何とも締まらない形ではあったが——達成されてしまった。皮肉にも、僕は本当に「他人とは違う存在」になってしまったけれど。
「これからの、僕の目標かぁ……」
今まで、無理をして背伸びばかりしてきた。自分の「好き」が、何なのかもわからない。動画鑑賞はただの暇つぶしだし、読書だって、内容を語って周囲に「すごい」と思われるのが快感だっただけだ。
空っぽだ。僕の中身は、驚くほどに。
僕って、一体、何なんだろうな……。
そんな自己嫌悪の沼に沈みかけた、その時だった。唐突に、部屋のチャイムがけたたましく鳴り響いた。
思考を中断され、警戒心も薄れたままドアを開けた僕を、豊満で柔らかい衝撃が襲った。
「わぶっ!?」
「ハールくーんっ! 入学おめでとーっ! キミがこの学校に来てくれて、あたし、とーっても嬉しいわぁ~♡」
甘い香りと共に抱きしめられ、顔が例の柔らかい渓谷に埋まる。この感触には覚えがあった。
「ちょっ……! その声は、零音先生!? や、やめっ……息が……!」
「……で、ご用件はなんです?」
一通りスキンシップという名のセクハラを終えた零音先生は、満足げに僕のベッドに腰掛けていた。
「まだ入学式まで時間があるでしょ? だから、あたしがハルくんに学校のこととか、東京のこととか、その他もろもろを、い~っぱい教えてあげちゃおうかなって♡」
「……そうですか。僕一人でどうしようかと思っていたので、ありがたいです」
からかいの視線を受け流すと、零音先生は意外そうな顔をした。
「あら、素直。……とは言ってもね、あたし、普段から研究室に引きこもってるインドア派だから、東京のことなんてさっぱりなのよ」
「……え?」
「だからね、ハルくんの学校生活をサポートする『お目付け役』をとある子に頼んでおいたの。あたしの代わりに、東京観光にも付き合ってくれるわ。すっごい美人だから、ハルくんも絶対気に入るわよ~」
「お、お目付け役……?」
「もう入っていいわよ、杏那《あんな》」
先生の言葉に応じるように、静かにドアが開かれる。そこに立っていたのは——。
「はい、お邪魔いたします」
腰まで届く艶やかな黒髪。その両サイドを、まるで芸術品のように精巧ならせんで巻上げた、巨大なドリル型のツインテール。そして、零音先生にこそ劣るものの、制服の上からでもわかるほど豊満なスタイルの美少女。
「あら……」
「あっ……」
——さっき、着替え中に出くわしてしまった、あの少女だった。
「紹介するわ。漆館杏那。あたしの可愛い姪よ」
「漆館杏那、と申しますわ。こちらの美王先生は叔母にあたるのですが...こんな若々しいお方を叔母様呼ばわりするのも失礼に当たりますし、私はいつもお姉様、と呼んでおります」
「ふふっ、いつもありがとうね、杏那♡」
「あ、あの、はじめまして。七座晴人です。これから、よろしくお願いします……」
動揺を隠せないままぎこちなく挨拶をすると、杏那さんはくすくすと上品に笑ってみせた。
「はじめまして、だなんてご冗談を。今しがた、お会いしたばかりではございませんこと?」
「あら? そうだったの?」
「えぇ。先ほど、私がお着替えをしておりました時に、ちょうどそちらの……殿方? が、私の部屋へといらっしゃって」
「あっ! いや、そのっ! それは事故というか! 何かの間違いで!」
僕が必死に弁解する横で、零音先生がニヤニヤと実に楽しそうに口元を歪めるのが見えた。
「なっ……! なんで言っちゃうんですか……! 零音先生の性格、知ってるでしょう!?」
杏那さんに小声で抗議するが、彼女は優雅に微笑むだけだった。その瞳の奥は、全く笑っていない。
「あら? 私だけ下着姿を見られっぱなしでは、不公平ではございませんこと? こうして貴方の恥ずかしい秘密を暴かせてもらって、ようやく『おあいこ』というものではなくて?」
この人、絶対性格悪い……!
「それにしても、零音お姉様からお話は伺っておりましたが……本当に、男性とは思えないほど可憐な出で立ちですのね。お姉様が惚れ込んでしまうのも頷けますわ」
「……」
「ところで、男性だとわかった上でお聞きしますけれど。私の裸体をご覧になった感想は、何かございませんこと?」
「えっ! いや、あの、それはパニックで、ちゃんと見てないというか、覚えてないというか……!」
「まぁ……。では、私のこの自慢の『おっぱい』についても、ご感想はない、と?」
「お、おお、おっ、おっぱ!?」
お嬢様然とした上品な口調から飛び出した、あまりにも直接的な単語に僕の思考はショートする。その隙を逃さず、杏那さんは僕の体にその豊満な胸をぐりぐりと押し付けてきた。柔らかくも弾力のある感触が、薄いブラウス越しに伝わってくる。
「あぁ……もしかして、お姉様のわがままボディを見慣れてしまったせいで、私のような貧相な体では、興奮のひとつもなさいませんか?」
「ひ、貧相!? いえいえ滅相もございません! つい先日まで中学生だったとは思えぬ、大変ご立派な肢体でいらっしゃいます!」
「ふふっ♡ そうですわよね。上から98・56・91、Iカップを誇るこの肉体が、貧相なわけ……」
「あ、Iカップ! 僕と同い年で!?」
「あらあら、声に出てしまって♡ 興奮しすぎですわよ、晴人さん♡」
杏那さんは、追い打ちをかけるように耳元で囁く。
「ち・な・み・に……まだ15歳。成長期の真っ只中ゆえ、今も絶賛、成長中でしてよ♡」
「ぜっ……ぜっさんせいちょうちゅう……!」
まずい。まずいまずいまずい。想像力が、僕の意思を裏切って暴走する……!
「あらあら~? なんだか、スカートの一部分がこんもりと盛り上がっているみたいだけど~?」
零音先生の指摘に、僕ははっと我に返る。しまった! この体は正直すぎる!
「本当ですわね……。こんなに可愛い女の子のスカートが盛り上がるなんて、一体どういう仕組みなのでしょう……」
「ちょ、ちょっと待っ! そこに触るのは……はひぃんっ!?」
「おかしいわねぇ~? 男の子ならともかく、『こんなに可愛い女の子』が、こんなにカチカチになるなんて~」
「おかしいですわねぇ~? 本当に♡」
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