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#011 平凡と非凡の境界線
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「――それでは、皆様のこれからのご健勝を、心よりお祈りしております」
凛としながらも、どこか包み込むような優しさを感じさせる声が、荘厳な講堂に響き渡る。壇上で優雅に一礼したのは、既に見知った顔――機術学園生徒会長、玖代静葉その人だ。彼女の祝辞が終わると、会場を埋め尽くす新入生たちから割れんばかりの拍手が送られた。その横に並んでいた副会長の肆谷龍弥をはじめとする三人の生徒会メンバーも、会長に続いて壇上を降り、舞台袖へと戻っていった。
最先端の科学技術を学ぶエリート校とはいえ、入学式の雰囲気はごく普通の高校と大差ない。ただ、校長の式辞の端々に『次代を担う機術師としての心構え』といった言葉が散りばめられているあたりが、この学園の特殊性を物語っていた。
ホームルームのため教室に戻ると、真新しい空間には期待と少しの緊張が入り混じった空気が漂っていた。やがて、扉が開いて一人の男性教師が入ってくる。
「はじめまして。僕がこのクラスの担任を受け持つことになった一色優一郎です。担当は水魔法なので、もし同じ授業になったらよろしくね」
柔和な笑みを浮かべた、いかにも人畜無害といった印象の青年だ。年齢は二十代半ばだろうか。その瞬間、教室の空気が二つに割れた。
「えー、うちのクラス担任、男かよー」
「なんでよりによって2組の先生なんだよ。あんな名前に『一』って入ってるくせにさ」
男子生徒たちの露骨な落胆の声が、教室のあちこちから聞こえてくる。それとは対照的に、
「きゃっ、優しそう! 私、結構タイプかも!」
「やった! このクラスで良かったー!」
女子生徒たちの色めき立った歓声が交錯する。僕の隣の席では、完璧なお嬢様がくすりと優雅に口元を綻ばせた。
「クラス担任が麗しい女性ではなくて、残念でしたわね、晴人さん」
「別に? 僕の周りには杏那さんや美王先生がいるから、それで十分だよ」
「あら……ふふっ」
意味ありげに微笑む杏那さんの軽口をいなしつつ、僕は教壇に立つ一色先生の話に耳を傾ける。彼女と同じクラスになれたのは、幸運だったと言うべきだろう。この先、何かと頼りにさせてもらうことは間違いないのだから。
式の後の自由時間。それは、案の定というべき喧騒の幕開けだった。
「ねぇねぇ! あなたが七座晴人くんでしょ!? あの、男の子なのに女の子の制服を着てるっていう!」
「もう自分の機術を決めて、二回も実戦を経験したって本当!? すごい!」
「しかも、あの肆谷副会長と並んで戦ったって聞いたよ!? かっこいー!」
あっという間に、好奇心に満ちたクラスの女子生徒たちに囲まれてしまった。キラキラした視線と質問の雨に晒され、どうしたものかと立ち尽くす僕の腕を、すっと伸びてきたしなやかな手が掴む。
「皆さん、少し落ち着いてくださいな。さ、晴人さん、行きますわよ」
有無を言わさぬ力強さで僕を人垣から引き剥がしたのは、もちろん杏那さんだ。
「あっ、ちょっと待ってよ、漆館さん!」
「もー、まだ話したいことあったのにー!」
背後から浴びせられる女子たちの名残惜しそうな声を振り切ってくれるのはありがたい。だが、問題は彼女たちだけではない。教室の隅でこちらを窺う男子生徒たちの視線は、好奇心とは質の違う、もっと粘着質で棘のあるものだった。
「……おい、見たかよ、あの七座ってやつ。本来なら不合格だったくせに、特別推薦で入ったって噂だぜ」
「ああ、しかも推薦したのが、あの淫乱ドスケベ教師の美王零音だろ? どんだけ羨ましいんだよ……」
「おまけに、あの完璧ご令嬢の漆館杏那がお目付け役だもんな。前世でどんな徳を積んだら、あんなハーレム待遇受けられるんだか」
「……でもよ、お前、あんな女装してまでこの学園に来たいか?」
「いや、まぁ……それは……うん……」
「そこすらもはや羨ましいんだよな。俺たちが女装したところで、ゲテモノ間違いなしだってのに。あいつ、顔が可愛いから普通に似合ってやがる……」
「「「はぁ~あ……」」」
嫉妬と侮蔑、そしてほんの少しの羨望が混じった視線が、背中に突き刺さるようで居心地が悪い。僕は、どこへ行っても異質な存在として見られる運命なのかもしれない。
ただ、そんな男子生徒たちの中に、以前話をした鍔井真角くんの姿を見つけたのは、せめてもの救いだった。彼は無表情でこちらを一瞥しただけで、すぐに手元の分厚い専門書に視線を戻していた。全員が敵というわけではなさそうだ。
入学から一週間が過ぎた。それまでは学園の歴史や機術師としての基礎知識を学ぶオリエンテーション期間だったが、ようやく正規の授業が始まった。配られた時間割を見て、僕は思わず顔をしかめる。やたらと理系科目が多いのだ。特に物理に至っては、週に四回も組み込まれている。これは……かなり厳しい戦いになりそうだ。早々に杏那さんや美王先生、そして鍔井くんを頼ることを心に決めた。
そんな中でひときわ目を引くのが、週に三回設けられた『機術』の実技授業だった。そして今日、火曜の四限目。僕たちは広大な訓練場にいた。
「――ファイアシュート!」
掛け声と共に、生徒の手のひらから放たれた火球が、前方の的へと吸い込まれていく。訓練場では、三人の監督教官が見守る中、生徒たちが思い思いに基礎的な機術の特訓に励んでいた。
この学園では、一年生のうちに様々な属性の機術に触れ、二年次に進級する際に専門とする属性を選ぶ、文理選択のような制度が採られているらしい。
ちなみに、高度な物理知識を要するものや、制御の難易度、そして危険性が高い機術は、専門課程に進む際の受け入れ人数も限られるという。僕がこれから扱う『磁力』や、杏那さんが用いる『重力』などはその筆頭で、ごく一握りの生徒しか選択できないそうだ。多くの生徒は、比較的習得しやすい炎、水、風、電気といった四大元素系の攻撃手段だけを身につけて卒業していくのだと、以前、肆谷副会長が教えてくれた。『どんな恵まれた環境にいようと、努力を怠れば結局は凡人で終わる』。彼女の言葉は、この現実を指していたのだろう。
僕は既に美王先生という強力な後ろ盾があるため、進路はほぼ確定しているようなものだ。しかし、だからといって他の機術の訓練を疎かにするわけにはいかない。あらゆる機術の特性を理解しておくことは、将来、それらの使い手と対峙した際の対策にも繋がるはずだ。
意識を集中させ、体内の魔力を練り上げる。手のひらにじんわりとした熱が灯り、赤い光が球体を形作る。それを慎重にコントロールし、的の中心へと放った。僕の放った火球は、寸分の狂いもなく的のど真ん中を撃ち抜き、周囲から「おぉ……」と小さな感嘆の声が漏れた。どうやら、機術の基本的な才能は、僕にも備わっているらしい。
入学から三週間が経った。桜の花びらが散り、風が新緑の香りを運んでくる頃になると、僕の周りの環境も少しずつ落ち着いてきた。あれほど僕にまとわりついていた女子生徒たちも、僕を遠巻きに妬んでいた男子生徒たちも、それぞれが新たな友人関係を築き始め、学園生活に溶け込んでいった。
多くの新入生は部活動にも精を出し、思い思いの青春を謳歌しようとしている。機術を完全に封印して野球やサッカーに打ち込む運動部もあれば、機術を戦術に組み込んだ特殊なスポーツ部も人気らしい。
そして、僕が所属することになったのは――機術研究部。
その名の通り、部員が主体となって独自の機術研究を行うアカデミックな部活だ。将来、機術開発の分野に進みたいという意識の高い生徒も多く、文化部の中ではそれなりに人気がある。そのために顧問の先生も数多く存在し、それぞれの好みに合わせて先生を選ぶといった形になっている。遠くに目をやればうちのクラスの一色先生の姿もあった。そしてこの部活には、当然のように杏那さんと、そして鍔井くんも所属していた。
となれば、僕らの担当顧問が誰になるかは言うまでもない。
「あ、そうだハルくん。前に言ってた磁力属性のナイフ、ついに完成したのよ~」
放課後の部室。白衣を翻し、満面の笑みで僕に二本のナイフを差し出したのは、顧問の美王零音先生だった。
「名付けて『双極』! 赤と青の二本一対の特殊ナイフよ。これに合わせて、ハルくんが元々持ってた二本のナイフの柄も、同じ赤と青に塗り直しておいたわ。『双極』の柄にあるスイッチを入れれば、それぞれの色が連動して動くの。ハルくんが赤い柄のナイフを振れば、『双極』の赤いナイフも同じ軌道を描く。青も然り。これで杏那ちゃんがいなくても、一人で十分に戦えるようになるわね!」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、先生!」
「いーえ、礼には及ばないわよ。ああ、そうだ。この調整には鍔井くんにも協力してもらったから、彼にもちゃんとお礼を言ってね」
「うん! 鍔井くん、ありがとう!」
「……礼を言われるほどのことでは。僕は先生の理論にいくつか補足をしただけですから」
僕の感謝の言葉に、鍔井くんは表情一つ変えずに淡々と答える。
「しかし、やはり磁力を扱う以上、物理の知識は不可欠です。七座さんは、先日の力学の小テストの成績が芳しくなかったようですが……」
「うっ……物理は、ちょっと苦手で……。理科は化学とかなら、まだマシなんだけどなあ……」
「力学はすべての物理学の基礎ですわ。ここで躓いてしまっては、専門となる電磁気学は勿論、熱力学も波動力学も理解が難しくなりますわよ。私たちがついていますから、覚悟を決めて頑張りなさいな」
「は、はい……よろしくご指導お願いします……」
杏那さんの容赦ない正論に、僕は項垂れた。部活動にも入り、僕の学園生活は少しだけ賑やかさを増した。しかし、浮かれてばかりもいられない。美王先生から授けられた新たな力、磁力操作ナイフ『双極』を早く使いこなせるようにならなければならないのだ。
凛としながらも、どこか包み込むような優しさを感じさせる声が、荘厳な講堂に響き渡る。壇上で優雅に一礼したのは、既に見知った顔――機術学園生徒会長、玖代静葉その人だ。彼女の祝辞が終わると、会場を埋め尽くす新入生たちから割れんばかりの拍手が送られた。その横に並んでいた副会長の肆谷龍弥をはじめとする三人の生徒会メンバーも、会長に続いて壇上を降り、舞台袖へと戻っていった。
最先端の科学技術を学ぶエリート校とはいえ、入学式の雰囲気はごく普通の高校と大差ない。ただ、校長の式辞の端々に『次代を担う機術師としての心構え』といった言葉が散りばめられているあたりが、この学園の特殊性を物語っていた。
ホームルームのため教室に戻ると、真新しい空間には期待と少しの緊張が入り混じった空気が漂っていた。やがて、扉が開いて一人の男性教師が入ってくる。
「はじめまして。僕がこのクラスの担任を受け持つことになった一色優一郎です。担当は水魔法なので、もし同じ授業になったらよろしくね」
柔和な笑みを浮かべた、いかにも人畜無害といった印象の青年だ。年齢は二十代半ばだろうか。その瞬間、教室の空気が二つに割れた。
「えー、うちのクラス担任、男かよー」
「なんでよりによって2組の先生なんだよ。あんな名前に『一』って入ってるくせにさ」
男子生徒たちの露骨な落胆の声が、教室のあちこちから聞こえてくる。それとは対照的に、
「きゃっ、優しそう! 私、結構タイプかも!」
「やった! このクラスで良かったー!」
女子生徒たちの色めき立った歓声が交錯する。僕の隣の席では、完璧なお嬢様がくすりと優雅に口元を綻ばせた。
「クラス担任が麗しい女性ではなくて、残念でしたわね、晴人さん」
「別に? 僕の周りには杏那さんや美王先生がいるから、それで十分だよ」
「あら……ふふっ」
意味ありげに微笑む杏那さんの軽口をいなしつつ、僕は教壇に立つ一色先生の話に耳を傾ける。彼女と同じクラスになれたのは、幸運だったと言うべきだろう。この先、何かと頼りにさせてもらうことは間違いないのだから。
式の後の自由時間。それは、案の定というべき喧騒の幕開けだった。
「ねぇねぇ! あなたが七座晴人くんでしょ!? あの、男の子なのに女の子の制服を着てるっていう!」
「もう自分の機術を決めて、二回も実戦を経験したって本当!? すごい!」
「しかも、あの肆谷副会長と並んで戦ったって聞いたよ!? かっこいー!」
あっという間に、好奇心に満ちたクラスの女子生徒たちに囲まれてしまった。キラキラした視線と質問の雨に晒され、どうしたものかと立ち尽くす僕の腕を、すっと伸びてきたしなやかな手が掴む。
「皆さん、少し落ち着いてくださいな。さ、晴人さん、行きますわよ」
有無を言わさぬ力強さで僕を人垣から引き剥がしたのは、もちろん杏那さんだ。
「あっ、ちょっと待ってよ、漆館さん!」
「もー、まだ話したいことあったのにー!」
背後から浴びせられる女子たちの名残惜しそうな声を振り切ってくれるのはありがたい。だが、問題は彼女たちだけではない。教室の隅でこちらを窺う男子生徒たちの視線は、好奇心とは質の違う、もっと粘着質で棘のあるものだった。
「……おい、見たかよ、あの七座ってやつ。本来なら不合格だったくせに、特別推薦で入ったって噂だぜ」
「ああ、しかも推薦したのが、あの淫乱ドスケベ教師の美王零音だろ? どんだけ羨ましいんだよ……」
「おまけに、あの完璧ご令嬢の漆館杏那がお目付け役だもんな。前世でどんな徳を積んだら、あんなハーレム待遇受けられるんだか」
「……でもよ、お前、あんな女装してまでこの学園に来たいか?」
「いや、まぁ……それは……うん……」
「そこすらもはや羨ましいんだよな。俺たちが女装したところで、ゲテモノ間違いなしだってのに。あいつ、顔が可愛いから普通に似合ってやがる……」
「「「はぁ~あ……」」」
嫉妬と侮蔑、そしてほんの少しの羨望が混じった視線が、背中に突き刺さるようで居心地が悪い。僕は、どこへ行っても異質な存在として見られる運命なのかもしれない。
ただ、そんな男子生徒たちの中に、以前話をした鍔井真角くんの姿を見つけたのは、せめてもの救いだった。彼は無表情でこちらを一瞥しただけで、すぐに手元の分厚い専門書に視線を戻していた。全員が敵というわけではなさそうだ。
入学から一週間が過ぎた。それまでは学園の歴史や機術師としての基礎知識を学ぶオリエンテーション期間だったが、ようやく正規の授業が始まった。配られた時間割を見て、僕は思わず顔をしかめる。やたらと理系科目が多いのだ。特に物理に至っては、週に四回も組み込まれている。これは……かなり厳しい戦いになりそうだ。早々に杏那さんや美王先生、そして鍔井くんを頼ることを心に決めた。
そんな中でひときわ目を引くのが、週に三回設けられた『機術』の実技授業だった。そして今日、火曜の四限目。僕たちは広大な訓練場にいた。
「――ファイアシュート!」
掛け声と共に、生徒の手のひらから放たれた火球が、前方の的へと吸い込まれていく。訓練場では、三人の監督教官が見守る中、生徒たちが思い思いに基礎的な機術の特訓に励んでいた。
この学園では、一年生のうちに様々な属性の機術に触れ、二年次に進級する際に専門とする属性を選ぶ、文理選択のような制度が採られているらしい。
ちなみに、高度な物理知識を要するものや、制御の難易度、そして危険性が高い機術は、専門課程に進む際の受け入れ人数も限られるという。僕がこれから扱う『磁力』や、杏那さんが用いる『重力』などはその筆頭で、ごく一握りの生徒しか選択できないそうだ。多くの生徒は、比較的習得しやすい炎、水、風、電気といった四大元素系の攻撃手段だけを身につけて卒業していくのだと、以前、肆谷副会長が教えてくれた。『どんな恵まれた環境にいようと、努力を怠れば結局は凡人で終わる』。彼女の言葉は、この現実を指していたのだろう。
僕は既に美王先生という強力な後ろ盾があるため、進路はほぼ確定しているようなものだ。しかし、だからといって他の機術の訓練を疎かにするわけにはいかない。あらゆる機術の特性を理解しておくことは、将来、それらの使い手と対峙した際の対策にも繋がるはずだ。
意識を集中させ、体内の魔力を練り上げる。手のひらにじんわりとした熱が灯り、赤い光が球体を形作る。それを慎重にコントロールし、的の中心へと放った。僕の放った火球は、寸分の狂いもなく的のど真ん中を撃ち抜き、周囲から「おぉ……」と小さな感嘆の声が漏れた。どうやら、機術の基本的な才能は、僕にも備わっているらしい。
入学から三週間が経った。桜の花びらが散り、風が新緑の香りを運んでくる頃になると、僕の周りの環境も少しずつ落ち着いてきた。あれほど僕にまとわりついていた女子生徒たちも、僕を遠巻きに妬んでいた男子生徒たちも、それぞれが新たな友人関係を築き始め、学園生活に溶け込んでいった。
多くの新入生は部活動にも精を出し、思い思いの青春を謳歌しようとしている。機術を完全に封印して野球やサッカーに打ち込む運動部もあれば、機術を戦術に組み込んだ特殊なスポーツ部も人気らしい。
そして、僕が所属することになったのは――機術研究部。
その名の通り、部員が主体となって独自の機術研究を行うアカデミックな部活だ。将来、機術開発の分野に進みたいという意識の高い生徒も多く、文化部の中ではそれなりに人気がある。そのために顧問の先生も数多く存在し、それぞれの好みに合わせて先生を選ぶといった形になっている。遠くに目をやればうちのクラスの一色先生の姿もあった。そしてこの部活には、当然のように杏那さんと、そして鍔井くんも所属していた。
となれば、僕らの担当顧問が誰になるかは言うまでもない。
「あ、そうだハルくん。前に言ってた磁力属性のナイフ、ついに完成したのよ~」
放課後の部室。白衣を翻し、満面の笑みで僕に二本のナイフを差し出したのは、顧問の美王零音先生だった。
「名付けて『双極』! 赤と青の二本一対の特殊ナイフよ。これに合わせて、ハルくんが元々持ってた二本のナイフの柄も、同じ赤と青に塗り直しておいたわ。『双極』の柄にあるスイッチを入れれば、それぞれの色が連動して動くの。ハルくんが赤い柄のナイフを振れば、『双極』の赤いナイフも同じ軌道を描く。青も然り。これで杏那ちゃんがいなくても、一人で十分に戦えるようになるわね!」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、先生!」
「いーえ、礼には及ばないわよ。ああ、そうだ。この調整には鍔井くんにも協力してもらったから、彼にもちゃんとお礼を言ってね」
「うん! 鍔井くん、ありがとう!」
「……礼を言われるほどのことでは。僕は先生の理論にいくつか補足をしただけですから」
僕の感謝の言葉に、鍔井くんは表情一つ変えずに淡々と答える。
「しかし、やはり磁力を扱う以上、物理の知識は不可欠です。七座さんは、先日の力学の小テストの成績が芳しくなかったようですが……」
「うっ……物理は、ちょっと苦手で……。理科は化学とかなら、まだマシなんだけどなあ……」
「力学はすべての物理学の基礎ですわ。ここで躓いてしまっては、専門となる電磁気学は勿論、熱力学も波動力学も理解が難しくなりますわよ。私たちがついていますから、覚悟を決めて頑張りなさいな」
「は、はい……よろしくご指導お願いします……」
杏那さんの容赦ない正論に、僕は項垂れた。部活動にも入り、僕の学園生活は少しだけ賑やかさを増した。しかし、浮かれてばかりもいられない。美王先生から授けられた新たな力、磁力操作ナイフ『双極』を早く使いこなせるようにならなければならないのだ。
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