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第二章「生き写しの術」
第三話「名もなき咒(じゅ)」
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両国の朝は、いつになく騒がしかった。
紙問屋・喜兵衛の屋敷に使いの者が駆け込んだのは、まだ朝餉の支度も済まぬ時刻だった。蒼ざめた顔で伝えられたのは、喜兵衛の商い仲間、尾崎屋清太郎が自宅で急死したという報せだった。
榊原新右衛門は、その話を聞いたとき、すでに心のどこかで予感していた。灯籠に浮かんだ顔と死者。因果は繰り返されている。
「また……写ったのか?」
喜兵衛は頷いた。「今朝、番頭が川沿いを通った際に、灯籠の一つに見覚えのある顔があったと申しておりました。……清太郎の顔だったと」
新右衛門は、昨夜見たおはるの灯籠を思い出した。火の色、そして手の影──それらは未練と哀しみ、そして何か強い意志によって繋ぎ止められていた。
「清太郎は……何か、心当たりが?」
喜兵衛は目を伏せた。「……昔、あの子と揉めたことがありました。灯籠を納める約束を、一方的に破ったことが」
「“あの子”とは……おはるか」
「ええ。だが、まさか、そんなことで……」
新右衛門はふと、おはるの部屋のことが気にかかった。彼女が密かに作っていた無数の灯籠。その材料を保管していた場所には、何か痕跡が残っているのではないか。
その日、文吉の許しを得て、おはるの部屋に踏み込んだ。
そこは薄暗く、窓の障子は閉め切られ、灯りもともっていなかった。だが、空気は妙に湿っていた。湿気ではない。沈殿するような、重たい気配が空間を満たしていた。
「……これは、祈りの部屋じゃない。呪いの場だ」
おせんがつぶやいた。新右衛門の隣に、ひっそりと立っていた。
畳の一隅に積まれていた紙束。その中に、新右衛門は異様な感触を覚えた。
紙の間に挟まれていたのは、細く切られた髪の毛。一本、二本ではない。束になっている。それぞれに名前が記されていた。
「……これが“生霊写し”か」
声の主は、入口に現れた修験者・道明だった。
「名と髪。対象の“因縁”を媒介にして灯籠に写す。だが……これは、おはるの力じゃない」
「……どういう意味だ」
「これだけの呪法を正確に重ねるには、術者としての熟練と、何より“動機”がいる。おはるは憎んではいても、呪う理由には足らぬ」
新右衛門が紙束を持ち上げると、下からもう一枚、古びた半紙が現れた。
そこには、朱墨で奇妙な印が書かれていた。
「……印が、動いている」
目の錯覚ではない。印の線が、まるで虫が這うようにわずかに揺れていた。
「これは、“借り咒”だ」
道明の声が硬くなった。「自らの意志ではなく、誰かの咒を“請け負う”形の呪法だ。……この部屋、おはるは一人で使っていたか?」
「文吉は、そう聞いている。……ただ、親父の祭壇だけは、誰も動かしていない」
道明は目を伏せた。「そうか。ならば、恐らく……」
おせんが、ふと背筋を震わせた。「……この咒、命じてる者がいる」
新右衛門は、部屋の奥に立てかけられた古い灯籠を見た。
煤けて歪んだ木枠。その一面にだけ、焦げ跡が残っていた。まるで、何かが中から破裂したように。
「これは……親父さんの……」
道明が言葉を継いだ。「娘は手を貸しているだけ。だが咒を命じているのは……死者だ」
その瞬間、部屋の灯がふっと消えた。
闇の中から、煤けた手が、そっと障子に触れた。
煤けた手が障子に触れた瞬間、部屋の空気が変わった。
寒さとも暑さとも違う、ぬめりを帯びた気配が、新右衛門たちの肌を舐める。灯は落ち、月明かりだけが薄く室内を照らしていた。
「……来ているな」
道明の声は低く、それでいて確信に満ちていた。
おせんが新右衛門の腕をそっと掴む。「あの手……あれは、火の中で見たのと同じ」
煤けた手は障子にしばし触れていたが、やがて音もなく引いていった。だが、霊気は部屋の中に残ったままだった。床の間にある灯籠が、ふっと微かな音を立てて震える。
「これは……霊が“媒介”を通して接触してきている」
道明が印を結び、口の中で呪を唱えると、霊気の震えは次第に弱まった。それでも、完全には消えない。
「娘に咒を命じているのは、父・仁兵衛だ。間違いない」
「だが、どうしてそんなことを……」
新右衛門の問いに、道明は沈思の末、口を開いた。
「仁兵衛は死の間際、灯籠と共に焼けた。彼が最後まで守ろうとしたのは、自分の灯籠職人としての技。そしてそれを娘に託した。だが……死者の想念は、しばしば“願い”と“執着”の境を見失う」
「つまり……願いが呪いに変わったのか」
「正確には、願いが“咒”へと形を変えてしまった。娘に託した想いが、彼女の手を通して術へと変質し……やがて術そのものが父の霊に吸い寄せられた」
おせんが、灯籠の紙を見下ろしながら、低く言った。「この名前たち……みんな、灯籠の中で叫んでた。生きてる人間の声じゃない」
新右衛門は、一枚の紙を拾い上げた。筆文字で書かれた名──尾崎屋清太郎。既に命を落とした者。
「この咒は、“未来の死”を写してるのか?」
道明は首を横に振った。「いや、これは“呼び出し”だ。名前と髪の毛を使って、魂の先を引き寄せる。死を先取りする術……いわば、“生前葬”だ」
「では、書かれた者は、生きていながらにして死の咒を受ける」
「咒は灯籠を通じて広がる。火に照らされたとき、魂の一部が切り離され、死の予兆となる。そして数日中に、魂が本体から離れ……死を迎える」
おせんが目を伏せた。「だから……あんなに虚ろな目をしてた。名前を書かれた人たち……皆、魂の一部を失ってた」
新右衛門は拳を握りしめた。「ならば、これ以上、名を書かせるわけにはいかん」
「おはるに咒を止めさせねばならぬ。しかし……」
道明は口をつぐむ。
「彼女は自分の意思では動いていない」
その時、障子の外から微かな足音が聞こえた。
新右衛門が振り返ると、おはるが立っていた。俯いたまま、部屋の中を覗き込んでいる。
「……灯籠は、まだ、足りません」
その声は、どこか遠いところから響いているようだった。焦点の合わない瞳、ゆらゆらと揺れる身体。
「父さまの、仕事がまだ……」
おせんが立ち上がった。「おはるさん……もういいの。あなたは、もう、十分やった」
だが、おはるは聞いていなかった。
新右衛門がそっと近づき、肩に手を置いた。
その瞬間、おはるの身体がびくりと震え、目に生気が戻った。
「……あれ……私……?」
「戻ったか」
道明が息を吐いた。「今のうちだ。咒を止めるには、“書かれた灯籠”をすべて焔陰で断ち、父の霊を導くしかない」
おはるは、自分の手に墨と筆が握られていたことに気づいた。
「……私、書いてたのね……名前……」
涙がぽろりと落ちた。
新右衛門は頷いた。「だが、それはお前の罪ではない。託された想いが歪み、呪いとなった。それを、終わらせよう」
おせんが静かに灯籠を手に取った。「……さあ、皆を、光の方へ」
夜風が再び吹き、灯籠の火が一つ、消えた。
だが、その消失は、呪いの終焉ではなかった。
始まりだった。導きの光となる、新たな儀式の。
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「清太郎は……何か、心当たりが?」
喜兵衛は目を伏せた。「……昔、あの子と揉めたことがありました。灯籠を納める約束を、一方的に破ったことが」
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その日、文吉の許しを得て、おはるの部屋に踏み込んだ。
そこは薄暗く、窓の障子は閉め切られ、灯りもともっていなかった。だが、空気は妙に湿っていた。湿気ではない。沈殿するような、重たい気配が空間を満たしていた。
「……これは、祈りの部屋じゃない。呪いの場だ」
おせんがつぶやいた。新右衛門の隣に、ひっそりと立っていた。
畳の一隅に積まれていた紙束。その中に、新右衛門は異様な感触を覚えた。
紙の間に挟まれていたのは、細く切られた髪の毛。一本、二本ではない。束になっている。それぞれに名前が記されていた。
「……これが“生霊写し”か」
声の主は、入口に現れた修験者・道明だった。
「名と髪。対象の“因縁”を媒介にして灯籠に写す。だが……これは、おはるの力じゃない」
「……どういう意味だ」
「これだけの呪法を正確に重ねるには、術者としての熟練と、何より“動機”がいる。おはるは憎んではいても、呪う理由には足らぬ」
新右衛門が紙束を持ち上げると、下からもう一枚、古びた半紙が現れた。
そこには、朱墨で奇妙な印が書かれていた。
「……印が、動いている」
目の錯覚ではない。印の線が、まるで虫が這うようにわずかに揺れていた。
「これは、“借り咒”だ」
道明の声が硬くなった。「自らの意志ではなく、誰かの咒を“請け負う”形の呪法だ。……この部屋、おはるは一人で使っていたか?」
「文吉は、そう聞いている。……ただ、親父の祭壇だけは、誰も動かしていない」
道明は目を伏せた。「そうか。ならば、恐らく……」
おせんが、ふと背筋を震わせた。「……この咒、命じてる者がいる」
新右衛門は、部屋の奥に立てかけられた古い灯籠を見た。
煤けて歪んだ木枠。その一面にだけ、焦げ跡が残っていた。まるで、何かが中から破裂したように。
「これは……親父さんの……」
道明が言葉を継いだ。「娘は手を貸しているだけ。だが咒を命じているのは……死者だ」
その瞬間、部屋の灯がふっと消えた。
闇の中から、煤けた手が、そっと障子に触れた。
煤けた手が障子に触れた瞬間、部屋の空気が変わった。
寒さとも暑さとも違う、ぬめりを帯びた気配が、新右衛門たちの肌を舐める。灯は落ち、月明かりだけが薄く室内を照らしていた。
「……来ているな」
道明の声は低く、それでいて確信に満ちていた。
おせんが新右衛門の腕をそっと掴む。「あの手……あれは、火の中で見たのと同じ」
煤けた手は障子にしばし触れていたが、やがて音もなく引いていった。だが、霊気は部屋の中に残ったままだった。床の間にある灯籠が、ふっと微かな音を立てて震える。
「これは……霊が“媒介”を通して接触してきている」
道明が印を結び、口の中で呪を唱えると、霊気の震えは次第に弱まった。それでも、完全には消えない。
「娘に咒を命じているのは、父・仁兵衛だ。間違いない」
「だが、どうしてそんなことを……」
新右衛門の問いに、道明は沈思の末、口を開いた。
「仁兵衛は死の間際、灯籠と共に焼けた。彼が最後まで守ろうとしたのは、自分の灯籠職人としての技。そしてそれを娘に託した。だが……死者の想念は、しばしば“願い”と“執着”の境を見失う」
「つまり……願いが呪いに変わったのか」
「正確には、願いが“咒”へと形を変えてしまった。娘に託した想いが、彼女の手を通して術へと変質し……やがて術そのものが父の霊に吸い寄せられた」
おせんが、灯籠の紙を見下ろしながら、低く言った。「この名前たち……みんな、灯籠の中で叫んでた。生きてる人間の声じゃない」
新右衛門は、一枚の紙を拾い上げた。筆文字で書かれた名──尾崎屋清太郎。既に命を落とした者。
「この咒は、“未来の死”を写してるのか?」
道明は首を横に振った。「いや、これは“呼び出し”だ。名前と髪の毛を使って、魂の先を引き寄せる。死を先取りする術……いわば、“生前葬”だ」
「では、書かれた者は、生きていながらにして死の咒を受ける」
「咒は灯籠を通じて広がる。火に照らされたとき、魂の一部が切り離され、死の予兆となる。そして数日中に、魂が本体から離れ……死を迎える」
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道明は口をつぐむ。
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だが、おはるは聞いていなかった。
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その瞬間、おはるの身体がびくりと震え、目に生気が戻った。
「……あれ……私……?」
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道明が息を吐いた。「今のうちだ。咒を止めるには、“書かれた灯籠”をすべて焔陰で断ち、父の霊を導くしかない」
おはるは、自分の手に墨と筆が握られていたことに気づいた。
「……私、書いてたのね……名前……」
涙がぽろりと落ちた。
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