3 / 3
第3話 おまけ
しおりを挟む
「どういう事なのですか姉上」
部屋を出ると、いきなりそう問いかけられた。
振り向くと弟が凄い形相で見ている。
部屋の中の会話など聞こえるはずも無い。
だけど確信に満ちた声に、話が筒抜けになっていたことは明白だ。
イリスは一応、誤魔化してみることにする。
「突然、何のことかしら?」
「殿下達の事です。彼らに、わざと争わせたのですか?」
随分と正確に聞き取れている様だ。
スキルか魔導具なのだろうとイリスは予想する。
「盗み聞きなんて、良い趣味では無くてよ」
出来るだけ落ち着いた口調をイリスは心掛ける。
「やはり今の話は本当なのですか!」
凄い剣幕であり怒っているのは間違いない。
「本当だと言ったら貴方はどうすると言うのかしら?」
「姉上は聖女の力をお持ちなのですよ。どうしてそれを正しい事に使われないのですか!」
家族はイリスが聖女の力を持っていることは知っていた。
ただ父から他言無用だと、きつく言われている。
「おかしな事を言うのね。貴方の正しい事って言うのは一体どういうものなのかしら?」
「聖女の力は人々の為に使われるべきです。決して私利私欲の為に使っていいものではありません」
「ご高説ありがとう。でも貴方も、わたくし達の会話を聞くのにスキルを使ってましたわよね?」
「そ、それは私のスキルは影響が少ないからです。聖女の力は強大なのですから!」
やはりスキルを使用したのかとイリスは思う。
「そうかしら。情報が得られるスキルなんて、ある意味わたくしの力より凶悪で危険なものだと思うのだけれど」
「うぐっ! そ、それは……」
こんな世の中なのだから正確な情報を得られるありがたさが、分からない訳でもないだろう。
下手をすれば人の生き死にだって左右される程の能力だ。
「そんな能力を貴方は私利私欲の為に使った。そういうことではないのですか?」
「い、いや……」
「別に貴方を責めている訳では無いのですよ。使えるものがあるなら使うべきだと言っているだけですわ」
「……」
弟は合点がいかない様子だ。
「能力も自分の魅力の一つと思っては貰えないかしら?」
「み、魅力ですか?」
「そうよ。得られた力はもう自分の一部な訳ですし、それは否定できないわ」
修練で身に着けたにせよ、偶然得られたにせよ能力を持ってしまっている。
「どうしたって自分の感情で使用してしまう。それは悪いことなのかしら?」
「ですが能力を使って人を騙すのは良くないと私は思います!」
「そうね。でもわたくしがやった事は自己アピールの一環に過ぎないわ」
つぼみを咲かせるなんてインパクトはあっただろう。
「自己アピール? ……つまり普通の女性がやっているような?」
「ええ。魅力をアピールして殿方に気に入っていただく。一般の女性がやってる普通の事なのでは?」
化粧をして髪を整え、服やアクセサリーで着飾る。
能力使用はそんな普通な事の延長だろうとイリスはアピールする。
「しかし……」
(なかなか食い下がるわね。仕方がない)
イリスは方針を変える。
「でもわたくしも今回はやり過ぎたと思いますわ。貴方の言うとおり聖女の力の使い方を考え直すことにするわ」
「そ、そうですか。分かっていただけましたか、姉上」
「ええ、弟の貴方が言うのですから。助言してくれてありがとう」
「はい! 失礼します」
会った初めとは違い弟は少し微笑みを浮かべ去っていく。
自分との会話でイリスが考えを改めてくれたという達成感なのだろう。
ある程度は満足した様だ。
(まあ、考え直すだけでやらないとは言っていないのですけれど)
こんな論点をずらした、煙に巻いた会話で満足するなんて。
(将来、私みたいな女性に騙されなければいいのだけれど……)
弟には素敵な男性になって貰いたいとイリスは思っている。
イリスは弟の成長を願う。
イリス自身もまだ安心は出来ない。
やることはまだまだある。
これからも一族の幸せの為に全力を尽くさなければ……。
イリスはそんな事を考える。
部屋を出ると、いきなりそう問いかけられた。
振り向くと弟が凄い形相で見ている。
部屋の中の会話など聞こえるはずも無い。
だけど確信に満ちた声に、話が筒抜けになっていたことは明白だ。
イリスは一応、誤魔化してみることにする。
「突然、何のことかしら?」
「殿下達の事です。彼らに、わざと争わせたのですか?」
随分と正確に聞き取れている様だ。
スキルか魔導具なのだろうとイリスは予想する。
「盗み聞きなんて、良い趣味では無くてよ」
出来るだけ落ち着いた口調をイリスは心掛ける。
「やはり今の話は本当なのですか!」
凄い剣幕であり怒っているのは間違いない。
「本当だと言ったら貴方はどうすると言うのかしら?」
「姉上は聖女の力をお持ちなのですよ。どうしてそれを正しい事に使われないのですか!」
家族はイリスが聖女の力を持っていることは知っていた。
ただ父から他言無用だと、きつく言われている。
「おかしな事を言うのね。貴方の正しい事って言うのは一体どういうものなのかしら?」
「聖女の力は人々の為に使われるべきです。決して私利私欲の為に使っていいものではありません」
「ご高説ありがとう。でも貴方も、わたくし達の会話を聞くのにスキルを使ってましたわよね?」
「そ、それは私のスキルは影響が少ないからです。聖女の力は強大なのですから!」
やはりスキルを使用したのかとイリスは思う。
「そうかしら。情報が得られるスキルなんて、ある意味わたくしの力より凶悪で危険なものだと思うのだけれど」
「うぐっ! そ、それは……」
こんな世の中なのだから正確な情報を得られるありがたさが、分からない訳でもないだろう。
下手をすれば人の生き死にだって左右される程の能力だ。
「そんな能力を貴方は私利私欲の為に使った。そういうことではないのですか?」
「い、いや……」
「別に貴方を責めている訳では無いのですよ。使えるものがあるなら使うべきだと言っているだけですわ」
「……」
弟は合点がいかない様子だ。
「能力も自分の魅力の一つと思っては貰えないかしら?」
「み、魅力ですか?」
「そうよ。得られた力はもう自分の一部な訳ですし、それは否定できないわ」
修練で身に着けたにせよ、偶然得られたにせよ能力を持ってしまっている。
「どうしたって自分の感情で使用してしまう。それは悪いことなのかしら?」
「ですが能力を使って人を騙すのは良くないと私は思います!」
「そうね。でもわたくしがやった事は自己アピールの一環に過ぎないわ」
つぼみを咲かせるなんてインパクトはあっただろう。
「自己アピール? ……つまり普通の女性がやっているような?」
「ええ。魅力をアピールして殿方に気に入っていただく。一般の女性がやってる普通の事なのでは?」
化粧をして髪を整え、服やアクセサリーで着飾る。
能力使用はそんな普通な事の延長だろうとイリスはアピールする。
「しかし……」
(なかなか食い下がるわね。仕方がない)
イリスは方針を変える。
「でもわたくしも今回はやり過ぎたと思いますわ。貴方の言うとおり聖女の力の使い方を考え直すことにするわ」
「そ、そうですか。分かっていただけましたか、姉上」
「ええ、弟の貴方が言うのですから。助言してくれてありがとう」
「はい! 失礼します」
会った初めとは違い弟は少し微笑みを浮かべ去っていく。
自分との会話でイリスが考えを改めてくれたという達成感なのだろう。
ある程度は満足した様だ。
(まあ、考え直すだけでやらないとは言っていないのですけれど)
こんな論点をずらした、煙に巻いた会話で満足するなんて。
(将来、私みたいな女性に騙されなければいいのだけれど……)
弟には素敵な男性になって貰いたいとイリスは思っている。
イリスは弟の成長を願う。
イリス自身もまだ安心は出来ない。
やることはまだまだある。
これからも一族の幸せの為に全力を尽くさなければ……。
イリスはそんな事を考える。
11
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
傷物の大聖女は盲目の皇子に見染められ祖国を捨てる~失ったことで滅びに瀕する祖国。今更求められても遅すぎです~
たらふくごん
恋愛
聖女の力に目覚めたフィアリーナ。
彼女には人に言えない過去があった。
淑女としてのデビューを祝うデビュタントの日、そこはまさに断罪の場へと様相を変えてしまう。
実父がいきなり暴露するフィアリーナの過去。
彼女いきなり不幸のどん底へと落とされる。
やがて絶望し命を自ら断つ彼女。
しかし運命の出会いにより彼女は命を取り留めた。
そして出会う盲目の皇子アレリッド。
心を通わせ二人は恋に落ちていく。
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。
【完結】慰謝料は国家予算の半分!?真実の愛に目覚めたという殿下と婚約破棄しました〜国が危ないので返して欲しい?全額使ったので、今更遅いです
冬月光輝
恋愛
生まれつき高い魔力を持って生まれたアルゼオン侯爵家の令嬢アレインは、厳しい教育を受けてエデルタ皇国の聖女になり皇太子の婚約者となる。
しかし、皇太子は絶世の美女と名高い後輩聖女のエミールに夢中になりアレインに婚約破棄を求めた。
アレインは断固拒否するも、皇太子は「真実の愛に目覚めた。エミールが居れば何もいらない」と口にして、その証拠に国家予算の半分を慰謝料として渡すと宣言する。
後輩聖女のエミールは「気まずくなるからアレインと同じ仕事はしたくない」と皇太子に懇願したらしく、聖女を辞める退職金も含めているのだそうだ。
婚約破棄を承諾したアレインは大量の金塊や現金を規格外の収納魔法で一度に受け取った。
そして、実家に帰ってきた彼女は王族との縁談を金と引き換えに破棄したことを父親に責められて勘当されてしまう。
仕事を失って、実家を追放された彼女は国外に出ることを余儀なくされた彼女は法外な財力で借金に苦しむ獣人族の土地を買い上げて、スローライフをスタートさせた。
エデルタ皇国はいきなり国庫の蓄えが激減し、近年魔物が増えているにも関わらず強力な聖女も居なくなり、急速に衰退していく。
帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
あざとい!でも…😅
嫌いじゃない!時代は…
変わったのだ!( ̄∇ ̄)アハハハ
聖女も強かであるべき!!!
彼女は、どちらを選ぶのか。
🌱🐥💮