ウィルとアルと図書館の守人

凪 紅葉

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第一章 ウィルとアルと図書館の守人

ガリルと少年

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「任務、失敗だな、ガリル」
「はぁ? 何言ってやがる。禁断書はこのとおり」
「これはほんの一部だ。全てではない。私が求めていた記述は記されていない」
「なんだと?!」
「精霊に、してやられたな、ガリル。禁断書の重要な部分は別の場所に移したか、あるいは」

 ふと、思い当たり、記憶を辿る。ウィリアムとピピンがガリルの前から一時とは言え消えたその隙に、ピピンはウィリアムに禁断書の最も重要な部分を手渡した可能性がある。

 ――くそっ、やられたぜ。今回はとことんついてねぇ。

「なぁにガリル、アンタ任務失敗したの? だっさ!」

 何もない暗闇から、フッと浮き出たように現れた少女は、ピンクの長い髪をフワフワと靡かせ、笑いながら近付いてくる。

「メルキド、てめぇ」
「ねぇお父様、これはお仕置きが必要ですよねぇ。というかもう、存在自体消滅しちゃったほうがいいんじゃないですかぁ、こんな役立たず」
「んだとぉ!」

 小生意気は少女、メルキドがガリルに舌を出してあざ笑う。

 ――クッソ、ムカツク!

「くっ、親父、どうか、今一度チャンスを!」
「……チャンス?」
「次こそはお望みの禁断書全てを奪取してみせる!」
「えぇ~、口だけじゃないのぉ」

 一々しゃしゃり出てくるメルキドをキッと睨み付ける。

「次はしくじらねぇ」

 そして今度こそ、禁断書を手に入れる。そしてあのとき、掴み損ねたウィリアムも手に入れる。
 長い沈黙の後、親父はフッと微笑してガリルに向き直る。

「……いいだろう、ガリル。今一度、お前にチャンスをやろう」
「あぁ、必ず奪取する!」
「ただし、次に失敗すれば……もう後はないぞ」

 ガリルは拳を握り締める。鋭い視線を感じながら親父に背を向け、その場を後にした。
メルキドが何か言っていたが、そんなことはどうでもいい。ガリルは完全に無視した。

 ――次こそは手に入れてみせる。愛しいウィルと禁断書のすべてを。

 ウィリアムを想えば想うほど、下半身は熱を帯びていくのを自覚する。
長い廊下を歩きながら、ガリルは自身の欲求を抑えようと思ったが。

「無理は身体によくねぇし、抜いてくかぁ……、……おい、そこのお前、ケツ出せ」

 思い立ったら行動は早かった。
 ガリルは近場いた召使いを呼び止め、その場で壁に手を付かせ、召使いはガリルに命令されるまま長いローブをたくし上げ、下半身を露わにし、何も身に着けていない尻を差し出した。
 気分良く空いた手で起ち上がった自らの肉棒を取り出すと、容赦なく召使いの秘所に突き入れた。
 執拗な激しい挿入に召使いは口から唾液を零し、主が果てるのをただじっと耐え続ける。

「くっ、はぁ」

 時折、召使いの喘ぎが小さく零れ、広い廊下に小さく響く。
 この屋敷にいる召使いにとって、主の命令は絶対だった。それゆえ、性奴隷としても躾けられており、その感度は高い。快楽を司るガリルも軽く扱いただけですぐにイケてしまうほどに。
 それだけ限界だった、ということもあるのだが。

「はぁ……あぁ、イクイクイクっ」

 視界が白に迫りガリルは勢いよく召使いの最奥に射精した。
 召使いは熱い欲望を当たり前とばかりに受け入れ飲み込んでいく。
 白い壁に少し濁った精液がべったりと飛び散る。召使いもほぼ同時に果てたようだ。
 召使いはまだ若い少年だった。

「あ~、イッたぁ」

 何とか熱は収まり、ソレを仕舞い込む。
 ガリルは召使いの秘所から溢れた射精した自らの精液を手の平で拭うようにすくい上げる。
 召使いは声を殺し、身体を振るわせた。

「……ウィルッ」

 ガリルの口からつい出た名前は当然、召使いの少年の名ではない。それ以前に彼らは名前を与えられていないのだ。

「あぁ、ウィリアム」

 ――オレの精液飲ませて、全身に浴びせて、身体の奥まで注ぎ込みたい。

 恍惚した表情でガリルが天を仰いだ。

「くくっ、あははは……やべぇ……これぁ、治まらねぇ。また勃起しちまった」

 ガリルの言うとおり、彼の下半身は出したばかりだというのに、すでに天を仰ぎギンギンに起ち上がってレザーパンツを持ち上げていた。
 まだ、召使いの少年の役目は終わっていないようだ。

「来い」
「……はい、ご主人様」

 召使いの少年はそう命令されると、屋敷の奥にあるガリルの寝室へと爪先を向けた。



 ***



「んあ、あぁ……あぁ、はぁ」

 もう何度、中に出されたから、思い出すこともできなくなってしまった。

「あっ、あぁっ、はぁん! あぁっ!」

 身体の中も外もガリルの吐き出した欲望と言う精液でベタベタに汚され、ずっとベットに備え付けの拘束の鎖に両腕を捉えられ、脚を開き、男を受け入れ続けている。それはまだ果てることがなく、少年は飲まず食わずでガリルの欲望の玩具として捉えられ監禁されていた。
 何度目かの挿入、ガリルの激しい律動に少年の意識はどんどん薄らいで、遠のいていく。

「あ……あ……ぁ、……」

 ガリルはフィニッシュとばかりに少年の細い腰に力を入れると、一際強く自身を打ちつける。大量の精液を吐き出した。

「あぁ~、さすがに疲れたし飽きちまったなぁ……、……おーい、もう行っていいぞ~」
「……」

 召使いの少年から返事は返ってこない。

「あぁ?」

 ガリルはうつ伏せになっている少年の肩を掴み、仰向かせた。

「あぁ~、また、ヤっちまったか……まぁ、いいや」

 召使いの少年は身じろぐこともなく、ただ静かにベッドの上で仰向けに身体を晒している。
 少年は、肩まで伸びた薄い黒髪に白い肌。生きた人形のような美しい身体と顔を持つ少年だった。
 だが今は、痩せ細り、開いた茶色い瞳は虚空を見つめている。当初の面影はそこにはなかった。
 呼吸は、止まっているようだ。しかし、まだその精液に汚れた身体は温かく、柔らかい。

「けっこー気に入ってたんだけどなぁ。壊れたんならもう要らねぇけど」

 ガリルは、パチンッ、と指を鳴らした。すると、召使いの少年の身体を蒼白い炎が包み込んだ。
 その日、骨と皮だけとなってしまったあの美しかった少年は、ガリルの蒼白い炎によって焼かれ、この世界からその姿を消した。

「次は、やっぱりウィルちゃんだよなぁ……いや待てよ、あともうニ、三人は可愛い子ちゃん、欲しいよなぁ。また見つけて来ねぇとなぁ」

 一人呟き陽気に笑いながら、ガリルを寝室を後にした。

 静寂だけを置き去りにして。




 第一章 ウィルとアルと図書館の守人 了
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