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第一章 ウィルとアルと図書館の守人
家族と温かな食事
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僕は捨て子で、親がいなかった。
なぜ捨てられたのかはわからない。
経済的な面が理由だったのかもしれないと義理の両親は言っていた。
僕が住んでいるのは、教会を簡単に改装した小さな孤児院で、そこに住むレスター夫婦に拾われた。
義理の両親はとても優しい人たちだった。
僕以外の親無しの子供たちも拾い養って、学校にも行かせてくれている。
拾われた孤児の中には立派に成長して社会へ巣立った者もいる。
義理の両親には本当に感謝しているし、自分も成長して働けるようになれば恩返しをするつもりだ。
それでも僕は本当の両親を義理の両親には内緒で探していた。
親の手がかりは捨てられたときに首に掛けられていた、黒蝶を模ったペンダント一つだけ……。
僕は自分を捨てた親を憎むと同時に、寂しいという気持ちも事実、存在していた。
本当の両親を見つけて、殴るなり、怒鳴りつけるなりしなければ気が治まらないのだ。
家である孤児院に着くと、いつもの僕に戻らなければならない。
義理の両親や義兄弟たちに心配させるわけにはいかないから。
「ただいま!」
家の庭先で洗濯物を取り込んでいる義母マリーが僕を目に捉えて優しく微笑む。
「お帰り、ウィル」
微笑む義母に、僕もつられて微笑んだ。
ウィルという名前は、ウィリアムの略称だ。
義理の両親も義兄弟の全員がウィルと呼ぶ。
親しみがあって、どちらかというとウィリアムよりもウィルと呼んでくれたほうが嬉しい。
「手伝うよ」
洗濯物を取り込むのを手伝おうと足を一歩前へ踏み出そうとしたとき、背後から小さな衝撃を感じた。
「おかえりなさーい、ウィルにいちゃん!」
四歳になる男の子・ローダが小さな体に両手を限界まで広げて僕の足に絡みついていた。
「ただいま、ローダ」
言いながら、ローダの小さな頭を優しく撫でてやる。
にっこりと微笑む幼い弟が愛しくてたまらない。
ロダも孤児で一歳のときに拾われて家へやってきた。
幼かったせいか、本当の両親の記憶はあまりないようだ。
僕はローダを本当に弟のように可愛がっている。
ロダだけじゃなく、他の兄弟だちも同様に血は繋がっていなくてもみんな大切な家族だ。
洗濯物を取り込み、次に夕食の準備に取り掛かる。
僕と二つ下の妹マールは慣れた手つきで義母を手伝い、下の兄弟も見よう見まねで手伝いに入る。
手伝いと言っても下の子たちはテーブル拭いたり、家族分の食器類を並べたりそんなところだ。
夕食の準備を手伝いながら、僕は今の心地良い環境を噛み締める。
血は繋がっていなくてもそんなことは関係ない。
関係ないけど、僕は何処かで寂しさを感じていた。
僕はもしかしたら、此処とは違う別の場所へ行きたいのかもしれない。
なんて自分勝手なんだろう。
僕は自分自身が嫌いだ。
シチューを焦げないようにゆっくりとかき混ぜながら僕はそんなことを思っていた。
どうかしている。第一、此処を出て何処へ行くつもりだ?
僕の知っている所なんて此処以外どこにもないのに。
「さぁ、そろそろ頃合ね。夕食にしましょう」
母の優しい声に我に返り、僕はシチューの入った鍋を両手に持って家族が並ぶ食卓へと運んだ。
食卓の中央に鍋を置き、一つ一つの器に注いでいく。
子供たちはお行儀良くその様子を眺めている。
遅れて義父であるビリーも食卓の席についた。
これで全員だ。
全員分の器に注ぎ終えると、ビリーは神様への感謝と今日の食事への感謝を言葉にした。
僕たちもその言葉に続いて食卓に祈りを捧げる。
祈りを捧げ、ようやく食事に手をつける。
教会の牧師である父のビリーとシスターである母のマリーの影響で食事の前の祈りは当然のことで習慣の一つだ。
子供たちは待ってましたと言わんばかりに、一斉に食事を始める。
僕も暖かなシチューに一口大に千切ったパンを浸して口に運んだ。
甘さを含んだシチューの旨味が口全体に広がって冷えた身体を少しずつ温めていく。
時折、幼い子供たちの面倒を見ながらゆっくりと食事を堪能した。
なぜ捨てられたのかはわからない。
経済的な面が理由だったのかもしれないと義理の両親は言っていた。
僕が住んでいるのは、教会を簡単に改装した小さな孤児院で、そこに住むレスター夫婦に拾われた。
義理の両親はとても優しい人たちだった。
僕以外の親無しの子供たちも拾い養って、学校にも行かせてくれている。
拾われた孤児の中には立派に成長して社会へ巣立った者もいる。
義理の両親には本当に感謝しているし、自分も成長して働けるようになれば恩返しをするつもりだ。
それでも僕は本当の両親を義理の両親には内緒で探していた。
親の手がかりは捨てられたときに首に掛けられていた、黒蝶を模ったペンダント一つだけ……。
僕は自分を捨てた親を憎むと同時に、寂しいという気持ちも事実、存在していた。
本当の両親を見つけて、殴るなり、怒鳴りつけるなりしなければ気が治まらないのだ。
家である孤児院に着くと、いつもの僕に戻らなければならない。
義理の両親や義兄弟たちに心配させるわけにはいかないから。
「ただいま!」
家の庭先で洗濯物を取り込んでいる義母マリーが僕を目に捉えて優しく微笑む。
「お帰り、ウィル」
微笑む義母に、僕もつられて微笑んだ。
ウィルという名前は、ウィリアムの略称だ。
義理の両親も義兄弟の全員がウィルと呼ぶ。
親しみがあって、どちらかというとウィリアムよりもウィルと呼んでくれたほうが嬉しい。
「手伝うよ」
洗濯物を取り込むのを手伝おうと足を一歩前へ踏み出そうとしたとき、背後から小さな衝撃を感じた。
「おかえりなさーい、ウィルにいちゃん!」
四歳になる男の子・ローダが小さな体に両手を限界まで広げて僕の足に絡みついていた。
「ただいま、ローダ」
言いながら、ローダの小さな頭を優しく撫でてやる。
にっこりと微笑む幼い弟が愛しくてたまらない。
ロダも孤児で一歳のときに拾われて家へやってきた。
幼かったせいか、本当の両親の記憶はあまりないようだ。
僕はローダを本当に弟のように可愛がっている。
ロダだけじゃなく、他の兄弟だちも同様に血は繋がっていなくてもみんな大切な家族だ。
洗濯物を取り込み、次に夕食の準備に取り掛かる。
僕と二つ下の妹マールは慣れた手つきで義母を手伝い、下の兄弟も見よう見まねで手伝いに入る。
手伝いと言っても下の子たちはテーブル拭いたり、家族分の食器類を並べたりそんなところだ。
夕食の準備を手伝いながら、僕は今の心地良い環境を噛み締める。
血は繋がっていなくてもそんなことは関係ない。
関係ないけど、僕は何処かで寂しさを感じていた。
僕はもしかしたら、此処とは違う別の場所へ行きたいのかもしれない。
なんて自分勝手なんだろう。
僕は自分自身が嫌いだ。
シチューを焦げないようにゆっくりとかき混ぜながら僕はそんなことを思っていた。
どうかしている。第一、此処を出て何処へ行くつもりだ?
僕の知っている所なんて此処以外どこにもないのに。
「さぁ、そろそろ頃合ね。夕食にしましょう」
母の優しい声に我に返り、僕はシチューの入った鍋を両手に持って家族が並ぶ食卓へと運んだ。
食卓の中央に鍋を置き、一つ一つの器に注いでいく。
子供たちはお行儀良くその様子を眺めている。
遅れて義父であるビリーも食卓の席についた。
これで全員だ。
全員分の器に注ぎ終えると、ビリーは神様への感謝と今日の食事への感謝を言葉にした。
僕たちもその言葉に続いて食卓に祈りを捧げる。
祈りを捧げ、ようやく食事に手をつける。
教会の牧師である父のビリーとシスターである母のマリーの影響で食事の前の祈りは当然のことで習慣の一つだ。
子供たちは待ってましたと言わんばかりに、一斉に食事を始める。
僕も暖かなシチューに一口大に千切ったパンを浸して口に運んだ。
甘さを含んだシチューの旨味が口全体に広がって冷えた身体を少しずつ温めていく。
時折、幼い子供たちの面倒を見ながらゆっくりと食事を堪能した。
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