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第一章 ウィルとアルと図書館の守人
友達
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出入り扉は図書館の最初に入った本棚が並ぶ場所に出た。
本棚の裏が隠し通路になっていて、人も滅多に近寄らない棚が陳列している場所のようだ。
此処なら誰かに見られることはないだろう。
次来る時はここから入ろうと決めた。
場所を覚えておかないと。
天窓から見える空はオレンジ色に染まっていた。
何時の間にこんなに時間が過ぎていたのか、と僕は少し慌てた。
「急いで帰らなくちゃ。アルが心配してるぞ、きっと」
僕は辺りに人がいないことを確認してからいそいそと図書館を後にして、小走りに家路を急いだ。
街は朝と違い夕焼けのオレンジ色染まってとても幻想的な景色になっていた。
小走りに屋敷に戻りながら、明日もう一度図書館に行ってみようかな、と考えていた。
ピピンをあの図書館から自由にする方法を見つけよう。
そんなことを考えながら歩いていると、屋敷の前に小さな影が立っていた。
その影は心配そうにキョロキョロとあたりを見回している。
「アル、ただいま」
「ウィル! はぁ、良かったぁ。君の気配が突然消えたから驚いて、探しに行こうかずっと迷っていたんだけど、もし帰ってきたら入れ違いになるだろうと考えたら中々探しに行けなくて」
「ひらひらしたリボンのこと? これあの図書館に入ると反応しなくなっちゃうんだな」
「図書館に行ってたのかい? もしかして、ピピンに会ったかい? 大きな巨人のような精霊なんだけど」
やはりアルは図書館に住む精霊の存在を知っていた。
僕は正直に頷く。
ここで嘘をついても仕方がないことだ。
「友達になったよ。アルは、ピピンのこと知っているんだ」
「あぁ、でも彼を知っているのは一部の関係者だけだよ。彼はあの図書館で大切なもの守っている守人さ」
少し気になっていた。
大切なものとは一体なんなのか。
図書館に保管するものだからやっぱり書物だろうか。
「一体どんなものなんだろう。大切なものって」
それとなしに尋ねてみる。
「私も直接、物を見たわけじゃないから詳しくは。でもそれはこの世に存在する全てのものを記したものだと言われているね。いわゆる【禁忌の書】というものだ」
「禁忌の書」
「この世の始まりから終わりといった予言を記したもの。決して触れてはならない禁断魔法とか、そういうものかな。まあ、あくまでも私の想像だけど。それが書物なのかも実はよく解っていないんだ」
なんだか、聞いているうちに背筋がゾクゾクと寒気が走った。
僕は怖いのかな。
たしかに、恐ろしいものかもしれない。
それをたった一人でピピンは守っているんだ。
「ピピンを生んだ賢者様については、何か知っている?」
「賢者アクネリウス様だね。聡明な方だったと本で読んだことがあるよ。彼は魔法使いだったが、研究者でもあった。世界の成り立ちや、魔法探求はもちろん。生物学も興味を持っていたようだ。そういえば、万物の女神マナ・ユグドラシル様とも親しかったって本に書いてあったな」
「え? 女神マナ様と? それ凄いな」
僕の驚きようにアルは声を上げて笑った。
「そうだね。だから賢者様と呼ばれるようになったのかもしれないよ」
なるほど。
賢者アクネリウス。
ピピンの生みの親、か。
彼に書かれているというその書物、僕もその本読んでみたいな。
「ねぇ、アル。その君が読んだ本って今持ってる?」
「ああ、私の本棚にあるはずだよ」
「ちょっと、貸して欲しいんだけど、駄目かな?」
いいけど、とアルは頭に手を当てて困ったような表情で口を開いた。
「ウィル、君はまだ文字が読めないだろ?」
「あ」
そうだった。
肝心なことを忘れていた。
頭を垂れた。
でも読んでみたい。
そう思いながら、窺うように目でアルに訴えかける。
アルは小さく息をつきながら、
「仕方ない。私が読み聞かせてあげるよ。少しずつ文字も覚えていこう。魔法を学ぶためのにもね」
「やった! ありがとう、アル」
僕は天高く両手を上げて喜んだ。
「そのかわり、夕食を食べ終わってからだよ。折角作った料理が冷めてしまっては嫌だからね」
「うん! あぁ、お腹すいたぁ。そういえば、お昼食べてなかったっけ」
「だから心配したんじゃないか。いいかい、ウィル。明日からは朝昼晩の食事は欠かさず食べること。約束できるかい?」
「わかった。あ、でも明日も図書館に出かけたいんだ」
アルは息をついて言った。
「それならお弁当を作ってあげるよ。持って行って食べるといい」
「うん、ありがとう」
僕はアルに礼を言うと、軽い足並みで屋敷の中へ入った。
背後で「やれやれ」というアルの声を聞いた。
本棚の裏が隠し通路になっていて、人も滅多に近寄らない棚が陳列している場所のようだ。
此処なら誰かに見られることはないだろう。
次来る時はここから入ろうと決めた。
場所を覚えておかないと。
天窓から見える空はオレンジ色に染まっていた。
何時の間にこんなに時間が過ぎていたのか、と僕は少し慌てた。
「急いで帰らなくちゃ。アルが心配してるぞ、きっと」
僕は辺りに人がいないことを確認してからいそいそと図書館を後にして、小走りに家路を急いだ。
街は朝と違い夕焼けのオレンジ色染まってとても幻想的な景色になっていた。
小走りに屋敷に戻りながら、明日もう一度図書館に行ってみようかな、と考えていた。
ピピンをあの図書館から自由にする方法を見つけよう。
そんなことを考えながら歩いていると、屋敷の前に小さな影が立っていた。
その影は心配そうにキョロキョロとあたりを見回している。
「アル、ただいま」
「ウィル! はぁ、良かったぁ。君の気配が突然消えたから驚いて、探しに行こうかずっと迷っていたんだけど、もし帰ってきたら入れ違いになるだろうと考えたら中々探しに行けなくて」
「ひらひらしたリボンのこと? これあの図書館に入ると反応しなくなっちゃうんだな」
「図書館に行ってたのかい? もしかして、ピピンに会ったかい? 大きな巨人のような精霊なんだけど」
やはりアルは図書館に住む精霊の存在を知っていた。
僕は正直に頷く。
ここで嘘をついても仕方がないことだ。
「友達になったよ。アルは、ピピンのこと知っているんだ」
「あぁ、でも彼を知っているのは一部の関係者だけだよ。彼はあの図書館で大切なもの守っている守人さ」
少し気になっていた。
大切なものとは一体なんなのか。
図書館に保管するものだからやっぱり書物だろうか。
「一体どんなものなんだろう。大切なものって」
それとなしに尋ねてみる。
「私も直接、物を見たわけじゃないから詳しくは。でもそれはこの世に存在する全てのものを記したものだと言われているね。いわゆる【禁忌の書】というものだ」
「禁忌の書」
「この世の始まりから終わりといった予言を記したもの。決して触れてはならない禁断魔法とか、そういうものかな。まあ、あくまでも私の想像だけど。それが書物なのかも実はよく解っていないんだ」
なんだか、聞いているうちに背筋がゾクゾクと寒気が走った。
僕は怖いのかな。
たしかに、恐ろしいものかもしれない。
それをたった一人でピピンは守っているんだ。
「ピピンを生んだ賢者様については、何か知っている?」
「賢者アクネリウス様だね。聡明な方だったと本で読んだことがあるよ。彼は魔法使いだったが、研究者でもあった。世界の成り立ちや、魔法探求はもちろん。生物学も興味を持っていたようだ。そういえば、万物の女神マナ・ユグドラシル様とも親しかったって本に書いてあったな」
「え? 女神マナ様と? それ凄いな」
僕の驚きようにアルは声を上げて笑った。
「そうだね。だから賢者様と呼ばれるようになったのかもしれないよ」
なるほど。
賢者アクネリウス。
ピピンの生みの親、か。
彼に書かれているというその書物、僕もその本読んでみたいな。
「ねぇ、アル。その君が読んだ本って今持ってる?」
「ああ、私の本棚にあるはずだよ」
「ちょっと、貸して欲しいんだけど、駄目かな?」
いいけど、とアルは頭に手を当てて困ったような表情で口を開いた。
「ウィル、君はまだ文字が読めないだろ?」
「あ」
そうだった。
肝心なことを忘れていた。
頭を垂れた。
でも読んでみたい。
そう思いながら、窺うように目でアルに訴えかける。
アルは小さく息をつきながら、
「仕方ない。私が読み聞かせてあげるよ。少しずつ文字も覚えていこう。魔法を学ぶためのにもね」
「やった! ありがとう、アル」
僕は天高く両手を上げて喜んだ。
「そのかわり、夕食を食べ終わってからだよ。折角作った料理が冷めてしまっては嫌だからね」
「うん! あぁ、お腹すいたぁ。そういえば、お昼食べてなかったっけ」
「だから心配したんじゃないか。いいかい、ウィル。明日からは朝昼晩の食事は欠かさず食べること。約束できるかい?」
「わかった。あ、でも明日も図書館に出かけたいんだ」
アルは息をついて言った。
「それならお弁当を作ってあげるよ。持って行って食べるといい」
「うん、ありがとう」
僕はアルに礼を言うと、軽い足並みで屋敷の中へ入った。
背後で「やれやれ」というアルの声を聞いた。
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