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第一章 ウィルとアルと図書館の守人
ツリーハウスの罠
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僕に魔法の基礎を教えてくれる先生は毎日通っていた図書館の館長だということだった。
ただ、だいぶ気分屋らしく図書館の本来いるべき席に座っていることは滅多にないらしい。
「彼女は研究者でもあってね、その日の殆どを研究室に篭って魔法の研究をしているだ。人前に姿を見せないのはそういう理由からだよ。本来の図書館長という仕事は今ではその殆どをピピンにまかせっきりのようだし」
研究熱心なのはいいけど、それはそれで問題有りな気もしないわけじゃない。
いや、問題有りだ。
現に図書館に夜の者が侵入してしまったのだから。
ピピンが追い払って、というか、あの夜の者ガリル、だっけ? が自ら身を引いたんだけど。
偵察と言っていた。
だからいずれまた、図書館に奴は必ず現れるだろう。
図書館長なんだからピピンと一緒に大切な物を守って欲しいんだけど。
研究をしてるって言っていたけど、どんな研究なんだろう。
そんなことを考えながら。
アルに連れられて向かった場所は丁度、図書館の裏手にある森だった。
木々はどれもとても太く、一体何百年前からそこに自生しているのだろうかと、立派な大樹を眺めながら僕とアルは目的地まで歩いた。しばらく歩くと目の前に巨大な樹木が見えてきた。
その樹木を巻き込むように建てられた木造の家がアルの言っていたロミロアという人物の家のようだ。
家の玄関の前まで歩くとアルは小さな手で二度、三度ノックを繰り返した。
しかし、返事がない。
それどころか人がいる気配がない。
「ロミロアのやつ、また地下の研究室に篭っているみたいだ。まあいい、中に入ろう」
勝手知ったるという雰囲気で、扉を開くと僕らは中に入った。
鍵は掛かっていなかった。
無用心だなぁ。
家の中は少しカビ臭い。
しかも所狭しと本の山ができていた。
扉を開けたときドサッって音がしたけど、振動で本が落ちたのかもしれない。
「本の量が半端ない。アルの家以上にあるんじゃない? 本棚に入りきらなくて床に山が出来ちゃってるよ。小さな街の図書館って感じ、ずさんだけど」
「少しは整理しろって毎回会うたびに言ってるんだが、彼女に会うのは数ヶ月ぶりなんだ」
「何処にいるんだろう」
「おそらくいつもの所、地下にある研究室だろうね。行こう、本が崩れそうだから気をつけてウィル。本に埋もれないように」
「う、うん」
本の山を崩さないように僕とアルは慎重にそれらを避けながら家の奥にあるという、地下へと通じる階段へ向かった。
「外からじゃわからないけど、木の中に家が入ってるんだね。木の幹が至る所から伸びてるよ」
「あぁ、おそらくこの樹木を媒体に家を構築したんだろうね」
「え? ということはこれも魔法なの?」
「あぁ、そうだよ。かなり増築を繰り返しているみたいだ」
「凄い。魔法って家まで創れるんだね」
「発動者の力量次第さ。複雑な方式を重ねれば重ねた分、強力な魔法が扱える。しかし、その分魔力消費と構築にも時間が掛かるけどね」
魔法は複雑な計算式だ。
僕、数学系は苦手なんだけど大丈夫かな。
数字を見ると頭が痛くなるんだ。
「ふぅ、屋内のはずなのにまるで本のジャングルだ、まったく。ここから地下に下りるよ。ついてきて。あぁ、一応用心しておいてくれ。何せ相手はあのロミロアだからね。何処に何が仕掛けてあるかわからないから」
僕は思わず苦笑いした。
自分でも顔が引き攣っているのがわかる。
「よし、行こう」
モンスターの潜むダンジョンの中に入るような気分だ。
アルの表情も真剣そのもの。
僕は息を飲んだ。
アルと僕は覚悟を決めて階段を降り始めた。
ただ、だいぶ気分屋らしく図書館の本来いるべき席に座っていることは滅多にないらしい。
「彼女は研究者でもあってね、その日の殆どを研究室に篭って魔法の研究をしているだ。人前に姿を見せないのはそういう理由からだよ。本来の図書館長という仕事は今ではその殆どをピピンにまかせっきりのようだし」
研究熱心なのはいいけど、それはそれで問題有りな気もしないわけじゃない。
いや、問題有りだ。
現に図書館に夜の者が侵入してしまったのだから。
ピピンが追い払って、というか、あの夜の者ガリル、だっけ? が自ら身を引いたんだけど。
偵察と言っていた。
だからいずれまた、図書館に奴は必ず現れるだろう。
図書館長なんだからピピンと一緒に大切な物を守って欲しいんだけど。
研究をしてるって言っていたけど、どんな研究なんだろう。
そんなことを考えながら。
アルに連れられて向かった場所は丁度、図書館の裏手にある森だった。
木々はどれもとても太く、一体何百年前からそこに自生しているのだろうかと、立派な大樹を眺めながら僕とアルは目的地まで歩いた。しばらく歩くと目の前に巨大な樹木が見えてきた。
その樹木を巻き込むように建てられた木造の家がアルの言っていたロミロアという人物の家のようだ。
家の玄関の前まで歩くとアルは小さな手で二度、三度ノックを繰り返した。
しかし、返事がない。
それどころか人がいる気配がない。
「ロミロアのやつ、また地下の研究室に篭っているみたいだ。まあいい、中に入ろう」
勝手知ったるという雰囲気で、扉を開くと僕らは中に入った。
鍵は掛かっていなかった。
無用心だなぁ。
家の中は少しカビ臭い。
しかも所狭しと本の山ができていた。
扉を開けたときドサッって音がしたけど、振動で本が落ちたのかもしれない。
「本の量が半端ない。アルの家以上にあるんじゃない? 本棚に入りきらなくて床に山が出来ちゃってるよ。小さな街の図書館って感じ、ずさんだけど」
「少しは整理しろって毎回会うたびに言ってるんだが、彼女に会うのは数ヶ月ぶりなんだ」
「何処にいるんだろう」
「おそらくいつもの所、地下にある研究室だろうね。行こう、本が崩れそうだから気をつけてウィル。本に埋もれないように」
「う、うん」
本の山を崩さないように僕とアルは慎重にそれらを避けながら家の奥にあるという、地下へと通じる階段へ向かった。
「外からじゃわからないけど、木の中に家が入ってるんだね。木の幹が至る所から伸びてるよ」
「あぁ、おそらくこの樹木を媒体に家を構築したんだろうね」
「え? ということはこれも魔法なの?」
「あぁ、そうだよ。かなり増築を繰り返しているみたいだ」
「凄い。魔法って家まで創れるんだね」
「発動者の力量次第さ。複雑な方式を重ねれば重ねた分、強力な魔法が扱える。しかし、その分魔力消費と構築にも時間が掛かるけどね」
魔法は複雑な計算式だ。
僕、数学系は苦手なんだけど大丈夫かな。
数字を見ると頭が痛くなるんだ。
「ふぅ、屋内のはずなのにまるで本のジャングルだ、まったく。ここから地下に下りるよ。ついてきて。あぁ、一応用心しておいてくれ。何せ相手はあのロミロアだからね。何処に何が仕掛けてあるかわからないから」
僕は思わず苦笑いした。
自分でも顔が引き攣っているのがわかる。
「よし、行こう」
モンスターの潜むダンジョンの中に入るような気分だ。
アルの表情も真剣そのもの。
僕は息を飲んだ。
アルと僕は覚悟を決めて階段を降り始めた。
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