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第二章 ウィルとアルと山頂に棲む竜
喜びの帰還
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急激な急降下に俺も後ろにいるウィルたちも呻き声を発して、下腹部から重力に耐える気配があった。徐にウィルの腕が俺の腰に回され、背中に少し高めぬくもりを感じた。
俺はウィルの手をギュッと握りながら、上空から地上へと舞い降りる衝撃に備えた。
砂塵を巻き上げながら、ヴィルゴは地上へと着地する。
先に下りたのはロガだった。深呼吸をして、盛大な長いため息を吐き出している。
続けてアル……ジークが地上に降り立った。彼はもうずっとこのままの姿で街へ戻るんだろうか。
先に俺が下りて、ウィルに手を貸しながら地上へと降りる。これで全員が無事に、足を地につけることができた。空を飛ぶのももちろん嫌いではないが、やはり、地上の方が安心できる。
ヴィルゴ様には申し訳ないが。
ドラゴンの背中に跨り、空を飛んでいたという浮遊感が身体に残っていて、ふわふわと妙な気分だ。
「ヴィルゴ様、送っていただき、ありがとうございました」
白銀の長髪を前に流しながら、ジークは頭を恭しく下げた。
『うむ。ジークよ。その姿のまま街へと戻るのはいささか危険ではないか? 今は知る者は少なくなったとはいえ、お前はエルフ族だ。その力を利用しようとする輩が三度現れるやも知れぬぞ』
「たしかに。では失礼して」
そういうと、アルの身体が光を放ち、長身だった背丈が急激に縮む。光が収まると、そこには、はじめて出逢ったときの三十センチほどの丸い身体をした、アルマジロが立っていた。
「はぁ~、これで元通りだ。やっぱり、地面が近いと落ち着く~」
ジークからアルへと変わった彼は、丸いあんよで地面の硬さを確かめるように足踏みを繰り返す。
よく堂々と、ヴィルゴ様の前で言えるな~、などと苦笑が零れる。アルらしいと言えば、そうなんだが。
張り詰めていた気持ちを解きほぐすかのように、アルはいつもの、のほほんとした表情で腰に手を当てて、ニッと笑顔を見せた。
その姿を見たとき、俺は何故か安堵した。逆にロガは落胆の表情を見せていた。
何でだ?
『では、我は行く。勇敢なる者たちよ、さらばだ』
「ヴィルゴ様も、お元気で。怪我、しっかり身体を休めて養生してくださいね。無理は絶対に駄目ですよ」
『うむ。ウィリアムよ、お前には感謝するぞ。有能な魔法使いだ』
少し照れながら、ウィルは両手を後ろへと回し、ヴィルゴに微笑み返した。
『……レズリーよ、ウィリアムを頼んだぞ』
「――は、はい!」
突然言葉を掛けられ、少し混乱しながらも俺は言葉を返した。
ウィルを守ることは俺のやるべきことであり、願望でもある。しかしなぜだろうか。ヴィルゴの言葉の裏に何か想いのような強い願いや意思があるように思えて、何かが引っかかっているように見えた。
ヴィルゴ様は、ウィルの事を何か知っているのだろうか。
俺の疑問の答えはわからないままだが、ヴィルゴはどこか満足したかのように大きな金の瞳を細め、笑みを浮かべた。
砂塵が舞う。
竜族を統べる、ドラゴンロードは四枚の翼を同時に羽ばたかせ、その姿を一瞬のうちに遙か上空へと消した。
『マクスウェル、リーリンリティアよ、安心するがよい。お前たちの息子は立派に、成長しておるぞ』
完全な夜の帳が降りた上空で、ヴィルゴは独り言のようにそう小さく呟いた。
巨大な二つの月と、瞬く星空を背景に、巨大な黄金竜は夜風を切りながら上機嫌に飛び去っていった。
俺はウィルの手をギュッと握りながら、上空から地上へと舞い降りる衝撃に備えた。
砂塵を巻き上げながら、ヴィルゴは地上へと着地する。
先に下りたのはロガだった。深呼吸をして、盛大な長いため息を吐き出している。
続けてアル……ジークが地上に降り立った。彼はもうずっとこのままの姿で街へ戻るんだろうか。
先に俺が下りて、ウィルに手を貸しながら地上へと降りる。これで全員が無事に、足を地につけることができた。空を飛ぶのももちろん嫌いではないが、やはり、地上の方が安心できる。
ヴィルゴ様には申し訳ないが。
ドラゴンの背中に跨り、空を飛んでいたという浮遊感が身体に残っていて、ふわふわと妙な気分だ。
「ヴィルゴ様、送っていただき、ありがとうございました」
白銀の長髪を前に流しながら、ジークは頭を恭しく下げた。
『うむ。ジークよ。その姿のまま街へと戻るのはいささか危険ではないか? 今は知る者は少なくなったとはいえ、お前はエルフ族だ。その力を利用しようとする輩が三度現れるやも知れぬぞ』
「たしかに。では失礼して」
そういうと、アルの身体が光を放ち、長身だった背丈が急激に縮む。光が収まると、そこには、はじめて出逢ったときの三十センチほどの丸い身体をした、アルマジロが立っていた。
「はぁ~、これで元通りだ。やっぱり、地面が近いと落ち着く~」
ジークからアルへと変わった彼は、丸いあんよで地面の硬さを確かめるように足踏みを繰り返す。
よく堂々と、ヴィルゴ様の前で言えるな~、などと苦笑が零れる。アルらしいと言えば、そうなんだが。
張り詰めていた気持ちを解きほぐすかのように、アルはいつもの、のほほんとした表情で腰に手を当てて、ニッと笑顔を見せた。
その姿を見たとき、俺は何故か安堵した。逆にロガは落胆の表情を見せていた。
何でだ?
『では、我は行く。勇敢なる者たちよ、さらばだ』
「ヴィルゴ様も、お元気で。怪我、しっかり身体を休めて養生してくださいね。無理は絶対に駄目ですよ」
『うむ。ウィリアムよ、お前には感謝するぞ。有能な魔法使いだ』
少し照れながら、ウィルは両手を後ろへと回し、ヴィルゴに微笑み返した。
『……レズリーよ、ウィリアムを頼んだぞ』
「――は、はい!」
突然言葉を掛けられ、少し混乱しながらも俺は言葉を返した。
ウィルを守ることは俺のやるべきことであり、願望でもある。しかしなぜだろうか。ヴィルゴの言葉の裏に何か想いのような強い願いや意思があるように思えて、何かが引っかかっているように見えた。
ヴィルゴ様は、ウィルの事を何か知っているのだろうか。
俺の疑問の答えはわからないままだが、ヴィルゴはどこか満足したかのように大きな金の瞳を細め、笑みを浮かべた。
砂塵が舞う。
竜族を統べる、ドラゴンロードは四枚の翼を同時に羽ばたかせ、その姿を一瞬のうちに遙か上空へと消した。
『マクスウェル、リーリンリティアよ、安心するがよい。お前たちの息子は立派に、成長しておるぞ』
完全な夜の帳が降りた上空で、ヴィルゴは独り言のようにそう小さく呟いた。
巨大な二つの月と、瞬く星空を背景に、巨大な黄金竜は夜風を切りながら上機嫌に飛び去っていった。
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