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第二章 ウィルとアルと山頂に棲む竜
新たな仲間を引き連れて
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「気をつけて行ってくるなのよ~」
ロミロアに見送られ、俺たちは一路、再びケツァルコルク山脈へと足を向けた。
霊峰ケツァルコルク山脈は以前に比べると、ドラゴン種の魔物が増えているように見えた。いや、これがこの山の本来の姿なのだろう。俺たちは身長に進みながら、ヴィルゴのいるとされる山頂を目指した。
幾度か襲われて戦闘行為を繰り返したが、これまでの戦闘経験は決して無駄ではなかったようだ。
襲い来る野生のドラゴンたちを退けながら、どうにか山頂に到着した。
夜の者による襲撃の跡は、今も尚、その姿を生々しく残している。
「ヴィルゴ様! 実はお尋ねしたいことがあるのです! 再びそのお姿をお見せできないでしょうか!」
耳通りの良い声を張り上げ、アルは願いを発した。
強風は吹き荒れる山頂は、シンと静まりかえり、遠くで地鳴りと風の音が響くのみ。
すると、空を巨大な影が掠めていった。それの正体はすぐにわかった。巨大な影が、四枚の翼を羽ばたかせ、風と共に頂上の地に降り立った。地響きで大地が揺れて、俺たちの身体も振動に揺さぶられた。
『ついさっき別れを惜しんだばかりだというのに、お前たちは実に忙しない者たちよ』
「ヴィルゴ様!」
『我に何用で、再びここへ来た?』
「教えていただきたいことがあるのです。賢者アクネリウスについて」
『――! アクネリウス。懐かしい名の響きよ。それで、我にアクネリウスの何を聞く?』
「――実は」
アルはヴィルゴにウィルの中に封じられた、アクネリウスの禁忌の書が眠っていることを話した。
ヴィルゴははじめこそ驚いた表情を見せたが、あとはまっすぐに、俺たちを、正確にはウィルに視線をやりながら、終始話を聞いてくれた。
『なるほど。話はわかった。たしかにアクネリウスの生家は最北にあるニクルクロスで間違いないだろう。しかし、お前たちがその場所までたどり着けたとしてもそこにはもはや何もない。いや、あまりにも悲しい場所でもある。心地よいものでは決してないだろう。【アレ】を見れば、世界のそれとなりが垣間見えてしまう』
ウィルが 「どういうことです」と一歩前に出た。その表情から少し焦っているのが伝ってくる。そりゃあ、そうだよな。手がかりであるはずの場所には何もないと言われちまえば。
ヴィルゴの話はさらに続いた。
『あやつが何故、最北の地より、南の大陸へ渡ったか。それは今から数千年前、最北の地で大規模な戦争が起こった。その戦争は多種族による略奪行為だった。今でもそれは珍しくはないが。その折にニクルクロスの村は壊滅し、滅んでおる』
「そんな……」
落胆した俺たちは言葉を失う。
再び振り出しに戻ってしまった。また一から封印を解く手がかりを見つけなければならない。
吹き荒れる風の中で重い沈黙が圧し掛かる。
その時、天を仰いでいたヴィルゴが何かを思い出したかのように空虚を見つめ、徐に口を開いた。
『いや、待て、もしかすれば……ウィルよ。お前の中に眠るアクネリウスの記憶が封印されし扉を開く、鍵となるやも知れぬ』
「封印を解く、鍵?」
「ニクルクロスのさらに奥地に魔物も近寄らない古の遺跡が存在する。その遺跡の名は【クルスト遺跡】。そこはニクルクロスの民たちが自らの魔力を高めるための修練場として使われていた。そこに行けば、禁忌の書の封印を解く何か手がかりが見つかるやも知れん』
ぱぁ、と顔に笑みが浮かぶ。俺たちは最後の希望とばかりに歓喜した。吐き出した吐息からも安堵の思いが伝わってくる。
『我も共に行こう。あの夜の者との戦闘を交えてから、気になることがあってな』
「気になること?」
『うむ。あの夜の者、メルキドと言ったか。あの娘からは一つを除いて、他の感情が感じられなかった。アクネリウスが生きていた当時、奴が研究していた感情分離の技法によく似ているのだ』
「感情分離……そんな研究を。たしかにメルキドは自らを【喜悦司る】と称していた。喜悦って感情でいう所の喜怒哀楽の喜ということか」
『嫌な予感がする。事は急いだ方が良いだろう。だが、準備は怠ってはいかん。明日の明朝、出発する。各々旅の準備をし、再びここを訪れるが良い』
はい、と俺たちは力強く頷いた。
ロミロアに見送られ、俺たちは一路、再びケツァルコルク山脈へと足を向けた。
霊峰ケツァルコルク山脈は以前に比べると、ドラゴン種の魔物が増えているように見えた。いや、これがこの山の本来の姿なのだろう。俺たちは身長に進みながら、ヴィルゴのいるとされる山頂を目指した。
幾度か襲われて戦闘行為を繰り返したが、これまでの戦闘経験は決して無駄ではなかったようだ。
襲い来る野生のドラゴンたちを退けながら、どうにか山頂に到着した。
夜の者による襲撃の跡は、今も尚、その姿を生々しく残している。
「ヴィルゴ様! 実はお尋ねしたいことがあるのです! 再びそのお姿をお見せできないでしょうか!」
耳通りの良い声を張り上げ、アルは願いを発した。
強風は吹き荒れる山頂は、シンと静まりかえり、遠くで地鳴りと風の音が響くのみ。
すると、空を巨大な影が掠めていった。それの正体はすぐにわかった。巨大な影が、四枚の翼を羽ばたかせ、風と共に頂上の地に降り立った。地響きで大地が揺れて、俺たちの身体も振動に揺さぶられた。
『ついさっき別れを惜しんだばかりだというのに、お前たちは実に忙しない者たちよ』
「ヴィルゴ様!」
『我に何用で、再びここへ来た?』
「教えていただきたいことがあるのです。賢者アクネリウスについて」
『――! アクネリウス。懐かしい名の響きよ。それで、我にアクネリウスの何を聞く?』
「――実は」
アルはヴィルゴにウィルの中に封じられた、アクネリウスの禁忌の書が眠っていることを話した。
ヴィルゴははじめこそ驚いた表情を見せたが、あとはまっすぐに、俺たちを、正確にはウィルに視線をやりながら、終始話を聞いてくれた。
『なるほど。話はわかった。たしかにアクネリウスの生家は最北にあるニクルクロスで間違いないだろう。しかし、お前たちがその場所までたどり着けたとしてもそこにはもはや何もない。いや、あまりにも悲しい場所でもある。心地よいものでは決してないだろう。【アレ】を見れば、世界のそれとなりが垣間見えてしまう』
ウィルが 「どういうことです」と一歩前に出た。その表情から少し焦っているのが伝ってくる。そりゃあ、そうだよな。手がかりであるはずの場所には何もないと言われちまえば。
ヴィルゴの話はさらに続いた。
『あやつが何故、最北の地より、南の大陸へ渡ったか。それは今から数千年前、最北の地で大規模な戦争が起こった。その戦争は多種族による略奪行為だった。今でもそれは珍しくはないが。その折にニクルクロスの村は壊滅し、滅んでおる』
「そんな……」
落胆した俺たちは言葉を失う。
再び振り出しに戻ってしまった。また一から封印を解く手がかりを見つけなければならない。
吹き荒れる風の中で重い沈黙が圧し掛かる。
その時、天を仰いでいたヴィルゴが何かを思い出したかのように空虚を見つめ、徐に口を開いた。
『いや、待て、もしかすれば……ウィルよ。お前の中に眠るアクネリウスの記憶が封印されし扉を開く、鍵となるやも知れぬ』
「封印を解く、鍵?」
「ニクルクロスのさらに奥地に魔物も近寄らない古の遺跡が存在する。その遺跡の名は【クルスト遺跡】。そこはニクルクロスの民たちが自らの魔力を高めるための修練場として使われていた。そこに行けば、禁忌の書の封印を解く何か手がかりが見つかるやも知れん』
ぱぁ、と顔に笑みが浮かぶ。俺たちは最後の希望とばかりに歓喜した。吐き出した吐息からも安堵の思いが伝わってくる。
『我も共に行こう。あの夜の者との戦闘を交えてから、気になることがあってな』
「気になること?」
『うむ。あの夜の者、メルキドと言ったか。あの娘からは一つを除いて、他の感情が感じられなかった。アクネリウスが生きていた当時、奴が研究していた感情分離の技法によく似ているのだ』
「感情分離……そんな研究を。たしかにメルキドは自らを【喜悦司る】と称していた。喜悦って感情でいう所の喜怒哀楽の喜ということか」
『嫌な予感がする。事は急いだ方が良いだろう。だが、準備は怠ってはいかん。明日の明朝、出発する。各々旅の準備をし、再びここを訪れるが良い』
はい、と俺たちは力強く頷いた。
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