65 / 77
第二章 ウィルとアルと山頂に棲む竜
クルスト遺跡
しおりを挟む
新たな道は人一人通れるほどの岩の切れ目に存在した。
道先は薄暗く、灯りがなかれば足元が危険かもしれない。
アルが徐に手をかざした。すると、俺たちの周辺を照らすように光の玉が生まれる。ほんのりだがこれで奥の道の先が確認できるようになった。
「助かる」
「これくらいはね。でも油断は禁物だよ。少しずつだがこの奥から強い魔力を感じる」
俺は頷き、傍らにいるウィルの顔を見て、そっと手を掬うように握った。一瞬驚いたように目を見開いたが、それはすぐさま安堵した柔らかい表情へと変わる。
慎重に前に進みながら、次第に暗かった道の先に光が見えはじめた。
俺とウィルは同時に顔を見合わせて瞬きを繰り返した。考えていることは同じで笑みが浮かぶ。
――出口だ。
洞穴の中の細い道を突き進んだ先には、更なる絶景が望めた。
「う、わぁ……綺麗。レズリー、ここって洞穴の中だよね?」
「ああ、そのはずだ」
「にしては、綺麗過ぎるっしょ」
いつのまにか俺の隣に立っていたロガが言った。その腕にはアルをギュッと抱っこし続けている。
アルはもう諦めて成すがままという低だ。
森の奥に開けた青と緑のコントラストを際立たせた巨大な湖のような絶景が広がっていた。
上部から流れる大量を水が滝となって青みを含んだ泉へと落ちていく。澄んだ水が段々畑のように連なり、チロチロと水音を湛えながら右往左往へ流れている。
淡い光と、青と、緑が絶妙なバランスで洞窟内に展開されて、まるで絵画を見ているようだと錯覚させる。
そして、その絶景の中にその遺跡は静かに佇んでいた。
遺跡は弦や苔にビッシリと包まれるように緑と赤や黄色といった花がその姿を着飾っていた。
何の変哲もない石造りの建造物だ。しかしその遺跡からは夥しいほどの魔力の流動を感じた。
それは森の入ったときから感じている感覚とまったく同じだった。
「ここが【クルスト遺跡】で間違いないみたいだな……ウィル? どうした?」
「……っ、なんだか、胸が、締め付けられるよう、な……っ」
「――ウィル!?」
ガクンッ、と膝から崩れたウィルを何とかぎりぎりで腕で支えた。「ありがとう」という言葉もどこか苦しそうだ。顔色も悪い。
「アル! ヴィルゴ!」
「もしかして、ウィルの中の禁忌の書が反応しているのかもしれない。ヴィルゴ様」
「うむ。だが、ウィルを連れて行かなくてはここまで来た意味がない。ウィル、もう少し耐えてくれ」
はぁはぁ、と息を乱しながら、ウィルは「……はい」とか細い声で返事した。
俺はウィルの足の裏に腕を回して身体を抱き抱えた。いつもなら「恥ずかしいっ」と文句を言う彼だが相当辛いのだろう。俺の胸に頭を預けて意識も朦朧としているようで、俺の声も聞こえているのかもわからない。
それでも俺は抱きかかえるウィルを腕に力を込めてギュッ、と抱き締めて、遺跡の中へと入った。
道先は薄暗く、灯りがなかれば足元が危険かもしれない。
アルが徐に手をかざした。すると、俺たちの周辺を照らすように光の玉が生まれる。ほんのりだがこれで奥の道の先が確認できるようになった。
「助かる」
「これくらいはね。でも油断は禁物だよ。少しずつだがこの奥から強い魔力を感じる」
俺は頷き、傍らにいるウィルの顔を見て、そっと手を掬うように握った。一瞬驚いたように目を見開いたが、それはすぐさま安堵した柔らかい表情へと変わる。
慎重に前に進みながら、次第に暗かった道の先に光が見えはじめた。
俺とウィルは同時に顔を見合わせて瞬きを繰り返した。考えていることは同じで笑みが浮かぶ。
――出口だ。
洞穴の中の細い道を突き進んだ先には、更なる絶景が望めた。
「う、わぁ……綺麗。レズリー、ここって洞穴の中だよね?」
「ああ、そのはずだ」
「にしては、綺麗過ぎるっしょ」
いつのまにか俺の隣に立っていたロガが言った。その腕にはアルをギュッと抱っこし続けている。
アルはもう諦めて成すがままという低だ。
森の奥に開けた青と緑のコントラストを際立たせた巨大な湖のような絶景が広がっていた。
上部から流れる大量を水が滝となって青みを含んだ泉へと落ちていく。澄んだ水が段々畑のように連なり、チロチロと水音を湛えながら右往左往へ流れている。
淡い光と、青と、緑が絶妙なバランスで洞窟内に展開されて、まるで絵画を見ているようだと錯覚させる。
そして、その絶景の中にその遺跡は静かに佇んでいた。
遺跡は弦や苔にビッシリと包まれるように緑と赤や黄色といった花がその姿を着飾っていた。
何の変哲もない石造りの建造物だ。しかしその遺跡からは夥しいほどの魔力の流動を感じた。
それは森の入ったときから感じている感覚とまったく同じだった。
「ここが【クルスト遺跡】で間違いないみたいだな……ウィル? どうした?」
「……っ、なんだか、胸が、締め付けられるよう、な……っ」
「――ウィル!?」
ガクンッ、と膝から崩れたウィルを何とかぎりぎりで腕で支えた。「ありがとう」という言葉もどこか苦しそうだ。顔色も悪い。
「アル! ヴィルゴ!」
「もしかして、ウィルの中の禁忌の書が反応しているのかもしれない。ヴィルゴ様」
「うむ。だが、ウィルを連れて行かなくてはここまで来た意味がない。ウィル、もう少し耐えてくれ」
はぁはぁ、と息を乱しながら、ウィルは「……はい」とか細い声で返事した。
俺はウィルの足の裏に腕を回して身体を抱き抱えた。いつもなら「恥ずかしいっ」と文句を言う彼だが相当辛いのだろう。俺の胸に頭を預けて意識も朦朧としているようで、俺の声も聞こえているのかもわからない。
それでも俺は抱きかかえるウィルを腕に力を込めてギュッ、と抱き締めて、遺跡の中へと入った。
0
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる