ウィルとアルと図書館の守人

凪 紅葉

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第二章 ウィルとアルと山頂に棲む竜

探求する者

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 遺跡内部はひんやりとした空気が立ちこめ、以外にも明るかった。遺跡の壁に特殊な加工もしくは魔法が施されているのか、ぼんやりと光輝いている。よく見れば壁一面におそらくエルフ文字だろう、ある一定の間隔で描かれていて、それが淡い輝きを放っているようだ。
「アル、この光文字は?」
「一種の結界だね。この遺跡全域に施されているみたいだ。しかし凄いな。微量な魔力にも関わらず、この結界術式はとても強力な魔法だよ。この遺跡が、ほぼ当時のままの原型を留めて今に至ったのは、この結界魔法のお陰だろうね。じゃなきゃ今頃、エルフ族を忌み嫌う多種族の連中の手によって破壊されてしまっていただろうから」
 ロガに抱っこされたアルは端から見てもわかりやすいほどその円らな瞳をキラキラと輝かせ、興奮している。
 俺が思うに、エルフ族は単なる魔法馬鹿なだけかもしれない。魔法に魅了された探求者。
 そんな風に思う。
 魔法に魅了され、探求し続けた結果、強大な魔力を操るまでに至り、その強力すぎる力によって多種族から忌み嫌われ、虐げられてきた。
 本当の彼らエルフ族は、アルのように魔力を探求する純粋な存在なのではないか、と思う。
 これは俺の勝手な解釈だけど。実際にエルフ族は魔族の子孫であることに間違いはない。
 そうだ。何も知らないから恐れるんだな、きっと。
 知ろうとすればなんてことない、アルの場合は単なる魔法馬鹿だった。
 アクネリウスはどうなんだろうか。少しだけ、興味が湧いた。
 腕の中のウィルが微かに身じろいだ。
「……れず、り……?」
「ん? どうした? ウィル?」
「……レズリー、なんだが嬉しそうだな、って思って……」
 見た目からも擦れた声からもわかるほど、禁術書の身体に掛かる負荷は重いようで辛そうだ。
 出来ることなら変わってやりたいくらいだ。
「ちょっと、な。後で話す。それよりウィル、辛いだろうが、もう少しの辛抱だからな。大丈夫、俺がついてる」
「うん。不安は、ないよ。君が僕を守ってくれる、って信じてる、から、ね……っ」
「ウィルっ」
 腕に重さが増し、ウィルが意識を失ったことがわかった。
 呼吸はあるが、その顔は顔面蒼白で、不安を掻き立てるには十分だった。
 細い身体抱える腕に力を入れて、引き寄せるように抱え直す。
「アル! 急がねえと、ウィルが!」
「あ、ああ! すまない」
「幸い、魔物の気配は感じない。一気に奥へ駆け抜けるぞ」
 ヴィルゴの言葉を合図に俺たちは遺跡内を爆走した。
 小気味良い複数の靴音を鳴らして、俺たちは遺跡の最深部へ到達した。
 巨大な扉が俺たちに立ちはだかる。するとウィルの身体が扉に反応するかのように全身を淡い光が覆った。俺は何が起きようと離さないと、ギュッとウィルの身体を掴んだ。
 ウィルの身体を媒体に文字が浮かび上がる。
 エルフ文字だ。
 それに呼応するように扉が光を放ち同じエルフ文字が浮かび上がる。中央から光が一筋漏れて、扉が鈍い音を立てながら開き始めた。
 扉の封印が解かれる。
 風が扉の中から吹いて、再び吸い込まれていく。
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