闇落ち異世界転生記~小悪魔からはじめる成り上がり、非力でも出来る出世法~

和紗かをる

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第3章 籠城戦って案外楽なんじゃないかとか考えていたけど、正直キツイ・・・。

3-2

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 大手門に敵が攻め寄せてきて三日後、搦め手側にも敵が現れた。
 こちらに備えている味方は80と少し、搦め手は狭いのでこの数でもぎゅうぎゅうの状態だ。搦め手を指揮するのは青い兜をしっかりと被った老悪魔だった。古くからこの土地に土着している一族の出で、領主様がこの地方を領有する時に、時の魔王様に命じられて協力した由緒ある悪魔みたいだ。この辺りの話は話好きな周りからすぐに情報が入る。こちらがインプで、最下層な悪魔であると判っているはずなのに、周囲の低級悪魔達、オーク顔やコボルトみたいなの、四つ足歩行の虎みたいな下級悪魔まで、それほど差別は感じずに付き合えている。ここが戦場で、しかも敵に包囲されている砦の中だからという特殊条件下だからなのかもしれない。死を前にしたら差別よりも、生き残る協力をするのは生き物であれば悪魔も一緒って事か。
「あの方はな、普段はぼんやりとしていて優しい悪魔なんだが、その実領主様と並ぶ上級悪魔でな、今は役職を娘に譲って引退していたんだが、この戦で急遽呼び戻されたって言う古強者なんだぞ」
「そりゃすげえ、ならここで手柄を立てたら、中央にも紹介してもらえるかもな?」
「ばっかそれだけじゃなえぇぞ、中央で豪遊も悪ねぇが、跡取りの娘さんてのが偉く別嬪でよ、しかもまだ未婚ってぇ~話だ、もしかしたらってんなら、俺はそっちをを取るね」
 雑兵の真偽なんか関係ない噂話。戦記物を読んでいると落城前の城の中と言うのは、誰もが疑心暗鬼になっており、誰が裏切ったとか、食料を盗んだとかの話が横行するらしい。それから比べると敵が迫っている癖に、この搦め手側の雰囲気は悪くないんだろうな。
 俺と、直属上司の下級悪魔、何考えているんだか全然わからないインプの俺たちは、搦め手門を横から睨む形に出っ張っている柵に配属されている。
 搦め手門に敵が迫ったら弓矢とか、魔法術式で横から妨害する役目だ。門を挟んで反対側にも同じような出っ張り柵があるので、搦め手門にせまった敵は三方向からの攻撃にさらされる事になる。突破する方法はあるんだろうけど、今の俺には全然思いつかない。
 昔の戦国武将たちはどうやって城を攻略したのか?大きな城攻め、例えば大阪城とか備中高松城とかの話は何となくわかるけれど、今必要なのはどちらかと言えば千早赤坂城の話かな。二十万と呼ばれる幕府軍を相手に千にも満たない数で籠城をやり遂げた楠木正成の事だけど、南北朝時代の小説とかってあんまり人気がないのか、なろう系でも見た事が無い。ならガチな歴史書を読めば良かったのか?と言われても、ガチな歴史書では本題に至るまで長すぎて要領を得なかった。風俗とか農地の事、作物の事から信仰されていた寺と神社の関係とか、裾野が広すぎて理解が及ばなかった。その点、意外になろう系とかライトノベル逆転戦国物とかは、選べば武器や戦術だけは深堀りしていたりするから侮れない。所謂歴史ヲタは細かい設定にうるさいって奴かもな。
「皆、こちらもそろそろ始まるぞ!引き締めて構え~、放て~」
 絡め手門の奥に配置されている魔法術式を操る5人程度の悪魔が空に向かって術式を放つ。それは搦め手門を飛び越え、隊列を組んでこちらに向かって来ようとしていた猪顔の悪魔達の頭上でさく裂し、炎の矢を降らせた。
「熱そう・・・」
 死ぬほどのダメージではなかった様だが、火傷はしているだろう。じくじくと痛む体を抱えて死地に突撃とか、嫌すぎる。
「全隊、突撃準備!かかれぇ~」
 今度は砦の外に布陣している敵から声がかかり、先ほどの猪顔の部隊だけでなく、砦を囲んでいる森の中から呼びかけに答える声が聞こえる。次いでドッドッドッと地面を複数の重い者が踏みしめる音が響いてくる。
「重装兵が来るぞ!準備を怠るなよ!」
 自分のチームの下級悪魔とインプに声をかける。立場は下級悪魔の方が上で、俺たちのチームは奴がトップなのだが、この砦で防御の工事を行っている内にいつの間にか、俺がリーダーみたいな形になっている。細かい悪魔なら低級インプが偉そうに意見するなとか言うんだろうが、チームの下級悪魔は気にせずに俺に意見を求めて来たりして良く判らない。プライドがないんだろうか?死ぬよりもプライドを一時的に封印した方が得と考えたのか?
「水とぬるま湯、準備した・・・」
 インプが大きめの桶、子供用プールぐらいのサイズの物2つにそれぞれ水とぬるま湯を用意して来た。これがどこまで使えるかは、やって見なければ判らない。
「来た!」
 搦め手門に対して猪顔の隊と、どこに居たのか下級悪魔の部隊が並んで突進してくる。その数は合わせて200程。猪顔の隊の左右を下級悪魔の隊が盾で守りながら進んできている。どうやら猪顔は下級悪魔より格が上みたいだ。
 下級以上、中級未満と言った所か。
「くそっ、あの盾が邪魔だ!」
 とは言っても、こちらからは矢と術式を浴びせるしかない。
 俺たちは強力な術式も使えないし、あちらまで届くほどの弓も引けないので、ただ見ているしかできない。
「風の術式で油をあいつらの上にぶち撒けてから、火矢使えば・・・」
「それだっ!」
 なんとなく思った事を口にしただけだったが、この柵の指揮官っぽい中級悪魔がすぐに反応した。この中級悪魔も普通なら、うるさい!殺すぞ!とか言うのが普通なのに、何故か俺のつぶやきを即座に採用する。変な奴だ。
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