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2章 月下の幼女
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「ああ、あたりまえだけどハル、あなたのご飯なんてないからね、私とシームでもう食べちゃったから、それと、お父さんが帰ってくるまであなたの寝る場所ももちろんないから、お外でキチンと反省してなさいね」
ビュンっと、木の枝が振り下ろされる。
あのまま一歩を前に出していたら肩に当たって鎖骨くらいは折れてただろう枝が、すぐ目の前を通過していく。
「なに・・・、何だって?」
「こらっちゃんとお仕置きをうけなさいって、何その目、何が言いたいのよ?」
私は腹の底から湧き上がる、得体の知れない怒りを感じていた。
ご飯抜きだって?食べちゃっただって?外で暮らせだって?
なんだコイツ!本当にハルの姉か?
おかしい、この世界はとってもおかしい!
実の妹に、姉がこんな無体なことを言うなんて!
母も兄もたぶん同意しての事なのだろう、家の前で騒いでいるのに止めにも来ないから絶対そうだ。
ハルがどう思っていたのか知らないけれど、こんなこと私は許せない。
姉とか、もう知らない。
もう、目の前で偉そうにしているコイツは、私の敵でしかない。
「その目で睨むのを、やめなさい!」
バシン
今度は木の枝が頬にあたり、瞬間で口の中に血の味が満ちる。
「ぺっ、やったね、じゃあこっちも」
すっとその場にしゃがみこみ、先ほどの打撃でくらくらするけど、奥歯を再度かみ締めて、両手に土を握り締める。
「使えない妹にお仕置きするのは家族の役目でしょっ、ハルが使えないから、私は館の執事さんに怒られるし、周りには笑われるのよ!」
大きく木の枝を振りかぶり、振り下ろそうとするヒセラ姉。その前に私は右手に掴んだ土を、彼女の顔面に向かって投げる。
「ちょっと、やだっ汚い、見えない」
振り下ろそうとしていた木の枝を顔の前に持ってくるヒセラ姉。でも達人でもなければ、空中に広がった土を枝ですべて避けることはできない。
きれいに目潰しをくらったヒセラ姉はまさか反撃されるとは思っていなかったのか、めちゃくちゃに木の枝を振り回すだけだ。
「食べ物の恨みが、一番怖いって知っていて?ヒセラ姉」
なんなく木の枝をかわした私は、ヒセラ姉の背後に回って耳元でささやくと、今度は左手に持った土を思いっきりヒセラ姉の口にねじ込んだ。
「どう、土の味だよ、美味しい?私の分のご飯より美味しい?」
前にみた漫画だとさらに追い討ちをかけて、相手を再起不能していたけど、さすがに私はそこまでじゃない。
ユルヘンから貰った干し豆と、干し肉のお陰でそこまで追いつめられた空腹でもなかった。
だからここでおしまい。
「じゃあ、お姉様のおっしゃるとおりに、私はお父さんが帰ってくるま出ていきますわね、ごきげんよう、つちくれだらけのお姉様」
出来るだけ嫌味たっぷりに言ってやるが、ヒセラ姉はまったく聞いていない。口の中に入り込んだ土を吐き出すのに必死だからだ。
「ハルっあんた何考えてるのっ、人に精製してない土を食べさせるなんて、病気で殺すつもり!」
へぇ~この世界の人は土食べると病気になるんだ、知らなかった。ってまぁ、もといた世界だって土をそのまま口にいれたら、病気くらいなるか。当たり前の事だった。
とにかくヒセラ姉が復活して襲い掛かってきたら大変なので、私はすぐにその場を退散することにした。
ビュンっと、木の枝が振り下ろされる。
あのまま一歩を前に出していたら肩に当たって鎖骨くらいは折れてただろう枝が、すぐ目の前を通過していく。
「なに・・・、何だって?」
「こらっちゃんとお仕置きをうけなさいって、何その目、何が言いたいのよ?」
私は腹の底から湧き上がる、得体の知れない怒りを感じていた。
ご飯抜きだって?食べちゃっただって?外で暮らせだって?
なんだコイツ!本当にハルの姉か?
おかしい、この世界はとってもおかしい!
実の妹に、姉がこんな無体なことを言うなんて!
母も兄もたぶん同意しての事なのだろう、家の前で騒いでいるのに止めにも来ないから絶対そうだ。
ハルがどう思っていたのか知らないけれど、こんなこと私は許せない。
姉とか、もう知らない。
もう、目の前で偉そうにしているコイツは、私の敵でしかない。
「その目で睨むのを、やめなさい!」
バシン
今度は木の枝が頬にあたり、瞬間で口の中に血の味が満ちる。
「ぺっ、やったね、じゃあこっちも」
すっとその場にしゃがみこみ、先ほどの打撃でくらくらするけど、奥歯を再度かみ締めて、両手に土を握り締める。
「使えない妹にお仕置きするのは家族の役目でしょっ、ハルが使えないから、私は館の執事さんに怒られるし、周りには笑われるのよ!」
大きく木の枝を振りかぶり、振り下ろそうとするヒセラ姉。その前に私は右手に掴んだ土を、彼女の顔面に向かって投げる。
「ちょっと、やだっ汚い、見えない」
振り下ろそうとしていた木の枝を顔の前に持ってくるヒセラ姉。でも達人でもなければ、空中に広がった土を枝ですべて避けることはできない。
きれいに目潰しをくらったヒセラ姉はまさか反撃されるとは思っていなかったのか、めちゃくちゃに木の枝を振り回すだけだ。
「食べ物の恨みが、一番怖いって知っていて?ヒセラ姉」
なんなく木の枝をかわした私は、ヒセラ姉の背後に回って耳元でささやくと、今度は左手に持った土を思いっきりヒセラ姉の口にねじ込んだ。
「どう、土の味だよ、美味しい?私の分のご飯より美味しい?」
前にみた漫画だとさらに追い討ちをかけて、相手を再起不能していたけど、さすがに私はそこまでじゃない。
ユルヘンから貰った干し豆と、干し肉のお陰でそこまで追いつめられた空腹でもなかった。
だからここでおしまい。
「じゃあ、お姉様のおっしゃるとおりに、私はお父さんが帰ってくるま出ていきますわね、ごきげんよう、つちくれだらけのお姉様」
出来るだけ嫌味たっぷりに言ってやるが、ヒセラ姉はまったく聞いていない。口の中に入り込んだ土を吐き出すのに必死だからだ。
「ハルっあんた何考えてるのっ、人に精製してない土を食べさせるなんて、病気で殺すつもり!」
へぇ~この世界の人は土食べると病気になるんだ、知らなかった。ってまぁ、もといた世界だって土をそのまま口にいれたら、病気くらいなるか。当たり前の事だった。
とにかくヒセラ姉が復活して襲い掛かってきたら大変なので、私はすぐにその場を退散することにした。
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